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彼女
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女の人がいる。
ナチュラルに近い化粧と、白いブラウスに膝丈ぐらいのスカート。
「っ、真白くん…!!良かった、私…っ、」
肩を大きく上下させ、病室の入口に立っている。
オレを見て、心底安堵したように表情を緩ませた。
笑うと、結構可愛い。
清楚ってこういう女の人のことを言うんだろうな、とこの状況にそぐわない感想が頭の中で浮かんだ。
――意識を取り戻した、数日後。
”今日、あんたの元カノがくる”
ちょっと楽しそうな口調でそう告げた『彼』に、動揺せずにはいられなかった。
「会いたかった…っ!」
彼女が長い髪を耳にかけ、こっちに走るようにしてきて、ドン、と体に重みと同時に振動が走った。
突然見知らぬ女性に抱き締められた驚きで、硬直する。
急いで来たのだろうか。
息遣いが荒く、心臓の音が異常な速度で脈を打っている。
「ずっと、心配してたんだよ…っ、!あの後、怪我したって聞いて、」
「…『あの後』?」
長い髪から香水のような匂いがする。
彼女の言葉の意味がわからず、繰り返すと、「…う、うん」と気まずげに逸らされた。
「確かに私も悪かったけど、でも、あれは真白くんの勘違いで、」
「麻由里」
「…!」
無感情なような、けど、単調には聞こえない声。
病室の入口の横。
壁に背を預けていた『彼』が短く言葉を呟き、対して大げさなほどに反応をした彼女に、それが彼女のことを示しているのだと気づいた。
「だめだろ?本当のことを教えてあげないと」
「な、なんで、ひびきがここに…っ、」
彼を見て呟かれた名前に、目を軽く瞬く。
数日一緒にいたのに、今初めて知った。
彼は『ひびき』という名前らしい。どういう漢字なのだろうと、少し気になる。
同時に、
病室の影になって見えづらい位置にいたその人物を初めて捉えて、オレから急いで離れてカッと頬を染める彼女。
…その、どうしてか嬉しそうにも見える表情に、けど青ざめてもいく変化に…ああ、やっぱりそうなのか、と落胆した。
「俺に抱きついて"キスして"ってせがんできたこと、もう忘れた?」
「…っ、」
「彼氏がいるのに他の男を淫らな行為に誘いましたって、真白にも言ってや」「やめてよ!!」
声を遮るようにして悲鳴に似た叫びが上がる。
泣きそうな彼女に、納得した。
ほとんど記憶を思い出していないオレでもわかる。
……それは、恋をしている女の人の顔だった。
「…そっか」
思い出してなんかないはずなのに、凄く悲しいような、ショックを受けたような気分に苛まれた。
「…オレに会いに来てくれたんじゃないんだ」
「っ、違う、違うの、ねぇ、私は本当に真白くんが好き、好き、だから、信じて…」
何を言われても言い訳にしか聞こえない。
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