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46 静寂と停滞は違う
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メーちゃんが読まなくて良い空気を読んで帰ってしまったので病室は静まり返ってしまっていた。
俯いている私には立ち尽くしている晴人さんの足元だけしか見れない。
「芽衣子様がいらっしゃってたんですね」
「う、うん。ハヤッチから婚約指輪を貰ったみたいで、見せにきてくれたの」
別に私たちは喧嘩はしていない。先日の浣腸事件以来晴人さんの顔がまともに見られなくてつい視線を逸らしてしまっているのだけ。別にあの姿を見て興奮していた彼に幻滅したとかそういうことじゃない。正直かなり引いたけど。
単にただひたすら恥ずかしいだけなのだ。
それに、私が動けるようになったことでまた何か仕掛けてくるのではと戦々恐々としているのもある。
「瑠璃さん」
「な、なに?」
一歩近づいてきたので思わずはじけるように見上げてしまった。久々にちゃんと顔を合わせた晴人さんは愁いを帯びた表情でこちらを見下ろしていて、それがとても似合うなと思ってしまってぼんやり見惚れていると、そのまま私の両手をとってベッドに倒した。左右に縫い留められた手に触れる晴人さんの手が少し冷たい。
「どうして俺の眼を見て話してくれないんですか?」
「そ、それは……」
具体的に言うことで先日の記憶を彼に思い浮かべられるのではと思うと恥ずかしくて言葉が出ない。
あのことは本当に忘れてほしい出来事だ。
二度とあんなことをされたくないし、記憶は消し去って欲しい。
「俺の番が嫌になってしまいましたか?」
「え?」
いきなり告げられた突飛な発想に咄嗟に言葉が出なかった。
そんなんじゃないと言いたいのに、至近距離で見る晴人さんが綺麗で、でも真摯に私の眼を貫く虚ろな光が宿った瞳が恐ろしくて言葉が出ない。
「以前にも言いましたが、俺には瑠璃さんしか考えられませんので、聞き入れられません。どうしてもというのなら、俺の息の根を止めて下さい。そうでなければ、絶対に逃がしてあげられません。どんな手を使ってでも繋ぎとめて見せます」
たとえ瑠璃さんがそれで辛い思いをしたとしても。
最後の言葉は絞り出すように、消え入るように耳元に響いた。
晴人さんの手が離れたのに、両手が動かないことに気付いた。また糸を使われたらしい。
そのまま寄せられた顔に向かって私は思いっきり頭突きをした。
俯いている私には立ち尽くしている晴人さんの足元だけしか見れない。
「芽衣子様がいらっしゃってたんですね」
「う、うん。ハヤッチから婚約指輪を貰ったみたいで、見せにきてくれたの」
別に私たちは喧嘩はしていない。先日の浣腸事件以来晴人さんの顔がまともに見られなくてつい視線を逸らしてしまっているのだけ。別にあの姿を見て興奮していた彼に幻滅したとかそういうことじゃない。正直かなり引いたけど。
単にただひたすら恥ずかしいだけなのだ。
それに、私が動けるようになったことでまた何か仕掛けてくるのではと戦々恐々としているのもある。
「瑠璃さん」
「な、なに?」
一歩近づいてきたので思わずはじけるように見上げてしまった。久々にちゃんと顔を合わせた晴人さんは愁いを帯びた表情でこちらを見下ろしていて、それがとても似合うなと思ってしまってぼんやり見惚れていると、そのまま私の両手をとってベッドに倒した。左右に縫い留められた手に触れる晴人さんの手が少し冷たい。
「どうして俺の眼を見て話してくれないんですか?」
「そ、それは……」
具体的に言うことで先日の記憶を彼に思い浮かべられるのではと思うと恥ずかしくて言葉が出ない。
あのことは本当に忘れてほしい出来事だ。
二度とあんなことをされたくないし、記憶は消し去って欲しい。
「俺の番が嫌になってしまいましたか?」
「え?」
いきなり告げられた突飛な発想に咄嗟に言葉が出なかった。
そんなんじゃないと言いたいのに、至近距離で見る晴人さんが綺麗で、でも真摯に私の眼を貫く虚ろな光が宿った瞳が恐ろしくて言葉が出ない。
「以前にも言いましたが、俺には瑠璃さんしか考えられませんので、聞き入れられません。どうしてもというのなら、俺の息の根を止めて下さい。そうでなければ、絶対に逃がしてあげられません。どんな手を使ってでも繋ぎとめて見せます」
たとえ瑠璃さんがそれで辛い思いをしたとしても。
最後の言葉は絞り出すように、消え入るように耳元に響いた。
晴人さんの手が離れたのに、両手が動かないことに気付いた。また糸を使われたらしい。
そのまま寄せられた顔に向かって私は思いっきり頭突きをした。
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いつまでも
退会済ユーザのコメントです
どうして……こう…晴人さんは瑠璃さんの地雷を踏むかなぁ……( ̄∇ ̄;)
残念なイケメン蜘蛛獣人の晴人さん……(´・ω・`)