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第119話 神と仮説
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虎成城下
「・・・震主様?」
その場にいた者の理解は追いつかない。
「勇王様と内花姫様の父君に当たる神だ。」
神話の中で、火の船に乗って訪れた若者の滞在を許した主神様のことか・・・
「この神は、最初から最後まで傍観を決め込んでいる。」
そういえば、神話の中でも、最初にしか出てこない。
「何も手を出さない。何にも言及しないのだ。」
朔耶介の背中がふと止まった。
「神話において、世界の生命が焼きつくされかけたいう戦においてもだ。」
たしかにおかしい。
主神たる者。世界の終わりという戦争ならば先頭に立つハズだ。
「何もせず、逃げ隠れしていると思うか?」
突拍子のない話に、皆、顔を見回すだけだ。
「はぐらかさないでくれ。それと明丸を連れて行くのに何の関係があるんだ!」
朔耶介の顔は見えないが、きっと笑っているのだろう。
「俺もな。単なるおとぎ話なら頭の隅にもないわ!」
振り返ったその男の顔には苦しみ色しかなかった。
「ただ、現実にク海という不可解極まりない現象がこの地を沈め、アダケモノという下劣極まりないバケモノが跋扈しているではないか!だから、勇王と内花姫はどういう形でか、存在するということだ。」
・・・そう・・やつらは余計だ。そして見たこともない神とされる存在を感じる。
「今の我等はな。この朝御代という国という大船がク海という海で難破し、数少ない小舟を取りあっているにすぎない。守るものを線引きし争い合う。その小舟も沈むであろう。それでも我が子達を両手に掲げ大人たちは浅瀬を目指すのだ。」
・・・確かにク海は、すべてを飲み込み人々は死んでいくだろう。
そして朔耶介は笑った。
「それすらもな・・・震主は傍観するのよ。」
・・・そうであろうな。皆その答えがよぎった。
朔耶介は続ける。
「ここからは、俺の仮説だ。」
仮説だと?
「この主神たる震主はその名が示すとおり、振動、・・・つまり波の神だ。」
まったく分からない。
「この神は逃げ隠れしていない。」
どういうことだ。
「その手掛かりはその近しい生命の女神である娘の名にある。」
生命の女神?内花姫のことか?
「内花姫・・・内なる花の姫。そう・・・すべては内側にあるということだ。」
何?何を言っている?
「傍観しているのではない。震主はありとあらゆるものの内側に存在しているのだ。常にどんな時も共にあるのだ。」
分からん。そんなもの何も感じたことがないぞ。
「この世界、いや宇宙とでもいうのかな。これの始まりからすべては波かもしれぬのだ。今の我等の知識技術では測り知れぬが、我等の中に震主・・・つまり波がいる。そして波・・・振動というものは終息する。生命もこの宇宙も。」
世界が終わるだと・・・想像つかん。
「俺は考える。震主という神はこの宇宙という規模で何かをしようとしているのではないかと・・・人間個人の生病老死、いろいろな苦しみがある。このク海とアダケモノはこの星の病かもしれぬ。・・・だがそれだけなのだ。震主にとっては、ただ人間一個人のこと、単なるひとつの星のことにすぎぬのだ。」
だから、何もしてこないように、手を差し出さないように感じるのか?
「だが、震主は何かを求めているには違いない。」
求めている?
「それは、神話になぜ勇那王と内花姫の名が残ったか。それによるク海やアダケモノも性質から推測する。」
なんだ?何がある?
朔耶介は背を向けた。
「俺は、震主は何かの目的で人々、いやすべての生き物の経験による感情を集めているように思う。」
経験による感情?
朔耶介は最後に呟いた。
「明丸に手が届く呪文。古い言の葉がねじれた詞。・・・百神 銭亀・・・この中に手がかりがある。」
「・・・震主様?」
その場にいた者の理解は追いつかない。
「勇王様と内花姫様の父君に当たる神だ。」
神話の中で、火の船に乗って訪れた若者の滞在を許した主神様のことか・・・
「この神は、最初から最後まで傍観を決め込んでいる。」
そういえば、神話の中でも、最初にしか出てこない。
「何も手を出さない。何にも言及しないのだ。」
朔耶介の背中がふと止まった。
「神話において、世界の生命が焼きつくされかけたいう戦においてもだ。」
たしかにおかしい。
主神たる者。世界の終わりという戦争ならば先頭に立つハズだ。
「何もせず、逃げ隠れしていると思うか?」
突拍子のない話に、皆、顔を見回すだけだ。
「はぐらかさないでくれ。それと明丸を連れて行くのに何の関係があるんだ!」
朔耶介の顔は見えないが、きっと笑っているのだろう。
「俺もな。単なるおとぎ話なら頭の隅にもないわ!」
振り返ったその男の顔には苦しみ色しかなかった。
「ただ、現実にク海という不可解極まりない現象がこの地を沈め、アダケモノという下劣極まりないバケモノが跋扈しているではないか!だから、勇王と内花姫はどういう形でか、存在するということだ。」
・・・そう・・やつらは余計だ。そして見たこともない神とされる存在を感じる。
「今の我等はな。この朝御代という国という大船がク海という海で難破し、数少ない小舟を取りあっているにすぎない。守るものを線引きし争い合う。その小舟も沈むであろう。それでも我が子達を両手に掲げ大人たちは浅瀬を目指すのだ。」
・・・確かにク海は、すべてを飲み込み人々は死んでいくだろう。
そして朔耶介は笑った。
「それすらもな・・・震主は傍観するのよ。」
・・・そうであろうな。皆その答えがよぎった。
朔耶介は続ける。
「ここからは、俺の仮説だ。」
仮説だと?
「この主神たる震主はその名が示すとおり、振動、・・・つまり波の神だ。」
まったく分からない。
「この神は逃げ隠れしていない。」
どういうことだ。
「その手掛かりはその近しい生命の女神である娘の名にある。」
生命の女神?内花姫のことか?
「内花姫・・・内なる花の姫。そう・・・すべては内側にあるということだ。」
何?何を言っている?
「傍観しているのではない。震主はありとあらゆるものの内側に存在しているのだ。常にどんな時も共にあるのだ。」
分からん。そんなもの何も感じたことがないぞ。
「この世界、いや宇宙とでもいうのかな。これの始まりからすべては波かもしれぬのだ。今の我等の知識技術では測り知れぬが、我等の中に震主・・・つまり波がいる。そして波・・・振動というものは終息する。生命もこの宇宙も。」
世界が終わるだと・・・想像つかん。
「俺は考える。震主という神はこの宇宙という規模で何かをしようとしているのではないかと・・・人間個人の生病老死、いろいろな苦しみがある。このク海とアダケモノはこの星の病かもしれぬ。・・・だがそれだけなのだ。震主にとっては、ただ人間一個人のこと、単なるひとつの星のことにすぎぬのだ。」
だから、何もしてこないように、手を差し出さないように感じるのか?
「だが、震主は何かを求めているには違いない。」
求めている?
「それは、神話になぜ勇那王と内花姫の名が残ったか。それによるク海やアダケモノも性質から推測する。」
なんだ?何がある?
朔耶介は背を向けた。
「俺は、震主は何かの目的で人々、いやすべての生き物の経験による感情を集めているように思う。」
経験による感情?
朔耶介は最後に呟いた。
「明丸に手が届く呪文。古い言の葉がねじれた詞。・・・百神 銭亀・・・この中に手がかりがある。」
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