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第一話『きみ、異世界転生って知ってるかね?』
その9 それでも貴方の隣に居たい
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★貴方の隣で呼吸がしたい。 第一話『きみ、異世界転生って知ってるかね?』その9 それでも貴方の隣に居たい
「きみは、ばかだねえ」
後日、私が担当するクラスの教室の入り口前で立ち尽くす私を見て、『転入生』としてこのクラスに関わることとなる聖くんは、けたけたとおかしそうに笑った。
そう、馬鹿だ。私はどうしようもなく馬鹿だった。
初めて学校を訪れたあの日、私は転生した小夜さんに出くわし、会いたくて会いたくて仕方がなかった小夜さんに出くわし、衝動を抑え切れず彼女を強く強く抱き締めた。
すぐに我に返って彼女から離れて平謝りしたが、小夜さんの瞳に浮かんでいたのは確かな『警戒』の感情。
当たり前だ、女子高生が見知らぬ大人にいきなり抱き締められれば、誰だって怖いだろう。
そう、見知らぬ大人。
私がどれだけ小夜さんを愛していようが、今の小夜さんにとって私はただの見知らぬ大人なのだ。
その事実に絶望はしたが、時は流れ、今日から私は教師として真っ当にこの学校に勤務することとなる。
聖くんを連れて、と言った状態で。
短い溜息を吐き、教室の戸を開ける。
視界に映る生徒たちの容姿は、さまざまだ。
明らかな人外の身体的特徴を持った生徒も、それなりに居る。
その中で。
小夜さんを、見つけた。
私の姿を見るなり、彼女の肩がびくりと跳ねる。
怯えているようだった。
それも当然だ、全ては軽率な私が悪い。
聖くんから『慎重に行け』と言われていたのに、序盤からこのざまでは先が思いやられる。
私は彼女と再び結ばれるまで、どれだけの苦労を要するのだろう。
でも、それでも小夜さんに会いたいと願ったのは、他でもない私だ。
私は――ただ、小夜さんと共に生きていきたい。
小夜さんに言った通り、小夜さんの隣で、呼吸をしていきたいだけなのだ。
いつまでも過ぎたことに囚われていても仕方がないので、私は教卓に立ち、淡々と、簡潔に自己紹介をした。
「……今日から皆さんの担任を務めます。京極千歳です。よろしくお願いします。それでは、早速ですが、転入生を紹介します。聖くん。入ってきてください」
「はぁーい!」
やたらと上機嫌な声が聴こえたかと思いきや、杖をつかつかとついて聖くんが教室に足を踏み入れた。
それから彼は、全員に向けて親しげに片手を挙げた。
「はぁい!! みんなの『神様』・神前聖なのだよ! あーいむ・あ・ごーっど! 全知全能の神様なので、みんな、おれの元にひれ伏すように! さて、自己紹介といこう、まずおれのスリーサイズだがげふっっ」
殴った。
何となく、このまま好き勝手に喋らせていたらひどく面倒な空気になりそうだと思ったからだ。
教室の空気が固まる。
私は軽く咳払いをする。
「……すみません。顔見知りなのですが、馬鹿なんです、この子は」
「馬鹿とは何かね。おれとちぃの仲じゃないか! そんなつれないことを言うでないよー」
「うるさいですよ」
妙にハイテンションな聖くん。
私を凄まじく警戒している小夜さん。
まるで四面楚歌だな、と私は静かに、隠すこともなく溜息を吐いた。
――これが、異世界『プレザント・ナイトメア』の、私の『呼吸』のはじまりだ。
「きみは、ばかだねえ」
後日、私が担当するクラスの教室の入り口前で立ち尽くす私を見て、『転入生』としてこのクラスに関わることとなる聖くんは、けたけたとおかしそうに笑った。
そう、馬鹿だ。私はどうしようもなく馬鹿だった。
初めて学校を訪れたあの日、私は転生した小夜さんに出くわし、会いたくて会いたくて仕方がなかった小夜さんに出くわし、衝動を抑え切れず彼女を強く強く抱き締めた。
すぐに我に返って彼女から離れて平謝りしたが、小夜さんの瞳に浮かんでいたのは確かな『警戒』の感情。
当たり前だ、女子高生が見知らぬ大人にいきなり抱き締められれば、誰だって怖いだろう。
そう、見知らぬ大人。
私がどれだけ小夜さんを愛していようが、今の小夜さんにとって私はただの見知らぬ大人なのだ。
その事実に絶望はしたが、時は流れ、今日から私は教師として真っ当にこの学校に勤務することとなる。
聖くんを連れて、と言った状態で。
短い溜息を吐き、教室の戸を開ける。
視界に映る生徒たちの容姿は、さまざまだ。
明らかな人外の身体的特徴を持った生徒も、それなりに居る。
その中で。
小夜さんを、見つけた。
私の姿を見るなり、彼女の肩がびくりと跳ねる。
怯えているようだった。
それも当然だ、全ては軽率な私が悪い。
聖くんから『慎重に行け』と言われていたのに、序盤からこのざまでは先が思いやられる。
私は彼女と再び結ばれるまで、どれだけの苦労を要するのだろう。
でも、それでも小夜さんに会いたいと願ったのは、他でもない私だ。
私は――ただ、小夜さんと共に生きていきたい。
小夜さんに言った通り、小夜さんの隣で、呼吸をしていきたいだけなのだ。
いつまでも過ぎたことに囚われていても仕方がないので、私は教卓に立ち、淡々と、簡潔に自己紹介をした。
「……今日から皆さんの担任を務めます。京極千歳です。よろしくお願いします。それでは、早速ですが、転入生を紹介します。聖くん。入ってきてください」
「はぁーい!」
やたらと上機嫌な声が聴こえたかと思いきや、杖をつかつかとついて聖くんが教室に足を踏み入れた。
それから彼は、全員に向けて親しげに片手を挙げた。
「はぁい!! みんなの『神様』・神前聖なのだよ! あーいむ・あ・ごーっど! 全知全能の神様なので、みんな、おれの元にひれ伏すように! さて、自己紹介といこう、まずおれのスリーサイズだがげふっっ」
殴った。
何となく、このまま好き勝手に喋らせていたらひどく面倒な空気になりそうだと思ったからだ。
教室の空気が固まる。
私は軽く咳払いをする。
「……すみません。顔見知りなのですが、馬鹿なんです、この子は」
「馬鹿とは何かね。おれとちぃの仲じゃないか! そんなつれないことを言うでないよー」
「うるさいですよ」
妙にハイテンションな聖くん。
私を凄まじく警戒している小夜さん。
まるで四面楚歌だな、と私は静かに、隠すこともなく溜息を吐いた。
――これが、異世界『プレザント・ナイトメア』の、私の『呼吸』のはじまりだ。
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