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「…見つけた」
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「でも、昨日も今日もちょっと意外だった。ケーキの飾りも全部さっくんが作ってくれると思ってたのに一部は買いに行くって言ってたし、今日ももしかしたらこうなるかもしれないってことはさっくんなら想定済みだと思ってた」
基本いつも手作りで、オレやさっくんの可愛いアニメ感のある絵?みたいな飾りや雪の結晶は作ってくれたのに、宝石みたいに銀箔のついた特殊サンタやトナカイの砂糖菓子は市販のものだった。
「俺が、何でも完璧にできると思ってるんですか?」
「そうだろ?できないことなんて、ないじゃないか」
苦い笑みを零すさっくんに、疑うことなんてないと首をかしげる。
「ある程度はそれなりに問題なく対応できると思っていますが、…専門性の高い物までは難しいです」
「あんなにいろんなものが作れるのに?」
「あれは、貴方に喜んでほしくて何度も練習して…、」
途中で、…しまった、と悔しそうに僅かに顔をそむける。
初耳で意外過ぎる言葉に、目をぱちくりさせれば、「嗚呼もう、これだけは言いたくなかったのに」と諦めたように嘆息した。
「なんでだよ。いいじゃないか。さっくんに、意外とこんなに可愛いところがあったんだなってわかって嬉しいぞ」
「……うるさいですよ」
いつもの反対だ。
恥ずかしそうに、口元を片手で覆ってさっくんが反論している。
「そういえば、その服は最近買ったのか?上品で気品があるさっくんによく似合ってるな」と今なら言えそうな気分だったから、本心のままするりと零れるように伝えることができた。
「これは、貰ったんです」
「……もらった…?」
「はい。俺の誕生日に」
いつ、誰に、と言いかけて、口を閉ざした。
彼の目で、表情で、声色で、……それらすべてが物語っている。
一瞬で、僅かに血の巡りが悪くなった気がした。
ぁ、と乾いた喉から、…震える唇から、声にならない音が漏れる。
「どうしようもないほどにお人好しで、お節介なんですよ」
責めているようにも、皮肉にも思える台詞は、……ひどく切なげに、愛おしそうに滲んでいる微笑みによって、相手への想いの深さを嫌というほどに思い知らせる要素にしかならない。
知らない大人の男の人みたいに、…目の前にいるオレじゃなくて、…その、『誰か』のことしか考えていないみたいで。
「服には全然興味なかったのに」
「……っ、」
「それが気にいらなかったようで、無頓着すぎるって呆れたように言って――」
(……もうやめろ)
言葉には、できなかった。
ジクジクとした膿が心臓から零れ始める前に、脳が理解することを断絶した。
今足の下にあるはずの地面が、消えた気がした。
真っ暗になて、底の見えない奈落に一人突き落とされた空虚感。
「……夏空様?」
「…ぁ、うん。何…?」
「体調が優れないのでしたら、帰りましょうか…?」と気遣ってくれるさっくんに、「…いや、まだ……いい」なぜか、家に戻る気にはなれなかった。首をふるふる横に振り、もう少しだけ水族館の続きを鑑賞することにした。
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