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普通の病院
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太腿に刻まれている彼の名前。
寧音が苦々しい口調で口にしていた『サイテーな、狂った地獄』という言葉。
その意味を一人で考えても、何かわかるはずもなくて、
……ただ、…会えずにいる時間…琉夏の存在が自分にとって欠かせないものになりつつあるということだけは心底感じた。
久しぶりに、面会に来て病室にいる彼の姿を見ていて、…つい言葉が零れる。
「どんな生活をしてきたら、そこまで格好良くなれるの?」
「……は?」
ずっと前から気になってたことだ。
単純な疑問を投げかけただけだったが、彼は不意うちにあったような表情で絶句する。
それからすぐになんなんだこいつはと呆れた顔へと変化した。
「気品があるっていうか、なんていえばいいのかな。…んー、童話で言う王子様って感じが凄い」
思ったままを言葉にすれば、彼はとてつもなく嫌そうに顔を歪ませる。
「…何かあったのか」と病人を心配するように声をかけてきた。
―――先程の出来事を思い出す。
『身体の病気以外にも特別な事情』がある人が入院する場所だから、皆それぞれ自由に病院内で過ごしている。
だからといって、オレの今いる病室は個室だ。よほどのことがない限り中の様子は見れない。
つまり、他の人がオレの部屋に来る面会人に会おうと思うと病室からの行き帰りですれ違うか、部屋から出てきた時しかなくて……結構頑張らないとできない。
……以前から、琉夏に想いを寄せている女の子が何度かその偶然を狙うために廊下をうろうろしているのは知っていた。
けど、実際に今日丁度ドアを開けた琉夏と間近で会ったときは、驚いて叫んで尻もちをついていた。
真っ赤な顔で、”連絡先教えて下さい!”と紙を差し出した勇気に感心したのを覚えている。
(…琉夏は興味なさそうに見下ろしてばっさりと断っちゃってたけど)
麻由里さんの時も思ったけど、どうして琉夏は他の人に素っ気ない態度をとるんだろう。
その女の子の時もわざとそうしてるのかって思うくらいに表情が冷めきっていた。
普段の琉夏は優しくて、過保護なぐらい心配してくれる。
いっぱい良いところがあるんだってことを、他の人にも知ってほしいんだけどな。
「…だから、さっきから何、」
「琉夏は凄く格好いいなって見惚れてた」
「…っ、」
ベッドサイド。
椅子に座っている彼の手には文庫本がある。
湊人に教えてもらって面白かったから、琉夏にも渡した。
長い足を組み、読むために整った顔を俯かせている姿は、まさしく完璧に作られた造形物そのものだった。
モデルよりも遥かに優れた容姿と上品な雰囲気。
「少女漫画みたいだ」
貸してもらった漫画を思い出す。
確か格好良い男の子が女の子とこういう感じの設定で恋に落ちる話だったな。
思い出して笑うと、彼が怪訝そうに眉を寄せた。
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