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第四話『笑顔を照らせ! カーニバルラバー誕生!』
その4 届く想い
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★魔闘少女ハーツ・ラバーズ!
第四話『笑顔を照らせ! カーニバルラバー誕生!』
その4 届く想い
teller:小枝こずえ
灰色の世界で、一人きり。
そんな生活が、もう何日も続いている気がする。
どうしてこの世界には色がないんだろう、と不思議に思ったこともあったけど。
私の世界は、元々こうだったかもしれない。
どこまでも寂しくて、悲しい、孤独な日々。
色って、そもそもどんな物だっただろうか。
もう、イメージすることすらできない。
何だろう。
自分の中から、次々と大切な物が砂のように零れ落ちていくような感覚がする。
でも、私にとって大切な物って何だろう。
お母さん、お父さん、たっくん?
そういえば、新しい中学に通うようになって随分と経つ気がするのに、もう何日たっくんと会話を交わしてないんだろう。
――あれ?
私、家に帰ってるっけ?
ふと、俯いていた顔を上げた。
その瞬間、顔が塗り潰されたクラスメイトたちの表情が視界に映って、怖くなってまた俯く。
クラスメイトの喋り声が、恐ろしくて仕方がない。
私と同じ人間のはずなのに、私と同じく生きているはずなのに、どうしてこんなに怖いんだろう。
それも、昔からだっただろうか。
はあ、と溜息を零す。
ずっと、溜息ばかりだ。
どんどん幸せが逃げて行く。
私に幸せだなんて素敵な物、訪れる時が来るんだろうか。
「……あれ?」
急に、不思議なことが起こった。
何を話しているのか聞き取れない、クラスメイトの喋り声しか聞こえなかった世界。
そんな世界に、それ以外の音が聞こえた。
音というか、声。
声というか――。
「……歌……?」
それは、歌声だった。
とても澄んだ、綺麗な女の子の声。
どこまでも楽しそうな、弾むようなその声に惹かれて、私は気付けば席から立ち上がっていた。
何でだろう。
私、この歌を知っている気がする。
「ハーツ・ラバー! スターダスト・カンタービレ!」
歌が一瞬止んだかと思うと、今度は良くわからない言葉が空から響いてきたような気がした。
はーつ、らばー?
首を傾げる。
初めて聴く単語のはずなのに、どうしてこんなに胸がざわざわするんだろう。
その時、机の上に小さな小さな星屑のような物がいつの間にか置かれていた。
相変わらず色はないけれど、可愛らしい形が気になって、それに恐る恐る触れてみる。
つん、と指でつつくと、星屑はころころと転がって床に落ちて行く。
ころころ、ころころ。
ただ指でつついただけなのに、星屑はまるで意思を持っているかのように教室の外へと転がって行く。
理由は自分でもわからないけれど、私はそれを追いかけてしまっていた。
歌声は、相変わらず脳に響くように流れている。
どこか懐かしい歌をBGMに、私は星屑を追いかけて廊下を進んで行った。
歩いて、歩いて、歩いた頃。
急に星屑がぴたりと動きを止めて。
突然の出来事に対応しきれず、私は慌てて立ち止まろうとして、立ち止まり切れなくて、足元の星屑に躓いて盛大に転んでしまう。
「あいたた……」
何とか起き上がった時。
転んだ拍子に制服のポケットから、生徒手帳が床に転がり落ちてしまっていたのを見つけた。
開いた生徒手帳を見て、私は息を呑む。
イチゴ柄の、飴の包み紙。
イチゴには、私が忘れたはずの『色』が付いていた。
赤色。
私の好きな色。
私にとって、大切な色。
私はこの色を、この包み紙を、良く知っている。
「……あ……」
どうして。
どうして、忘れていたんだろう。
頭の中を、思い出が駆け巡り、溢れていく。
涙がぽろぽろと零れて行く。
私に笑いかけてくれた、沢山話をしてくれた、私をいつも気にかけてくれた、私を守ってくれた。
幸せな思い出をくれた、温かい感情をくれた、それ以外にも、いっぱいいっぱい、沢山の物を与えてくれた。
こんな私と――友達に、なってくれた。
「すず……はら……くん……」
鈴原くん。
鈴原くん、鈴原くん、鈴原くん。
生徒手帳を抱き締めて、泣きじゃくる。
この飴は、友情の証に彼がくれた物だ。
この包み紙は、彼との思い出を残しておきたくて私が勝手に宝物にした物だ。
どうしてこんなに寂しかったのか、苦しかったのかがわかった。
優しい気持ちを、知ってしまったからだ。
大切な人ができてしまったからだ。
「鈴原くん……っ」
世界が、一気に色付いていく。
赤から始まった世界が、輝いていく。
でも、ここに大切な彼はいない。
「鈴原くん……っ、会いたいよ……っ!」
耐え切れなくて、泣き叫んだ時。
「こずえッ!」
大好きな声が、確かに聴こえた。
何度も何度も、私の名前を必死に呼んでくれている。
「鈴原くん……鈴原くんっ!」
私、ここにいるよ。
会いたいよ。
私の声、届いてくれているのかな。
何度も何度も、彼の名前を必死に呼ぶ。
縋るように、手を宙に伸ばした時。
ぱき、とどこかにヒビが入る音がして。
世界が、一瞬にしてまばゆい光に包まれた。
第四話『笑顔を照らせ! カーニバルラバー誕生!』
その4 届く想い
teller:小枝こずえ
灰色の世界で、一人きり。
そんな生活が、もう何日も続いている気がする。
どうしてこの世界には色がないんだろう、と不思議に思ったこともあったけど。
私の世界は、元々こうだったかもしれない。
どこまでも寂しくて、悲しい、孤独な日々。
色って、そもそもどんな物だっただろうか。
もう、イメージすることすらできない。
何だろう。
自分の中から、次々と大切な物が砂のように零れ落ちていくような感覚がする。
でも、私にとって大切な物って何だろう。
お母さん、お父さん、たっくん?
そういえば、新しい中学に通うようになって随分と経つ気がするのに、もう何日たっくんと会話を交わしてないんだろう。
――あれ?
私、家に帰ってるっけ?
ふと、俯いていた顔を上げた。
その瞬間、顔が塗り潰されたクラスメイトたちの表情が視界に映って、怖くなってまた俯く。
クラスメイトの喋り声が、恐ろしくて仕方がない。
私と同じ人間のはずなのに、私と同じく生きているはずなのに、どうしてこんなに怖いんだろう。
それも、昔からだっただろうか。
はあ、と溜息を零す。
ずっと、溜息ばかりだ。
どんどん幸せが逃げて行く。
私に幸せだなんて素敵な物、訪れる時が来るんだろうか。
「……あれ?」
急に、不思議なことが起こった。
何を話しているのか聞き取れない、クラスメイトの喋り声しか聞こえなかった世界。
そんな世界に、それ以外の音が聞こえた。
音というか、声。
声というか――。
「……歌……?」
それは、歌声だった。
とても澄んだ、綺麗な女の子の声。
どこまでも楽しそうな、弾むようなその声に惹かれて、私は気付けば席から立ち上がっていた。
何でだろう。
私、この歌を知っている気がする。
「ハーツ・ラバー! スターダスト・カンタービレ!」
歌が一瞬止んだかと思うと、今度は良くわからない言葉が空から響いてきたような気がした。
はーつ、らばー?
首を傾げる。
初めて聴く単語のはずなのに、どうしてこんなに胸がざわざわするんだろう。
その時、机の上に小さな小さな星屑のような物がいつの間にか置かれていた。
相変わらず色はないけれど、可愛らしい形が気になって、それに恐る恐る触れてみる。
つん、と指でつつくと、星屑はころころと転がって床に落ちて行く。
ころころ、ころころ。
ただ指でつついただけなのに、星屑はまるで意思を持っているかのように教室の外へと転がって行く。
理由は自分でもわからないけれど、私はそれを追いかけてしまっていた。
歌声は、相変わらず脳に響くように流れている。
どこか懐かしい歌をBGMに、私は星屑を追いかけて廊下を進んで行った。
歩いて、歩いて、歩いた頃。
急に星屑がぴたりと動きを止めて。
突然の出来事に対応しきれず、私は慌てて立ち止まろうとして、立ち止まり切れなくて、足元の星屑に躓いて盛大に転んでしまう。
「あいたた……」
何とか起き上がった時。
転んだ拍子に制服のポケットから、生徒手帳が床に転がり落ちてしまっていたのを見つけた。
開いた生徒手帳を見て、私は息を呑む。
イチゴ柄の、飴の包み紙。
イチゴには、私が忘れたはずの『色』が付いていた。
赤色。
私の好きな色。
私にとって、大切な色。
私はこの色を、この包み紙を、良く知っている。
「……あ……」
どうして。
どうして、忘れていたんだろう。
頭の中を、思い出が駆け巡り、溢れていく。
涙がぽろぽろと零れて行く。
私に笑いかけてくれた、沢山話をしてくれた、私をいつも気にかけてくれた、私を守ってくれた。
幸せな思い出をくれた、温かい感情をくれた、それ以外にも、いっぱいいっぱい、沢山の物を与えてくれた。
こんな私と――友達に、なってくれた。
「すず……はら……くん……」
鈴原くん。
鈴原くん、鈴原くん、鈴原くん。
生徒手帳を抱き締めて、泣きじゃくる。
この飴は、友情の証に彼がくれた物だ。
この包み紙は、彼との思い出を残しておきたくて私が勝手に宝物にした物だ。
どうしてこんなに寂しかったのか、苦しかったのかがわかった。
優しい気持ちを、知ってしまったからだ。
大切な人ができてしまったからだ。
「鈴原くん……っ」
世界が、一気に色付いていく。
赤から始まった世界が、輝いていく。
でも、ここに大切な彼はいない。
「鈴原くん……っ、会いたいよ……っ!」
耐え切れなくて、泣き叫んだ時。
「こずえッ!」
大好きな声が、確かに聴こえた。
何度も何度も、私の名前を必死に呼んでくれている。
「鈴原くん……鈴原くんっ!」
私、ここにいるよ。
会いたいよ。
私の声、届いてくれているのかな。
何度も何度も、彼の名前を必死に呼ぶ。
縋るように、手を宙に伸ばした時。
ぱき、とどこかにヒビが入る音がして。
世界が、一瞬にしてまばゆい光に包まれた。
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