異世界転生と『天賦(ギフト)』で最強になったが親友に裏切られ追放されたので、銀狼少女と『双星』として成り上がる!

月影 朔

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第10章:賭博都市と嘘喰いの道化師

第50話:砂上の楼閣

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​「その力、俺には通用しない」

​ 俺の言葉に、道化師ピエロまゆが初めてピクリと動いた。
宿の一室に、張り詰めた静寂せいじゃくが落ちる。

 孤独のおりとらわれたルナの浅い呼吸と、偽りの沼でもがくエルゴのかすかなうめき声だけが、俺の勝利宣言のBGMだった。

​「……なんだって?」

 ピエロの顔から、愉悦ゆえつの表情が消える。
代わりに浮かんだのは、自らの芸術を理解できない愚か者を見るかのような、純粋な侮蔑ぶべつ苛立いらだちだった。

​「通用しない、だと?
面白いことを言うじゃないか、ゴミクズくん。
君の仲間たちは、ボクの言葉という名の『真実』の前になすすべもなく無力化されているというのに」

​「ああ、見事な天賦ギフトだとは思うよ」

 俺は、わざとらしく肩をすくめてみせた。
前世で、傲慢ごうまんな取引先の部長を相手に何度もやったポーズだ。
相手を油断させ、こちらのペースに引きずり込むための、小さな罠。

​「だが、残念だったな。
お前のその力は、俺と最悪なまでに相性が悪い」

​「……相性が、悪いだと?」

​「そうだ。
説明してやろうか?
俺の天賦ギフト、《物語の観測者ストーリー・ウォッチャー》は、ただ他人の物語を覗き見るだけの力じゃない」

​ 俺は、ここで一つ、大きな賭けに出ることにした。
彼の攻略法は、観測によってすでに分かっている。

【論理】:物理的な攻撃ではなく、彼の「嘘」を上回る「嘘」あるいは「真実」による心理的なカウンターが有効。

 ならば、俺がやるべきことは一つ。  
​俺は、この人生で最大級のハッタリをかます。
サラリーマンとしてつちかった交渉術の全てを、この一言に込めて。

​「――俺の力の本当の本質は、あらゆる『嘘』と『真実』を見分けるみわけることにある。
つまり、お前がどんな嘘をつこうと、俺にはそれがただの子供の戯言ざれごとにしか聞こえないんだよ」

​ それは、真っ赤な大嘘だった。
俺の力に、そんな便利な機能はない。
だが、そんなことはどうでもいい。
大事なのは、俺が心の底から、本気でそう「信じている」と相手に思わせることだ。

​ 俺の言葉に、ピエロの顔が初めて明らかに狼狽ろうばいの色を浮かべた。

​「……嘘を、見抜く……?」

「そうだ。
お前の力のルールは、相手が『嘘だ』と見破れなかった場合にのみ、その嘘を現実に変えること。
違うか?」

​ 俺が、観測で得た彼の能力の核心を言い当てると、ピエロの肩がビクリと震えた。

​「なっ……なぜ、お前がそれを……!」

「言ったはずだ。
俺には、全てお見通しだってな」

​ 彼の攻略法、その二。
【精神】:彼の自信そのものが能力の核。その自信を揺さぶることで、能力の発動条件を崩せる可能性がある。

 俺は、彼の魂の物語――誰にも信じられなかった孤独な幼少期――を、その根底から揺さぶる。  

​「あわれだな、ピエロ。
お前の力は、お前自身が誰よりも強くその嘘を『真実だ』と信じていなければ発動しない。
だが、嘘を見抜く俺を前にして、お前は心の底から自分の嘘を信じることができるのか?」  

​ 俺は、一歩前に出た。
ピエロが、無意識に一歩後ずさる。
形勢は、完全に逆転した。

​「そ、そんなハッタリが……
通用するとでも……!」

 ピエロは、震える声で叫んだ。
自らの自信を取り戻すかのように。
彼は、近くにあった木製の椅子を指さした。

​「―――ならば、見せてやる!
この椅子は、純金でできている!」

​ 彼の言葉と共に、椅子が黄金色の光を放つ。

 だが、その光はあまりにも弱々しく、まるで風前ふうぜん灯火ともしびのように揺らめいて、すぐに消えてしまった。

 椅子は、ただの木の椅子のままだ。
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