つぐむく。~中二病と不思議ちゃん~

ハリエンジュ

文字の大きさ
25 / 38
第三話『ギャクシン!!(逆身長差の意)』

その4 最恐のボディガード

しおりを挟む
★つぐむく。~中二病と不思議ちゃん~ 第三話『ギャクシン!!(逆身長差の意)』その4 最恐のボディガード

「いらっしゃいませーっ! あっ、椋ちゃん、鶫くーんっ! 来てくれたんだっ! わあっ、嬉しい!」

 割引券の情報を頼りに、八ツ橋がバイトしているという喫茶店に赴くと、ウェイトレス姿の八ツ橋が俺と椋を出迎えてくれた。
 ふりふりひらひらのフリルいっぱいのウェイトレス服。
 ちょっと、その、所謂メイド服っぽいモチーフのデザインな気がした。
 幼く愛くるしい顔立ちの八ツ橋に、良く似合ってるな、と思った。
 しかし、その、視線がつい要らんとこに向いてしまう。
 豊満なバストとか、ちら、と見える綺麗な脚とか、まあ、色々、エロティックな方向に。
 普段アホみたいな中二病キャラを貼り付けているくせに、こういう時ばかり健全な男子高校生の本能が疼いてしまう自分は、本当に最低だと思った。
 頭の中で、なるべく『無』を唱える。
 俺の脳内の俺は、現在、和服姿で真顔のまま、でっかい書道紙に、真っ黒な墨を塗りたくったでっかい筆で『無』をひたすらに書き殴っていた。

「麻耶ちゃん、ウェイトレス服、かわいいのです」

 椋がぱちぱちと拍手をして、幸せそうに笑いながらそんなことを言った。
 そう言う椋だって、かなりめちゃくちゃ可愛いと思う。
 ……八ツ橋のウェイトレス服、椋が着たらどうなるんだろう。
 ちょっと肉付きのいい太ももがきっと、それはもう色っぽく――。

 『無』を書いた。
 脳内で、そりゃもう一心不乱に。
 簡単に変なことを考えてしまう馬鹿な俺を、必死に抑え込む。
 脳内には、『無』が羅列された紙がどっさりと積まれていた。
 俺の変な気も知らず、八ツ橋はお盆を片手に今にもその場でくるくる回りそうな勢いで、とてもはしゃぎながら俺たちに声をかけた。

「それじゃ、お席にご案内するねっ! 何食べる? やっぱイチゴパフェ!?」

「はい。椋、イチゴ、好きなのです」

 ……椋、イチゴ、好きなのか。
 女の子女の子してる感じが、やっぱ可愛いな。
 無を書いている筈の俺が、ちょっと休憩してしまう。
 心と決意が弱い俺でごめん、椋。
 八ツ橋が、俺たちについてくるよう促し、席に案内してくれる。
 その時、気付いた。
 この店は、若い男性客が妙に多い。
 しかも、どいつもこいつも八ツ橋にちらちらと視線を送っている。
 そしてそのどれもが――さっきの俺と同じく、よこしまな視線、のような気がした。
 八ツ橋は気付いていないようだった。
 ただただ、無邪気に笑っている。
 俺が言えた義理じゃないが、ひどく無防備で、大丈夫か? と色々心配になってしまう。

 その時、カラン、と入り口のベルが鳴った。
 振り返り、俺は思わずフリーズした。
 ――村瀬静流。
 村瀬が、入り口に立って、じろりと男性客を殺意全開で睨んでいる。
 昨日絡まれたことを思い出して、恐怖でついつい怯えてしまう。
 村瀬の鋭い敵意に耐え切れなくなったのか、さっきから八ツ橋をいやらしい目で見ていた男性客たちは、次々と店を出る支度を進めていった。

「あっ、シズくーーんっ!」

 八ツ橋が村瀬の存在に気付き、何の迷いもなく村瀬に抱きつく。
 村瀬は心底鬱陶しそうな表情を浮かべ、ぺしんと八ツ橋の頭を叩く。
 何故か、いつも以上にイライラしているようだった。
 俺が震えながら立ち尽くしていると、村瀬と目が合った。
 合ってしまった。
 ひっと短い悲鳴を漏らす俺を見て、村瀬が少し驚いた顔をした後、先ほどよりも濃い殺意を滲ませた表情で俺を睨んだ。
 そのまま、村瀬はずかずかと俺に近付いてくる。
 え、何、何。
 村瀬に胸倉を掴まれる。
 俺よりずっと小柄な筈なのに、村瀬からの圧は凄まじかった。

「おいコラ、神室」

「ひゃ、ひゃい」

 ひどく情けない声が漏れた。
 でも、怖いんだよ、仕方ないんだよ。
 怯え切った俺を、村瀬は許してなんかくれなくて。

「……ちょっと、ツラ貸せや」

 何と、言うか。
 その言葉に、物凄く、凄まじく、嫌な予感がした。
 ちなみにこの嫌な予感は、ものの見事に的中することとなる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...