5 / 38
第一話『お友達から始めましょう』
その5 ジェラシーなんてしたくないのに
しおりを挟む
★つぐむく。~中二病と不思議ちゃん~ 第一話『お友達から始めましょう』その5 ジェラシーなんてしたくないのに
昨日はあまり寝付けなかった。
南雲と友達になって、渇望していた『友人』という存在ができて。
舞い上がりすぎて、遠足前日の小学生みたいなテンションになってしまったのだ。
きっと今、俺の目元にはひっどい隈が出来ていることだろう。
片目は眼帯で覆っているのだから、然程目立たないとは思うけど。
でも、南雲と友達になったは良いけれど、南雲の言う通り俺は何からすればいいやらまるでわからない。
……友達同士って、何をするんだ?
そんな思いを悶々と抱えたまま、今日も今日とて登校すると。
「神室くん、おはようなのです」
俺の隣の席に座って読書していた南雲が、こちらに気付いてぺこりと頭を下げて来た。
誰かに挨拶してもらえた。
そのことだけでも無性に嬉しくて飛び上がって喜びたいくらいだったが、俺は馬鹿なので片手で顔を覆って中二くさい台詞を吐く。
「フッ……良い朝だな、南雲。まさしく新時代の幕開けと言えよう。俺と言う救世主が誕生しようとしているのだからな!」
もうわけわからん。
心の中で自分に自分でツッコミを入れる。
それでも、南雲はくすくすと笑って。
南雲の笑顔を未だに見慣れていない俺の心臓が、どくんっと勢い良く跳ねる。
「やっぱり、神室くんは面白いのです。そういうところ、好きですよ」
好き……好き……。
衝撃的な言葉だった。
脳内に、確実にエコーがかかっている。
その発言に深い意味がないのはわかっている。でも、免疫がない俺はその場に真っ赤になって立ち尽くすことしかできなかった。
……南雲は、こんな俺を肯定してくれるんだな。
中二病全開の俺を、ドン引きしたりもせず無邪気に受け入れてくれる。
そのことにどれだけ俺が救われているかなんて、南雲はきっと気付いていないし俺もきっと伝えられない。
それが歯痒くてもどかしくて仕方がなかった。
「椋ー!! おっはよー!!」
突然教室に元気な声が響き渡る。
昨日も聞いた声、昨日も経験した展開。
デジャヴというやつだ。
登校したばかりの牟田美夏が、南雲に突進して、抱きついて、そのまま頬ずりを始める。
「いやはや、朝から椋に触れるのは癒されるな! 今日も太ももの肉付きが実にセクシーだ。触ってもいいかい?」
「……美夏ちゃん……太ももについては椋、気にしているのです……」
牟田に変態的に迫られて、太もものことを指摘されて椋が不満そうに俯く。
太もも……。
ちらりと視線を下にやると、なるほど確かに。
南雲は小柄な体躯に反して、太ももの肉付きが良い。
……って、どこ見てんだよ俺は!!
変態かよ!!
本気で、自分で自分を殴りたくなった。
「はよ、神室」
急に背後から声をかけられ、びくりと肩が跳ねる。
振り返ると、牟田と一緒に登校してきたのだろうか。
牟田の彼氏の、志久次郎が立っていた。
「悪いな、美夏が南雲にべったりで」
志久が申し訳なさそうな顔をする。
悪い?
何が?
声も出せない俺に向かって、志久は補足するように言った。
「ん? お前と南雲、付き合い始めたんだろ?」
つきあう。
…………つきあう?
ぼんっと自分の顔が真っ赤になるのが嫌でもわかった。
俺は慌ててぶんぶんと首を横に振った。
俺と南雲は友達だ、まだそんなんじゃない。
……いや、『まだ』って何だよ……。
一人勝手に意識して浮き沈みしている俺が、俺は世界で一番滑稽な生き物のように思えてきた。
志久は百面相をしている俺に訝しげな視線を送りつつも、穏やかに言う。
「何だ、違うのか。でも、多分仲良くなったんだろお前ら。美夏が邪魔するかもしれねえけど、あんまり気にすんなよ。俺で良ければフォローするからさ。……美夏、いい加減南雲から離れろよ。困ってるだろ。やれやれ……」
そう言って、志久は牟田に近寄り、その首根っこを引っ掴んで南雲から引き剥がす。
その時、昨日経験した感情がまた自分の胸の奥に渦巻いていることに気付いた。
南雲と距離が近い牟田、南雲と自然体で話せる牟田。
俺も、そう在りたいのに。
どうすれば、南雲との距離が縮まるんだろう。
女子に嫉妬するなんて、心が狭いし馬鹿馬鹿しいことくらいわかっている。
それでも、俺は。
俺は――ようやく出来た友達を、手放したくなくて。
みっともない嫉妬に焦がれる胸が、無性に疎ましく感じる。
その気持ちは、放課後まで悶々と続いたのだった。
昨日はあまり寝付けなかった。
南雲と友達になって、渇望していた『友人』という存在ができて。
舞い上がりすぎて、遠足前日の小学生みたいなテンションになってしまったのだ。
きっと今、俺の目元にはひっどい隈が出来ていることだろう。
片目は眼帯で覆っているのだから、然程目立たないとは思うけど。
でも、南雲と友達になったは良いけれど、南雲の言う通り俺は何からすればいいやらまるでわからない。
……友達同士って、何をするんだ?
そんな思いを悶々と抱えたまま、今日も今日とて登校すると。
「神室くん、おはようなのです」
俺の隣の席に座って読書していた南雲が、こちらに気付いてぺこりと頭を下げて来た。
誰かに挨拶してもらえた。
そのことだけでも無性に嬉しくて飛び上がって喜びたいくらいだったが、俺は馬鹿なので片手で顔を覆って中二くさい台詞を吐く。
「フッ……良い朝だな、南雲。まさしく新時代の幕開けと言えよう。俺と言う救世主が誕生しようとしているのだからな!」
もうわけわからん。
心の中で自分に自分でツッコミを入れる。
それでも、南雲はくすくすと笑って。
南雲の笑顔を未だに見慣れていない俺の心臓が、どくんっと勢い良く跳ねる。
「やっぱり、神室くんは面白いのです。そういうところ、好きですよ」
好き……好き……。
衝撃的な言葉だった。
脳内に、確実にエコーがかかっている。
その発言に深い意味がないのはわかっている。でも、免疫がない俺はその場に真っ赤になって立ち尽くすことしかできなかった。
……南雲は、こんな俺を肯定してくれるんだな。
中二病全開の俺を、ドン引きしたりもせず無邪気に受け入れてくれる。
そのことにどれだけ俺が救われているかなんて、南雲はきっと気付いていないし俺もきっと伝えられない。
それが歯痒くてもどかしくて仕方がなかった。
「椋ー!! おっはよー!!」
突然教室に元気な声が響き渡る。
昨日も聞いた声、昨日も経験した展開。
デジャヴというやつだ。
登校したばかりの牟田美夏が、南雲に突進して、抱きついて、そのまま頬ずりを始める。
「いやはや、朝から椋に触れるのは癒されるな! 今日も太ももの肉付きが実にセクシーだ。触ってもいいかい?」
「……美夏ちゃん……太ももについては椋、気にしているのです……」
牟田に変態的に迫られて、太もものことを指摘されて椋が不満そうに俯く。
太もも……。
ちらりと視線を下にやると、なるほど確かに。
南雲は小柄な体躯に反して、太ももの肉付きが良い。
……って、どこ見てんだよ俺は!!
変態かよ!!
本気で、自分で自分を殴りたくなった。
「はよ、神室」
急に背後から声をかけられ、びくりと肩が跳ねる。
振り返ると、牟田と一緒に登校してきたのだろうか。
牟田の彼氏の、志久次郎が立っていた。
「悪いな、美夏が南雲にべったりで」
志久が申し訳なさそうな顔をする。
悪い?
何が?
声も出せない俺に向かって、志久は補足するように言った。
「ん? お前と南雲、付き合い始めたんだろ?」
つきあう。
…………つきあう?
ぼんっと自分の顔が真っ赤になるのが嫌でもわかった。
俺は慌ててぶんぶんと首を横に振った。
俺と南雲は友達だ、まだそんなんじゃない。
……いや、『まだ』って何だよ……。
一人勝手に意識して浮き沈みしている俺が、俺は世界で一番滑稽な生き物のように思えてきた。
志久は百面相をしている俺に訝しげな視線を送りつつも、穏やかに言う。
「何だ、違うのか。でも、多分仲良くなったんだろお前ら。美夏が邪魔するかもしれねえけど、あんまり気にすんなよ。俺で良ければフォローするからさ。……美夏、いい加減南雲から離れろよ。困ってるだろ。やれやれ……」
そう言って、志久は牟田に近寄り、その首根っこを引っ掴んで南雲から引き剥がす。
その時、昨日経験した感情がまた自分の胸の奥に渦巻いていることに気付いた。
南雲と距離が近い牟田、南雲と自然体で話せる牟田。
俺も、そう在りたいのに。
どうすれば、南雲との距離が縮まるんだろう。
女子に嫉妬するなんて、心が狭いし馬鹿馬鹿しいことくらいわかっている。
それでも、俺は。
俺は――ようやく出来た友達を、手放したくなくて。
みっともない嫉妬に焦がれる胸が、無性に疎ましく感じる。
その気持ちは、放課後まで悶々と続いたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる
九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。
※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる