鬼人とタイムトラベラー

果露

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真実

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驚いて、カレンダーをよく見ると、2190年だった。
ああそっか。みんな2040年生まれだっけ?
そりゃそうか。今生きていたら、
120歳だね。私もかなり長生きしてるなぁ…

「優さんは何年経っても見た目が変わらないどころか、髪や爪も全く伸びていません。一体何者ですか?」
看護師にそう聞かれた。
「看護師さん、美女と野獣って知っていますか?」
「はい」
「美女と野獣の王子は魔女に魔法をかけられて王子から獣になりました。一方で私は大昔、人魚の肉を食べて鬼人になったのです」
「と、いいますと?」
看護師はポカンとして話を聞いていた。
「人魚の肉を食べると不老不死になるという話は聞いたことがありますか?」
「はい。人魚には魔力がある、と」
「その肉を食べたのです。なので私は死ねないのです。何もない空間で1人、ポツンと立ってなくてはならないのです。そう、自分から生き地獄を望んだのだから」
「でも、どうして?」
「さぁ。昔のことですのであまり覚えていません」

これは嘘だった。本当は覚えている。
生まれた時から1人で、生きてきてもロクに友達ができなくて、周りにあって自分にないものをずっと探し続けていた。

それがわからなかったから、せめて死ぬ時まで1人というのは嫌だったのだ。

だから人魚の肉を食べた。
食べた後の人生は苦痛だった。
死ねないし、どんなに苦しくとも助けてくれる誰かなんていなかったから。
けれど、何百年と生きた時、佳代達に会った。
初めて人の温もりに触れた瞬間だった。
あまりにも幸せだったから、
佳代達が死んで50年ぐらいがたっても忘れられなかった。だから過去に戻った。

過去の失敗をやり直せばもっと長く一緒に居られると思ったから。
けれど結果は変わらなかった。
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