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第七話『魂の叫び! シャウトラバー誕生!』
その6 世界で一番
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★魔闘少女ハーツ・ラバーズ!
第七話『魂の叫び! シャウトラバー誕生!』
その6 世界で一番
teller:秋風 千雪
突然の怪物の襲来、逃げ惑う人々。
何これ、私、夢でも見てるの?
……でも、今日拓海くんと過ごせた大切な日が、思い出が、ただの夢になるのは嫌だ。
「千雪、逃げるぞッ!」
呆然としていたら拓海くんが私の片手を掴んで無理矢理立ち上がらせて来た。
そのまま有無を言わさない勢いで拓海くんは、私を引っ張って行こうとする。
逃げるのはいいんだけど。
ちら、と横目でさっきの三人娘を見やる。
気付けば、この場には三人娘と、私と拓海くんと、怪物の傍らに立つ大男しかいなくて。
女の子たちは三人とも逃げる素振りを見せない。
それどころか、怪物に立ち向かうかのようにその場に立っていた。
「ねえ、何あれ!? お姉ちゃんたち、逃げなくていいの!?」
私の手を引こうとする拓海くんに慌てて問いかけると、拓海くんは切羽詰まった様子で言った。
「ねーちゃんたちは大丈夫だ! 理由は後で話す! 今はとにかく逃げるぞ!」
それでも、女の子たちが気になってしまう。
だから、もたつきながら三人娘に視線をやると。
「ハーツ・ラバー! アイ・ブレイク・ミー!」
三人が、一斉に叫んだ。
いつの間にそんな物を出したのか、三人の手にはそれぞれカラフルな大きな剣が握られていて。
三人は、何の躊躇もなくそれを自らの心臓部に突き刺した。
あまりのことにひゅっと息を呑んでいると、見る見るうちに三人の服装がふりふりひらひらのドレスに変わった。
あの子たちの胸部には、傷一つ無い。
「え……どういうこと……?」
声が震える。
もう驚いているのか、怯えているのか良くわからない。
「だから大丈夫って言ったろ。ほら、早く――」
拓海くんの言葉が途中で止まる。
何だ、と思っていると黒い靄に包まれた怪物の腕が眼前に近付いて来ていた。
しまった、拓海くんのおねーちゃん達に気を取られて怪物の方を全然見ていなかった。
やばい――。
「千雪ッ!!」
拓海くんが私の名前を呼ぶ。
呼んでくれる。
かと思えば、全身に衝撃が走った。
拓海くんに突き飛ばされたのだ、とわかったのは数秒後で。
我に返った頃には、拓海くんは怪物の腕に捕まっていた。
――私を、庇ったから。
「拓海くん!!」
必死に手を伸ばす。
でも届かない。
何もかもが遅すぎた。
怪物は拓海くんを引き上げ、そのままドレス姿の女の子達の前に突き付ける。
さながら、人質のように。
「たっくん……!」
ピンクのドレスを着たポニーテールの女の子が悲痛な声を上げる。
それを嘲笑うかのように、大男が言葉を発した。
「はっ、ざまあねえ。……やっちまいな! アニマ!」
怪物が咆哮を上げる。
耳を塞ぎたくなる程の轟音。
ひどく雑多なBGMが流れる。
ただでさえゲームセンターはうるさいけれど、それを十倍騒がしくしたような音。
それはまるで衝撃波のように吹き出し、女の子たちを覆い尽くした。
「きゃあっ!!」
女の子たちが、音の衝撃波に薙ぎ払われる。
身を宙に浮かせ、それぞれ強かに壁に背を打ち付ける。
あまりの出来事に、声が出ない。
動けない。
それでも女の子たちは傷付いた身体に鞭を打って懸命に立ち上がり、怪物に向かって行こうとする。
でも、すぐにその動きは止まった。
怪物が、捕らえた拓海くんを女の子達の眼前に突き出したからだ。
――やっぱり人質のつもりか。
「ねーちゃん!! オレのことはいいから攻撃しろよ!!」
「たっくん……っ、でも……っ!!」
拓海くんが必死に叫ぶ。
それに応えたのは、小さな小さなポニーテールの女の子。
先程の衝撃波の影響で、その子の身体のあちこちに擦り傷ができている。
あんなに小さな女の子が戦ってるのに、頑張ってるのに。
……何で、私は棒立ちしてるんだろう。
無性に自分に腹が立って、私は衝動の赴くままに駆け出す。
向かう先は、怪物の足下。
私が動くことは誰も予想していなかったのか、拓海くんも、女の子たちも、大男もぎょっとした表情を浮かべる。
でも構っていられず、私は怪物に殴りかかった。
拳が、硬い表面に当たる。
私なんかの力じゃ、たかが知れてる。
拳が痛かったけど、それでも何度も何度も怪物を殴りつけた。
少しでも、私の力が拓海くんを救うことに繋がればいい。
そう、信じていたかった。
それしか信じたくなかった。
「くそ……っ、くそっ! 拓海くんを放せよ! ふざけんじゃねーよ! この野郎!」
焦りのせいか、普段の倍は口が悪くなる。
そんな私に追い打ちをかけるかのように、怪物が拓海くんを握っていない方の手で勢い良く私を振り払った。
「……っ、あ……!」
「千雪!!」
拓海くんの声が、どこか遠い。
怪物なんかと違ってただのちっぽけな人間でしかない私は簡単に弾き飛ばされ、倒れ伏す。
全身が痛い。
多分、身体のどこかから血が出てる。
立ち上がらなきゃいけないのに、どうにもできない現状を突き付けられているようで、身体が動かない。
私には……私には何もできないの……?
拓海くんが捕まってるのに?
拓海くんは私を庇ってこうなったのに?
なのに、何もできないの?
拓海くんは、私の大切な人なのに。
――嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
ふつふつと、胸の奥から熱く煮え滾ったような感情が沸き上がる。
同時に脳裏に過ぎったのは、拓海くんと過ごした思い出。
私を見つけてくれた、私と話してくれた、私に笑顔を向けてくれた、私の隣にいてくれた。
それがどれだけ嬉しかったかなんて、言葉じゃとても言い表せない。
拓海くんだって、私にとって拓海くんがどれだけ大きな存在なのか絶対わかっていない。
独りぼっちだった私が、拓海くんの前だけでは自分を偽らず私のままでいられた。
こんな人、きっともう二度と出会えない。
とにかく私は拓海くんが大事で、失いたくなくて、もっと一緒にいたくて、ずっと一緒にいたくて。
だから。
こんな所で、諦めちゃいけないんだ。
よろけながら、立ち上がる。
痛覚を全部無視して、怪物を睨みつける。
なのに。
「千雪、だめだ! 早く逃げろってば!!」
拓海くんは私にそんなことを言う。
でも、無理だ。
そんなことできない。
「……ごめん。拓海くんの言うことは聞けない」
はっきりとそう告げると、拓海くんの瞳が大きく揺れた。
そんな顔しないでほしい。
いつもみたいにしていてほしい。
気がつけば、私はぺらぺらぺらぺらと言葉を紡いでいた。
「拓海くんは……私に沢山の思い出をくれた。私にとって、たった一人の大事な男の子! 拓海くんがいてくれるから、私は毎日に希望を持てた! 拓海くんの前でだけ、私は私でいられた!私には拓海くんが必要、拓海くんは、私のぜんぶだ! だから……拓海くんをここで諦めたくない! そんなことするくらいなら!! 私、死んだ方がマシだ!!」
「ちゆ、き……」
すう、はあ、と何度か深呼吸を繰り返す。
次に口にする言葉は決まっていた。
私は、じっと前を見据えて。
今までの人生で一番大きな声で、叫ぶ。
「私は!! 拓海くんが!! 世界で一番大好きだ!!」
しん、と場が静まり返る。
拓海くんがぽかんと私を見つめている。
けど、嘘じゃない。
これは本当の気持ちだ。
私に勝手に夢を押し付けてくる母さんよりも、私に勝手なイメージを押し付けてくるクラスメイトよりも、拓海くんの方が何億倍も大事。
だから、どれだけ血が流れようと、どれだけ痛みを与えられようと、ここで退くわけにはいかない。
「うにゃあ!?」
ふと、変な声が耳に届いた。
知らない声だ。
何だ、と思って辺りを見回すと、紫色に発光したコウモリらしきシルエットがこちらにぱたぱたと飛んで来るのが見えた。
何あれ、おもちゃ?
「おいおい……まさかこんなに早く四人目のハーツ・ラバーが見つかるとはな」
そこで、私は一瞬呆けてしまったように思える。
だって、目の前のコウモリが喋ったから。
え、何で?
最近の技術が凄いの?
っていうか、ハーツ・ラバーって何?
「おい、姉ちゃん! 小枝拓海を助けたいか!?」
コウモリが私に問いかけてくる。
何でこいつが喋るのかは、やっぱりわからなかったけど。
その質問の答えなんて、決まり切っていた。
「勿論。……その為なら、何だってする」
「そうかい。じゃあ、こいつを受け取れ!」
コウモリの体内から、紫色の大剣が飛び出して来る。
それは私の手に吸い付くように収まった。
何でだろう。
私、これで何をしなくちゃいけないのか知っている。
「もうわかるだろ? ……覚悟があるなら、お前の全部、ぶつけてみやがれぃ!」
コウモリが叫ぶ。
その台詞が言い終わらない内に、私はぎゅ、と紫色の剣を握って、コウモリに負けじと叫んだ。
頭の中に浮かんだ、大切な言葉を。
「ハーツ・ラバー! アイ・ブレイク・ミー!」
周りに固められた偽りだらけの自分を、壊せ。
拓海くんの前でしか見せないような本当の自分を、もっと押し出して行きたい。
私は、私として生まれ変わりたい。
拓海くんが私と出会ってくれた意味は、きっとそこにあるから。
そう願って、私は剣を心臓に迷いなく突き刺した。
◆
ふわふわ。
気付いたら、妙な空間に私は漂っていた。
頭がぼうっとする。
まるで、熱でもあるみたいに。
状況を認識するよりも早く、纏っていたセーラー服が剥がれて下からフリフリの衣装が姿を現す。
上はひらひらのレースで一杯だったけど、下はスカートなんかじゃなくて動きやすいショートパンツ。
何だろう、変なカッコ。
でも、不思議だな。
力が、みなぎってくる感じがする。
◆
次に瞬きをすれば、私は再び地面に足を着いていた。
服装は、やっぱり変なカッコに変わっていて。
でもあんまり違和感はなくて。
脳がただ、この台詞を叫べと私にひたすらに呼びかけている。
「全部ぶっ飛ばす無敵の拳! 魂の戦士・シャウトラバー!」
そう、私は。
私は、たった今――ハーツ・ラバー・シャウトラバーに変身したんだ。
第七話『魂の叫び! シャウトラバー誕生!』
その6 世界で一番
teller:秋風 千雪
突然の怪物の襲来、逃げ惑う人々。
何これ、私、夢でも見てるの?
……でも、今日拓海くんと過ごせた大切な日が、思い出が、ただの夢になるのは嫌だ。
「千雪、逃げるぞッ!」
呆然としていたら拓海くんが私の片手を掴んで無理矢理立ち上がらせて来た。
そのまま有無を言わさない勢いで拓海くんは、私を引っ張って行こうとする。
逃げるのはいいんだけど。
ちら、と横目でさっきの三人娘を見やる。
気付けば、この場には三人娘と、私と拓海くんと、怪物の傍らに立つ大男しかいなくて。
女の子たちは三人とも逃げる素振りを見せない。
それどころか、怪物に立ち向かうかのようにその場に立っていた。
「ねえ、何あれ!? お姉ちゃんたち、逃げなくていいの!?」
私の手を引こうとする拓海くんに慌てて問いかけると、拓海くんは切羽詰まった様子で言った。
「ねーちゃんたちは大丈夫だ! 理由は後で話す! 今はとにかく逃げるぞ!」
それでも、女の子たちが気になってしまう。
だから、もたつきながら三人娘に視線をやると。
「ハーツ・ラバー! アイ・ブレイク・ミー!」
三人が、一斉に叫んだ。
いつの間にそんな物を出したのか、三人の手にはそれぞれカラフルな大きな剣が握られていて。
三人は、何の躊躇もなくそれを自らの心臓部に突き刺した。
あまりのことにひゅっと息を呑んでいると、見る見るうちに三人の服装がふりふりひらひらのドレスに変わった。
あの子たちの胸部には、傷一つ無い。
「え……どういうこと……?」
声が震える。
もう驚いているのか、怯えているのか良くわからない。
「だから大丈夫って言ったろ。ほら、早く――」
拓海くんの言葉が途中で止まる。
何だ、と思っていると黒い靄に包まれた怪物の腕が眼前に近付いて来ていた。
しまった、拓海くんのおねーちゃん達に気を取られて怪物の方を全然見ていなかった。
やばい――。
「千雪ッ!!」
拓海くんが私の名前を呼ぶ。
呼んでくれる。
かと思えば、全身に衝撃が走った。
拓海くんに突き飛ばされたのだ、とわかったのは数秒後で。
我に返った頃には、拓海くんは怪物の腕に捕まっていた。
――私を、庇ったから。
「拓海くん!!」
必死に手を伸ばす。
でも届かない。
何もかもが遅すぎた。
怪物は拓海くんを引き上げ、そのままドレス姿の女の子達の前に突き付ける。
さながら、人質のように。
「たっくん……!」
ピンクのドレスを着たポニーテールの女の子が悲痛な声を上げる。
それを嘲笑うかのように、大男が言葉を発した。
「はっ、ざまあねえ。……やっちまいな! アニマ!」
怪物が咆哮を上げる。
耳を塞ぎたくなる程の轟音。
ひどく雑多なBGMが流れる。
ただでさえゲームセンターはうるさいけれど、それを十倍騒がしくしたような音。
それはまるで衝撃波のように吹き出し、女の子たちを覆い尽くした。
「きゃあっ!!」
女の子たちが、音の衝撃波に薙ぎ払われる。
身を宙に浮かせ、それぞれ強かに壁に背を打ち付ける。
あまりの出来事に、声が出ない。
動けない。
それでも女の子たちは傷付いた身体に鞭を打って懸命に立ち上がり、怪物に向かって行こうとする。
でも、すぐにその動きは止まった。
怪物が、捕らえた拓海くんを女の子達の眼前に突き出したからだ。
――やっぱり人質のつもりか。
「ねーちゃん!! オレのことはいいから攻撃しろよ!!」
「たっくん……っ、でも……っ!!」
拓海くんが必死に叫ぶ。
それに応えたのは、小さな小さなポニーテールの女の子。
先程の衝撃波の影響で、その子の身体のあちこちに擦り傷ができている。
あんなに小さな女の子が戦ってるのに、頑張ってるのに。
……何で、私は棒立ちしてるんだろう。
無性に自分に腹が立って、私は衝動の赴くままに駆け出す。
向かう先は、怪物の足下。
私が動くことは誰も予想していなかったのか、拓海くんも、女の子たちも、大男もぎょっとした表情を浮かべる。
でも構っていられず、私は怪物に殴りかかった。
拳が、硬い表面に当たる。
私なんかの力じゃ、たかが知れてる。
拳が痛かったけど、それでも何度も何度も怪物を殴りつけた。
少しでも、私の力が拓海くんを救うことに繋がればいい。
そう、信じていたかった。
それしか信じたくなかった。
「くそ……っ、くそっ! 拓海くんを放せよ! ふざけんじゃねーよ! この野郎!」
焦りのせいか、普段の倍は口が悪くなる。
そんな私に追い打ちをかけるかのように、怪物が拓海くんを握っていない方の手で勢い良く私を振り払った。
「……っ、あ……!」
「千雪!!」
拓海くんの声が、どこか遠い。
怪物なんかと違ってただのちっぽけな人間でしかない私は簡単に弾き飛ばされ、倒れ伏す。
全身が痛い。
多分、身体のどこかから血が出てる。
立ち上がらなきゃいけないのに、どうにもできない現状を突き付けられているようで、身体が動かない。
私には……私には何もできないの……?
拓海くんが捕まってるのに?
拓海くんは私を庇ってこうなったのに?
なのに、何もできないの?
拓海くんは、私の大切な人なのに。
――嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
ふつふつと、胸の奥から熱く煮え滾ったような感情が沸き上がる。
同時に脳裏に過ぎったのは、拓海くんと過ごした思い出。
私を見つけてくれた、私と話してくれた、私に笑顔を向けてくれた、私の隣にいてくれた。
それがどれだけ嬉しかったかなんて、言葉じゃとても言い表せない。
拓海くんだって、私にとって拓海くんがどれだけ大きな存在なのか絶対わかっていない。
独りぼっちだった私が、拓海くんの前だけでは自分を偽らず私のままでいられた。
こんな人、きっともう二度と出会えない。
とにかく私は拓海くんが大事で、失いたくなくて、もっと一緒にいたくて、ずっと一緒にいたくて。
だから。
こんな所で、諦めちゃいけないんだ。
よろけながら、立ち上がる。
痛覚を全部無視して、怪物を睨みつける。
なのに。
「千雪、だめだ! 早く逃げろってば!!」
拓海くんは私にそんなことを言う。
でも、無理だ。
そんなことできない。
「……ごめん。拓海くんの言うことは聞けない」
はっきりとそう告げると、拓海くんの瞳が大きく揺れた。
そんな顔しないでほしい。
いつもみたいにしていてほしい。
気がつけば、私はぺらぺらぺらぺらと言葉を紡いでいた。
「拓海くんは……私に沢山の思い出をくれた。私にとって、たった一人の大事な男の子! 拓海くんがいてくれるから、私は毎日に希望を持てた! 拓海くんの前でだけ、私は私でいられた!私には拓海くんが必要、拓海くんは、私のぜんぶだ! だから……拓海くんをここで諦めたくない! そんなことするくらいなら!! 私、死んだ方がマシだ!!」
「ちゆ、き……」
すう、はあ、と何度か深呼吸を繰り返す。
次に口にする言葉は決まっていた。
私は、じっと前を見据えて。
今までの人生で一番大きな声で、叫ぶ。
「私は!! 拓海くんが!! 世界で一番大好きだ!!」
しん、と場が静まり返る。
拓海くんがぽかんと私を見つめている。
けど、嘘じゃない。
これは本当の気持ちだ。
私に勝手に夢を押し付けてくる母さんよりも、私に勝手なイメージを押し付けてくるクラスメイトよりも、拓海くんの方が何億倍も大事。
だから、どれだけ血が流れようと、どれだけ痛みを与えられようと、ここで退くわけにはいかない。
「うにゃあ!?」
ふと、変な声が耳に届いた。
知らない声だ。
何だ、と思って辺りを見回すと、紫色に発光したコウモリらしきシルエットがこちらにぱたぱたと飛んで来るのが見えた。
何あれ、おもちゃ?
「おいおい……まさかこんなに早く四人目のハーツ・ラバーが見つかるとはな」
そこで、私は一瞬呆けてしまったように思える。
だって、目の前のコウモリが喋ったから。
え、何で?
最近の技術が凄いの?
っていうか、ハーツ・ラバーって何?
「おい、姉ちゃん! 小枝拓海を助けたいか!?」
コウモリが私に問いかけてくる。
何でこいつが喋るのかは、やっぱりわからなかったけど。
その質問の答えなんて、決まり切っていた。
「勿論。……その為なら、何だってする」
「そうかい。じゃあ、こいつを受け取れ!」
コウモリの体内から、紫色の大剣が飛び出して来る。
それは私の手に吸い付くように収まった。
何でだろう。
私、これで何をしなくちゃいけないのか知っている。
「もうわかるだろ? ……覚悟があるなら、お前の全部、ぶつけてみやがれぃ!」
コウモリが叫ぶ。
その台詞が言い終わらない内に、私はぎゅ、と紫色の剣を握って、コウモリに負けじと叫んだ。
頭の中に浮かんだ、大切な言葉を。
「ハーツ・ラバー! アイ・ブレイク・ミー!」
周りに固められた偽りだらけの自分を、壊せ。
拓海くんの前でしか見せないような本当の自分を、もっと押し出して行きたい。
私は、私として生まれ変わりたい。
拓海くんが私と出会ってくれた意味は、きっとそこにあるから。
そう願って、私は剣を心臓に迷いなく突き刺した。
◆
ふわふわ。
気付いたら、妙な空間に私は漂っていた。
頭がぼうっとする。
まるで、熱でもあるみたいに。
状況を認識するよりも早く、纏っていたセーラー服が剥がれて下からフリフリの衣装が姿を現す。
上はひらひらのレースで一杯だったけど、下はスカートなんかじゃなくて動きやすいショートパンツ。
何だろう、変なカッコ。
でも、不思議だな。
力が、みなぎってくる感じがする。
◆
次に瞬きをすれば、私は再び地面に足を着いていた。
服装は、やっぱり変なカッコに変わっていて。
でもあんまり違和感はなくて。
脳がただ、この台詞を叫べと私にひたすらに呼びかけている。
「全部ぶっ飛ばす無敵の拳! 魂の戦士・シャウトラバー!」
そう、私は。
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