47 / 110
第五話『恋せよ乙女! ロマンスラバー誕生!』
その4 初めての恋バナ
しおりを挟む
★魔闘少女ハーツ・ラバーズ!
第五話『恋せよ乙女! ロマンスラバー誕生!』
その4 初めての恋バナ
teller:小枝 こずえ
私を階段の踊り場まで引きずってきた河本さんは、ぜえはあと息を切らしてその場に蹲ってしまった。
私も私で、何が何だかわからない。
河本さんに、なんて声をかければいいのかわからない。
今日の河本さんは様子がおかしい。
まさか、挨拶をしただけであそこまで驚かれるとは思わなかった。
鈴原くんや愛歌ちゃんに沢山勇気をもらってきたから、自分から声をかけることが大事だと思って挨拶してみた、んだけれど。
……何か気に障ることをしてしまったんだろうか。
ふと視線を下げると、自分がずっと手にしていた手紙が視界に入った。
『芹沢昴くんへ』と書かれた、可愛らしい手紙。
芹沢さんへの手紙。
多分、河本さんが書いた手紙。
何だろう、これ。
しばらくお互い無言でいると、河本さんがぽつり、と言葉を洩らした。
「……どうして、こんな、朝早くに?」
「……え、えっと……鈴原くんが部活の朝練行くって言うから……一緒に行かせてもらって……えと、私も、早く来て……教室の掃除とか……花瓶の水替えたりとか、したかったし……」
「……立派な心がけね。でも、何でよりにもよって今日なのよぉ……」
うう、だのああ、だの言いながら河本さんが縮こまる。
私はそれを見ておろおろすることしかできない。
やがて、河本さんがゆっくりと顔を上げた。
その顔は真っ赤で、瞳は僅かに潤んでる。
それから河本さんは、自棄になったように叫んだ。
「ええ、そうよ、そうですよ! ラブレター渡そうとしてましたよぉ! 好きなの! 私は芹沢くんが大好きなのっ!! 悪い!?」
……え?
ぽかん、と口を開けてしまう。
びっくりしすぎて、声が出ない。
恋という感情なんて私は経験したことがないし、ついドギマギしてしまう。
河本さんが、芹沢さんのことを、好き。
何度脳内でその事実を反芻しても、慣れそうになかった。
そんな私の様子を、河本さんはじっと睨むように見つめていて。
やがて。
は、と口を開けたかと思うと。
「……もしかして……気付いてなかった……?」
そう問われ、こくり、とぎこちなく頷く。
途端に河本さんの顔が、湯気でも出るんじゃないかってくらい真っ赤になった。
恥ずかしそうに顔を覆った河本さんは、がっくりと項垂れる。
「……嘘でしょ……自爆した……」
「こ、河本さん……あの……」
「……何? ……いいのよ別に。笑っても。小枝さんはいいわよね。ちゃんと彼氏がいるんだから」
彼氏?
何のことだろう。
きょとん、としてしまう。
「あの……何の、ことですか……?」
「……え? 鈴原くんと付き合ってるんでしょう?」
予想外の爆弾を落とされて、今度は私が真っ赤になる番だった。
「ふ、ふえ!? ち、ちが、違うよ……っ、鈴原くんは、友達で……家が隣同士で……そんな風に誤解されたら、鈴原くんに迷惑かけちゃうよ……っ」
わたわたと慌てる私を、河本さんがひどく複雑そうに見ている。
な、何でしょうか。
それから、じと、と私を責めるように見つめて河本さんは言った。
「……貴方のその鈍感さ、結構罪に値すると思うわ」
「え……あ、あの……ごめんなさい……」
「……私に謝られても困るけど」
しばらく、気まずい沈黙がその場を支配する。
どうしようか、と少し迷った末に口を開く。
「あの……えっと……私が言いたかったのは……笑ったりしません、ってこと、で……」
おどおどと言葉を紡ぐ私を、河本さんが涙目で見ている。
どうにか、私はこの想いを伝えたくて。
「私……あの……河本さんの気持ち、応援します……」
「……え?」
河本さんが、虚を突かれたような顔をした。
まるで、そんなことを言われるとは思ってもみなかったような顔。
「河本さん、素敵な人だし……優しいし……可愛いし……好きな男の子に告白しようと思えるのって……凄く、勇気あると思うから……だから、あの……」
河本さんが、黙り込む。
どうしよう、お節介だって思われちゃったかな。
でも、次の瞬間聴こえてきた声は。
「……ほんと?」
戸惑ったように揺れる、至って女の子らしい儚い物で。
私はそれに応えるように、一生懸命何度も何度も頷いた。
「わ、私なんかに何ができるかは、わからないけど……弟が、芹沢さんと同じ部活だし……私にできることがあれば、何でもしたいって言うか……」
河本さんが、また黙る。
私もそれ以上何を言っていいのかわからなくて、黙ってしまう。
そして。
「……ありがと……小枝さん……」
次に顔を上げた河本さんが見せてくれたのは、笑顔。
私が初めて見る表情。
その笑顔が、あまりにも綺麗で、優しくて、可愛くて。
やっぱり、河本さんはとても素敵な人なんだと改めて思う。
どうか、この人の恋がうまくいきますように。
第五話『恋せよ乙女! ロマンスラバー誕生!』
その4 初めての恋バナ
teller:小枝 こずえ
私を階段の踊り場まで引きずってきた河本さんは、ぜえはあと息を切らしてその場に蹲ってしまった。
私も私で、何が何だかわからない。
河本さんに、なんて声をかければいいのかわからない。
今日の河本さんは様子がおかしい。
まさか、挨拶をしただけであそこまで驚かれるとは思わなかった。
鈴原くんや愛歌ちゃんに沢山勇気をもらってきたから、自分から声をかけることが大事だと思って挨拶してみた、んだけれど。
……何か気に障ることをしてしまったんだろうか。
ふと視線を下げると、自分がずっと手にしていた手紙が視界に入った。
『芹沢昴くんへ』と書かれた、可愛らしい手紙。
芹沢さんへの手紙。
多分、河本さんが書いた手紙。
何だろう、これ。
しばらくお互い無言でいると、河本さんがぽつり、と言葉を洩らした。
「……どうして、こんな、朝早くに?」
「……え、えっと……鈴原くんが部活の朝練行くって言うから……一緒に行かせてもらって……えと、私も、早く来て……教室の掃除とか……花瓶の水替えたりとか、したかったし……」
「……立派な心がけね。でも、何でよりにもよって今日なのよぉ……」
うう、だのああ、だの言いながら河本さんが縮こまる。
私はそれを見ておろおろすることしかできない。
やがて、河本さんがゆっくりと顔を上げた。
その顔は真っ赤で、瞳は僅かに潤んでる。
それから河本さんは、自棄になったように叫んだ。
「ええ、そうよ、そうですよ! ラブレター渡そうとしてましたよぉ! 好きなの! 私は芹沢くんが大好きなのっ!! 悪い!?」
……え?
ぽかん、と口を開けてしまう。
びっくりしすぎて、声が出ない。
恋という感情なんて私は経験したことがないし、ついドギマギしてしまう。
河本さんが、芹沢さんのことを、好き。
何度脳内でその事実を反芻しても、慣れそうになかった。
そんな私の様子を、河本さんはじっと睨むように見つめていて。
やがて。
は、と口を開けたかと思うと。
「……もしかして……気付いてなかった……?」
そう問われ、こくり、とぎこちなく頷く。
途端に河本さんの顔が、湯気でも出るんじゃないかってくらい真っ赤になった。
恥ずかしそうに顔を覆った河本さんは、がっくりと項垂れる。
「……嘘でしょ……自爆した……」
「こ、河本さん……あの……」
「……何? ……いいのよ別に。笑っても。小枝さんはいいわよね。ちゃんと彼氏がいるんだから」
彼氏?
何のことだろう。
きょとん、としてしまう。
「あの……何の、ことですか……?」
「……え? 鈴原くんと付き合ってるんでしょう?」
予想外の爆弾を落とされて、今度は私が真っ赤になる番だった。
「ふ、ふえ!? ち、ちが、違うよ……っ、鈴原くんは、友達で……家が隣同士で……そんな風に誤解されたら、鈴原くんに迷惑かけちゃうよ……っ」
わたわたと慌てる私を、河本さんがひどく複雑そうに見ている。
な、何でしょうか。
それから、じと、と私を責めるように見つめて河本さんは言った。
「……貴方のその鈍感さ、結構罪に値すると思うわ」
「え……あ、あの……ごめんなさい……」
「……私に謝られても困るけど」
しばらく、気まずい沈黙がその場を支配する。
どうしようか、と少し迷った末に口を開く。
「あの……えっと……私が言いたかったのは……笑ったりしません、ってこと、で……」
おどおどと言葉を紡ぐ私を、河本さんが涙目で見ている。
どうにか、私はこの想いを伝えたくて。
「私……あの……河本さんの気持ち、応援します……」
「……え?」
河本さんが、虚を突かれたような顔をした。
まるで、そんなことを言われるとは思ってもみなかったような顔。
「河本さん、素敵な人だし……優しいし……可愛いし……好きな男の子に告白しようと思えるのって……凄く、勇気あると思うから……だから、あの……」
河本さんが、黙り込む。
どうしよう、お節介だって思われちゃったかな。
でも、次の瞬間聴こえてきた声は。
「……ほんと?」
戸惑ったように揺れる、至って女の子らしい儚い物で。
私はそれに応えるように、一生懸命何度も何度も頷いた。
「わ、私なんかに何ができるかは、わからないけど……弟が、芹沢さんと同じ部活だし……私にできることがあれば、何でもしたいって言うか……」
河本さんが、また黙る。
私もそれ以上何を言っていいのかわからなくて、黙ってしまう。
そして。
「……ありがと……小枝さん……」
次に顔を上げた河本さんが見せてくれたのは、笑顔。
私が初めて見る表情。
その笑顔が、あまりにも綺麗で、優しくて、可愛くて。
やっぱり、河本さんはとても素敵な人なんだと改めて思う。
どうか、この人の恋がうまくいきますように。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる