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【R18】獣人さんにいきなり番と言われた話 ★

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「桐生芽衣子様、貴方は花宝院隼人の番候補に選ばれました。つきましては、獣人中央管理室にお越しください」



 
 ある日仕事から帰ったらいきなりこんなハガキが届いたら。
 行きますか?
 私は行きません。

 花宝院隼人は狼の獣人さんで、青みを帯びた艶やかな灰色の髪と、切れ長で夜空の月みたいに綺麗な金色の瞳をした野性味溢れる美丈夫って感じの男の人です。21歳らしいです。
 大きな耳とフッサフサのシッポが特徴的です。

 獣人さんのほとんどは芸能活動をしているんですが、花宝院隼人、通称ハヤッチはその中でもトップクラスの人気を誇ってます。
 彼のライブイベントのチケットの当選確率は倍率数百倍だとか。
 あのシッポを一度はモフってみたいものですが、獣人さんはそこに触られるのをもの凄ーく嫌がるらしく、イベントでシッポを掴んだファンが以後入場禁止になったらしいです。残念。

 この国には普通の人間以外に獣人と呼ばれる人達が居ます。
 鳥、豹、狼等、様々な獣人さんが居ますが、総じて生まれてすぐ獣人中央管理室の保護下に入ります。
 何故なら、彼等は容姿端麗である事が多い為に、奴隷として扱われるような酷い時代があったからだそうで、その獣人中央管理室も、当時の被害者と協力者によって設立されたそうです。
 そんな悲しげな過去を背負う獣人中央管理室、通称獣管(変な意味に取っちゃ駄目よと言われますが、変な意味って何でしょうね)は、彼等の生まれてから死ぬまでを徹底サポートする機関ですが、私達にとっては芸能プロダクションみたいなものです。
 獣管の運営費が彼等獣人さん達の芸能活動で支えられているからです。

 で、獣人さんには大体番という存在がいるそうです。番というのはメチャクチャ相性の良い恋人ってことらしいです。
 獣人さんはその相手としか子供が作れないらしくて、草の根分けてでもという勢いで探しているんだとか。
 その番に選ばれるなんて信じられません。だって私はふっつーの人間です。
 ムムッと考え込んでいたら、頭の真横を白い手が通過して私を拘束すると同時に、背中を柔らかい衝撃が襲いました。

「何してんの! 早く獣管に行きなよ!」

 慌てて振り返ると、顔の真横にお隣のお姉さんの顔がありました。勿論背中に当たっているのはお姉さんのボリューミイなおっぱいです。ぱっふぱふです。
 私のはイマイチボリュームが足りないので羨ましいです。

「嫌だよ。候補って書いてあるじゃん。何人かいる中から選ぶんでしょ? 絶対選ばれるわけないし。恥かくだけじゃん」
「なーに言ってんの、万が一ってこともあるでしょ。もし選ばれなくても、ハヤッチに会えるなら恥かくくらいいいじゃない」
「いやだよ」
「あれ? 前ハヤッチ好きって言ってなかった? イベントにも大はしゃぎで出掛けてたよね」

 うっと怯んだ。
 確かに私は花宝院隼人のファンではある。毎朝テレビで爽やかな笑顔を振りまいている姿に癒やされて、ファンクラブにも入会している。
 ファンクラブメンバーだろうと優先権などないイベントのチケットが当選したのだから行くしかないと喜び勇んで出掛けたのも事実だ。

「でも無理だよ。だって私普通の人間だし、チビだし特別美人でもないのにのこのこ出掛けてってハヤッチにがっかりされたら立ち直れないよ」
「獣人さんと普通の人のカップルなんて沢山いるし、メーちゃんは可愛いっていつも言ってるじゃない。ちょっと着飾るのが下手で、チミっこいだけじゃない」

 言いたい放題だが、事実だ。
 女の子らしい格好というのが苦手で、常にTシャツとジーパンにシャツというボーイッシュな服を好んでいるような人間なのだ。
 髪もショートカットにしていて胸も控えめなので男の子と間違われたことすらある。告白だってされた事あるよ。女の子に! 自分が女だと教えたら泣かれました。

 ハヤッチのライブに行く為に精一杯お洒落して出掛けようとしたらこのお姉さんに捕獲されて、頭の上から爪先までフルコーディネートされたら別人のようになった。
 少年が少女にみえるようになったのである。
 感動した。
 でも、今年で18歳だというのにいつまでも学生のように幼く見えるのはどうしても変わらなかったのだ。

「とにかく行かないから。それより家でご飯どう?」
「いいわね「お前が桐生芽衣子か?」え?」

 お姉さんの声に聞き覚えのある声が割り込んだので、くっついたままだったのを離してもらって、二人で出どころを探ると、ありえないことに、ハヤッチこと花宝院隼人が立って居た。
 耳がピーンと立っていて、しっぽがフリフリと振られている。
 そして私の目の前まで来て、お隣のお姉さんの手を取った。

「やっと見つけた。俺の番。獣管からハガキを送ったって聞いててもそっちからすぐ会いにきてくれるとは限らないから、俺の方から会いに来ることにしたんだ」
「あ、じゃぁご飯はキャンセルってことで。また明日ね」
「え、ちょっと」

 私はさっと自分の家に滑り込んで扉を閉めてドアノブを後ろ手に握りしめたままで背中を預けた。

「やっぱり私は選ばれなかったじゃない」

 私とお姉さんを見比べてお姉さんが番だと思ったんだ。
 当然だ、誰だって未だに子供、下手したら男の子と間違えられたりするような子より、美人でボンキュッボンなお姉さんを選ぶに決まってる。
 今頃お姉さんはハヤッチととりあえず晩御飯でもなんて話になっているのではと考えながら身を起こそうとして、いきなり背中の圧迫感が消えて、そのまま後ろに倒れた。
 その頭が、ドアよりは柔らかいけれど固いものに受け止められて、その頭を抱え込むように両腕が回された。
 そして顎を救い上げられて、かがみこむハヤッチの綺麗な金色の眼が悲しげに顰められているのが見て取れた。
 不自然な体勢で苦しいので暴れようとしたら、上半身をがっちり抱え込まれて失敗する。
 あのぉ、そこ一応胸があるんですけどね。ささやかすぎて気になりませんかそうですか。

「何で、名乗り出てくれなかったんだよ、お前が芽衣子だって」
「ちょっと! 離して下さい! 貴方が探してるのは私では無くて番ですよね。候補って書いてあったし、実は番はお姉さんだったって話じゃないんですか?」
「私はメーちゃんの移り香の所為で勘違いされただけだったんだって。さっき言った通りご飯はキャンセルでいいから明日お話聞かせてねー」
「え、移り香って、あ、ちょっと待って!」

 ドアの陰で見えない所に居たお姉さんは、答えになっているのかそうでないのかな捨て台詞を吐いて自宅に帰ってしまったようだった。
 その間にも私を捕獲したハヤッチは項の辺りに顔を埋めている。鼻息が首にかかってぞわっとして膝から力が抜けると、いつのまにか私に隼人が覆いかぶさるような形になって益々身動きが取れなくなった。
 匂いを嗅がれている事に気付いた時にはぬるりとした感触に襲われた。
 今度は舐められている!

「ひぃ、やめ、て」
「やっぱりこの匂いだ。やっと見つけた、俺の番」

 ハヤッチは私の弱弱しい抵抗など気にならないようで、好き勝手に首筋をベロベロと嘗め続けている。その度に下腹部のあらぬところからジンと響くような快感が駆け抜けて私の抵抗力を更に削いでいく。
 このままじゃ訳も分からないままヤられる!
 と危機感を感じた私は精一杯手を伸ばして隼人のしっぽを鷲掴みにして引っ張った。

「ギャウン!」

 野太い悲鳴を上げて飛びのいてくれたので、私は飛び起きて部屋の中へ逃げ込んだ。
 といっても大きな家具もない簡素なワンルームに隠れ場所などなく、折り畳みの座椅子の背もたれを盾にするように陣取るのが精いっぱいだった。
 鍵を掛けられるトイレに逃げ込めば良かったと思ったけれど、玄関の傍にあるので後の祭りだ。

 シッポを掴んだんだからそのまま怒って出て行ってくれたりしないかなと思ったけれど、期待を裏切ってハヤッチは部屋に入ってきてしまった。
  ふと自分の手を見て愕然とする、うっかり毟ってしまったらしく、灰色っぽい毛がいっぱいついていた。
 シッポ掴んだことを怒りに来るっていうパターンもあるかもだったんだということに気付いて青くなる。
 全くもって私は悪くないとは思うけれど、力でこられたら敵わないのは明白なので謝るべきなのだろうか。


「あの、ごめ」
「悪かった」
「え?」

 よく見ると、ハヤッチは耳もシッポも垂れ下がっていて、反省してます。というのを前面に押し出した情けない顔をしていた。
 ちょっとキュンとしてしまう。

「番に逢えたのがのが嬉しくてはしゃいじまって、芽衣子が人間だってこと忘れてた。獣管のやつらにちゃんと説明してからって言われてたのに」
「えと、私が番っていうのは本当なんですか? ハガキには候補と書かれてたんですが」

 あまりにもしょぼくれていて同情を誘う顔をするので、仕方なく質問をすると、私が話を聞く態勢になったことに気を良くしたのか、ぱっと嬉しそうな顔をした。
 でも近づいて来ようとしたので椅子の後ろに更に身を隠すと、またしょんぼりした。あんな顔テレビでもイベントでも見たことが無かったので座椅子越しにマジマジと観察してしまった。でもここから動く気は無いけどね。

「獣管が俺たちの世話をする機関で、その運営資金調達の為に俺たちは芸能活動をしてるってのは知ってるよな?」
「はい」
「実はその活動には、俺たちの番探しも兼ねてるんだ。イベントに候補者を呼ぶって形でな」

 私は眉間に皺を寄せた、そういえばイベントでチケットを買うための会員登録での入力項目が変だとは思っていた。
 名前、住所、年齢など、基本的なものから、好きな食べ物、苦手な食べ物、趣味、初恋はいつか、どんな相手か、好みのタイプはエトセトラエトセトラ。
 まるで結婚相談所の登録みたいだなと思ったのだ。したことないから憶測だけど。
 顔写真には私とお姉さんで撮ったプリクラを乗せた。

「大っぴらに番探してるなんて言うと何百人と押し寄せちゃうから、イベントで200人位候補を呼ぶっていう形で探してたんだ。それ以外はランダムで呼んだ普通の人間だけど」
「それって、結構博打じゃない? 番さんがイベントに来てくれるか分からないじゃない。ファンかどうかだって」
「実は番は唯一なんて言われているけど、番候補の中から自分と相性が良さそうな人間なら番に出来るから、ある程度で妥協する獣人は多い。ファンなら相手は自分に好意を持ってくれているだろうしな」
「番候補に片っ端からあんなことして回ってるってこと?」

 私は正直貞操の危機というのを生まれて初めて感じたのだ、それを実は誰でも良くて妥協したみたいな言い方をされてはムっとするのもしょうがないと思う。
 あと、ファンなら自分に好意があるんだから何しても問題ないだろうと言っているようにも聞こえて最低だとも思う。
 すると、ハヤッチは急に焦りだして、近づいて来そうになったので更に身を縮めて隠れると、またしょんぼりした。

「違う! お前は間違いなく俺の番だ!」
「何を根拠に?」
「番ってのは俺が相手のフェロモンに反応するかどうかってことだ、お前は今まで嗅いだ中で一番良い匂いがした。俺の下半身だって反応して苦しい位だ。これ以上の人間には会えないと思う」
「んなぁ!」

 あまりのことに頬が赤くなったのを実感した。
 匂いって、確かにさっき凄い嗅がれたけど。匂いって。動物か! いや、獣人だった。
 しかも下半身って、セクハラだ!

「なんで呼んだその日じゃなくて一カ月も経ってから来たの? しかも、お隣のお姉さんと間違えたりしたし」
「俺達は番を匂いで探すんだが、ライブ中は嗅覚を抑える薬を使ってるから、後日探すんだ。これで」

 そういって取り出したのはA4用紙だ。左上の部分に見覚えのあるプリクラと、見覚えのあるシールの貼られている。
 嗅覚を抑える薬を使っているというのは納得だ、私の隣に居たファンはかなり汗臭かった。私ですら不快だったのに獣人さんなんて匂いに敏感な人だったら気絶してたかもしれない。

「その、シール……まさか」

 嫌な予感がした。あのシールはライブ入場時に配られた物で、首に貼るように言われたもので、最後所定の台紙に貼って返却を求められた。
 ライブ中ずーっと貼っていたので汗でべたついてて、回収されると聞いてちょっと嫌な気持ちになったものだ。

「これを、使って探したって、まさか」
「シールに付着したフェロモンの匂いで探したんだ」
「いやぁあああ!!!」

 つまりあの汗でベットベトのシールを嗅がれたってことだ。嫌すぎる。はっきり言って変態くさい。
 なんてあわあわしていたら、脇の下に手を入れられて、ひょいと抱き上げられてしまった。

「え?」

 いつのまに接近を許していたのか、説明を聞いている間に油断してしまっていたようだ。
 そのまま縦に抱っこされて抱きしめられる。顔が近いし密着しているし何より身長差から考えると40cmも持ち上げられているのだ。普通に怖い。

「お、降ろして下さい!」
「逃げるからいやだ」
「勝手なこと言わないで下さい! お姉さんと間違えたってことは、匂いは私が良いとしても、外見とかはお姉さんの方が良いと思ったってことじゃないんですか!? お隣のお姉さん今ならフリーですよ。今からでも遅くないと思いますから……ぐふっ」

 身体を固定された状態で上半身を捩って逃げようとしていたら、強く抱きしめられたので肺から息が漏れた。

「違う! 確かに、間違えたのは認めるが、それはお前のせいだ」
「どういう意味!?」

 どうやっても腕が外れないので睨みつけると、ハヤッチは耳をぺたんと伏せながら理不尽なことを言われたような顔をしている。
 理不尽なのはこっちだというのに。

「だって、プロフィールでさっきの奴とのツーショットだったし。匂いだって二人くっついてたからどっちか分からなかったし、何より……」
「何ですか」

 私が納得できる答えを出して貰おうじゃないのと意気込んで聴くと、近くにある狼男の顔を見ると、
床に落とされてしまっているさっきのA4用紙を見ながら、言いづらそうに爆弾を投下した。

「18歳って書いてあったから」
「降ろせええええええええ!!!」

 つまり、私は子供に見えたから違うと判断したということだ。
 シッポは遥か下方にあって届かないので、精一杯腕を突っ張ろうとしても全く動けないので首を逸らすしか出来ない。
 と思ったら無防備な首筋に食いつかれた。

「ひぃっ」

 肌に触れる犬歯の感触に、本能的な恐怖で硬直したけれど、それ以上力を込められることはなく、代わりに柔らかい舌が肌の表面を撫でていく。
 力が抜けて、突っ張っていた手かいつのまにか縋りつくように服を掴むことしか出来なくなっていた。

「あぁ、可愛い。写真で見て本当はお前の方が好みだと思ったけど、18歳ってことだから違うのかと残念に思ってたんだ。お前で嬉しい」

 つまり、匂いも外見も私の方が好みってこと? 
 嬉しいけど、これは拙い。動けない上に抵抗する力が削がれてる。しかも何だか身体が火照ってきてるような。

「分かったから、一度降ろして下さいぃ。もう逃げませんからぁ」
「嫌だ。やっと見つけた番。お前だって無意識に俺のフェロモンに反応してる事に気付いてるだろ?」

 あれ? 何か運ばれてるような、と思ったら背中から柔らかいものに降ろされたことに気付いて、慌てて周囲を確認すると、部屋の片隅に敷きっぱなしにしていた布団でした。
 嫌な予感しかしません!

「お前は小さいな。可愛い。14歳位かなって思って流石に犯罪かなって諦めてたけど、18歳なら問題ないよな」
「問題大有んぅ……」

 問題大有りだと言おうとしたら柔らかいものに口を塞がれた。その正体は明白で、抵抗しようにも身体から力が抜けていて、顔を逸らそうとしても頬に添えられた手が許してくれない。
 そっと顎に指を添えられて、口を開けてしまうと柔らかい何かが侵入してきた。

「んっ……」

 舌にザラりとした物が触れて、擦り合わされると背筋を何かが這って行くような感覚に支配されて、なけなしの力で突き出そうとした手も、彼の服を掴んだだけに終わってしまう。
 服の中に手が差し込まれて、それがするすると這い上ってくる。

「んむぅっん……」

 顔を背けようとしても頬に添えられた手はそのままで、もう片方の手が私のささやかな胸を覆うように触れてきた。

「気痩せするんだな……。BかCくらいか?」

 最低だ! そして正解、Bだ!
 片手で私の上半身を覆ってしまえそうな大きな手が丁寧に撫でていく。
 暖かくて安心してしまいそうになるが、なけなしの倫理観が私に抵抗させようとする。

「やだぁ」

 何この甘えたような声。こんな声知らない。

 涙が零れてきたけれど、ハヤッチは手を止めることはなく、目尻をやさしく舐め取る。

「怖がらないでくれ、絶対気持ちよくさせてやるから」
「そういう問題じゃないぃ、あんっ」

 突然、胸の突起を摘ままれて身体が跳ねた。
 慌てて口を塞ごうとするけれど、その前にまたハヤッチの唇が塞いできて、また摘ままれて身体が反応してしまう。

「ぅんっあっやぁ」

 鼻にかかったような声が漏れて、無意識に腰が揺れてしまう。
 心臓がバクバク鳴っていて煩い。
 服がめくり上げられて、無防備に空気に晒された上半身にハヤッチがむしゃぶりついた。
 
「あぁ、やぁ、あぁああ」

 乳首を吸ったり甘噛みされたりするうちに、抵抗しようとしていた筈の両手は彼の頭を抱え込んでいた。
 身体の中心に意識が集まっていって、何も考えられなくなる。
 そのうちズボンに大きな手が侵入したのが分かった。
 ズボンの前は既に寛げられていて、下着だけが防衛手段となっているのに、大きな手は隙間から易々と侵入して、私の大事な部分の上にある突起をくりっと強めに撫でた。

「あぁあああああ」

 ただそれだけだったのに、私の身体に溜まっていた快楽は簡単に弾けて背が弓なりに沿り、両足がピンと伸びて、いずれ脱力したように動けなくなった。

「イッたなぁ。気持ちよかったか」

 私の頭を優しく撫でて機嫌が良さそうなハヤッチは、また私の唇を自分のそれで塞ぎつつ私の服を全部剥ぎ取ってしまった。

「や、やだぁ」

 羞恥に顔を背けながら両手で上半身を覆って背を向けてうつぶせになる。お尻が丸見えになってしまうけれど、全部見られるよりまだましだ。
 と思っていたら背筋を生ぬるいものが這っていったのでびっくりして仰け反った。

「ひぃっ」
「綺麗な肌してるなぁ、この体制の方が好きなのか?」

 そんな訳あるかと首をぶんぶん振って両腕で布団を掴んでずり上がって逃げようとするけれど、逆に腰を掴んで持ち上げられて頭を床につけて下半身を見せつけるような恥ずかしい恰好にされてしまった。

「いやぁっ離して」
「へぇ、初めてなんだなぁ。体毛も薄くて、綺麗なピンク色だ」

 無防備に晒した臀部をじっくりと観察されて羞恥に顔が真っ赤になる。
 更には両手で左右に割り開かれて舐められたらもう抵抗なんて出来ずに喘ぐことしか出来ない状態にされてしまった。
 丁寧に舌が襞の形を確認するように撫でて、時々先程快楽を齎した粒をくりくりと撫でる。段々強く舌が押し付けられるようになって中へ侵入しようとする動きに変わっていった。

「あぁ、あは、あ、くぅ」

 口から洩れるのはもう意味の無い喘ぎ声だけで、抵抗する気力はもう残っていなかった。
 そのうち、太い何かが中に侵入してきた。状況的に考えてハヤッチの指だ。未知の痛みに身体が強張る。指はクニクニと周囲を割広げるようにしながら深く侵入し、突き当りまでいくと引き抜いて指を増やした。

「芽衣子のここすげぇあったかい。俺の指をキュゥキュゥ締め付けてくるのが可愛いし早く入りたいな」
「だめぇ……ぁあ」

 もう口で否定しているだけで身体は陥落しかかっているのが自分でも分かっていた。
 十分に慣らされたそこは、ハヤッチの指を三本も飲み込む程になっていて、私の身体は二度目の絶頂の予兆に蕩けていた。

「このまま妊娠させるのは拙いから薬飲んでるけど、結婚したらすぐに作ろうなぁ」

 その言葉の意味を考える前に、何か大きな塊が私の秘部を僅かな抵抗も押し退ける勢いで突き立てられた。

「きゃぁあああ!!!」

 破瓜による強烈な痛みに蕩けていた意識がハッと覚醒する。
 慌てて引き抜こうとするけれど、腰の両側を掴む大きな手が許してくれなかった。

「やっやめて!! こんなの強姦だよレイプだよ! 私番だなんて認めてないあっ動かないでっ」

 暴れようとする私の中に塊がこすりつけられて、痛みに藻掻くが、段々痛みが薄れていって、代わりに先程まで身体を蝕んでいた快楽が重く腰の中心に集まっていくような気がする。

「あぁー、気持ちいい。大丈夫俺とお前は番なんだからっ、くうっ……。すぐに、お前も、俺にメロメロに、なるって」
「あっあんっいやぁっ何っこれぇ」
「それは気持ちいいんだ、気持ちいいって言えよ」
「やぁだぁっあん」

 お腹の奥がジンと痺れて、視界が霞ががかっていく、一際強く腰を打ち付けられた衝撃で、また快楽がはじけた。

「ああぁー!!」

 その強烈な衝撃に私の意識は吹き飛ばされて。
 朦朧としながら、ハヤッチがひたすらに腰を私に打ち付けていたことだけはぼんやりと記憶に残った。


 


 目が覚めると、私は身体をきれいにふき取られた状態で、全裸だったけれど布団を被せられていた。
 そして何の変哲もない天井から右へ首を巡らせると突き付けられている青みがかった灰色の毛玉。
 ハヤッチの頭だった。
 ハヤッチが額をこすりつけんばかりに土下座している。

「えっと……」
「ごめん! 番に逢えた歓びで我を忘れてた」
「どういうこと……」

 ハヤッチによると、獣管での決まりに、番に会えたとしても、人間は最初認識できない場合が多いので、心が通じ合うまでは獣性制御薬を飲まなければならない決まりがある。
 でも、制御薬は番を確認する為の鼻も麻痺させるので、一刻も早く番を見つけたいと思っていたハヤッチは獣性制御薬を飲まずにここへ来てしまったこと。
 番である私のフェロモンにあてられたハヤッチは我を忘れて襲いかかってしまったとのことだ。

「俺のフェロモンに反応して抵抗を弱める芽衣子が可愛くて益々溺れた。こんなことをしでかして、許されないことだとは分かっているけれど、最後に会えてよかった」
「……最後?」

 聞き捨てならない最後の一言に聞き返すと。
 ハヤッチは顔を上げて泣きそうな笑顔を見せた。

「俺は許されないことをした。いくら番とはいえ芽衣子にしたことは犯罪だということは紛れもない事実。獣管でも処罰されるだろうから、芸能活動も終わり。もう二度と会えないし、一度番を得て失った場合の末路は知っているだろう?」

 噂では、番を失った獣人は精神に異常をきたして正気を失うとあった。

 え、じゃぁ、もう二度とハヤッチに会えないってこと?

 確かに怖かったし、レイプだ強姦だと騒いだ。でも、碌に抵抗出来ずに受け入れてしまったのは私だ。私は確かに快楽を得て、ハヤッチに触れられる本能の歓びを感じていた。
 私はそろそろと布団から手を伸ばして、床についているハヤッチの腕に手を添えた。

「責任……とってよ。私の処女を奪って、ずっと人間として生きてきたのに、番の存在を教えておいて。私に、番を喪う苦しみを負わせる気?」
「芽衣子! 許してくれるのか! 俺を番だと認めてくれるのか!!」

 ばっとハヤッチが覆いかぶさって来たので私は「ひぃ」と喉を引きつらせた。
 許したつもりでも恐怖は残っている。
 だって無茶苦茶されたあそこはまだジンジンと痛いのだ、当分触られたくない。
 っていうか変わり身早すぎだろ。もしかして演技だったのか!?

「ストップ! あんたに好き勝手された所為で私は動けないの! 番ってのは認めるけど当分は許さないから!」
「うんうん! お前が気持ちいいことしかしないから大丈夫だ」
「大丈夫じゃなっあっ布団をめくらないで、いやっ舐めちゃだめぇ」

 しっぽをぶんぶん振り回している様子は狼というより犬だ。
 ハヤッチは私の全身を舐めて舐めてトロットロに蕩けさせて、自分の分は私の手に自分の手を重ねて股間の息子を扱かせて達した。
 確かに痛くなかったけど精神的な疲労が酷いので本当辞めて下さいと土下座せんばかりに懇願したのは言うまでもない。

 そしてその日のうちに獣管に連れていかれて、番の承諾書のようなものにサインすると、今度はハヤッチの自宅に連れていかれて帰して貰えなくなった。
 二日後には自宅にあった筈の荷物が全てハヤッチに与えられた私の部屋に運び込まれた。

 お隣のお姉さんに会えたのは一週間後になってからのことだ。
 そこで元々の私の家が既に解約されていることも知った。
 恐ろしい程の勢いで囲い込まれていると実感する頃には、私も絆されてハヤッチの嵐のような愛情表現を笑って受け入れるようになっていた。

「芽衣子、愛してる。欲しい物もしたいことも出来るだけ叶えてあげるから、俺のものになって」

 そういって手渡されたのはハヤッチの瞳の色を思わせる金色の宝石と大粒のダイヤがあしらわれた指輪だった。ハヤッチの自宅は高層マンションにある為、カーテンを開けるだけで夜景が見えてムードは満点だ。

「違うでしょ、ハヤッチが私のものになるんだよ。その代わりなーんにもあげられないけどね」
「俺は芽衣子のものだ。お前がそこに居て笑ってくれるだけでいいよ、愛してる、俺の半身、俺の番」

 そして一緒に差し出される結婚情報雑誌。プランと式場は私に任せるけど日取りは最低でも三カ月以内だと日取りだけは決められていた。獣管ネットワークによりどこでも押さえられる準備があるらしい。

 こうして私、桐生芽衣子は獣管からの呼び出し状が届いたその日に花宝院隼人の番になって、三カ月で彼の嫁になった。



 

 
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