天蓋村の不可解な求人広告について

月影 朔

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第一部:ウェブ・ドキュメント『天蓋村(てんがいむら)に関する報告』

第10話:資料No.010(ラジオCMの録音テープ)1967年

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【資料No.010】
資料種別: ラジオCM放送用音源(オープンリールテープからのデジタル化)
放送年: 1967年(昭和42年)

(以下、地元ラジオ局のアーカイブ倉庫から発見された、放送用の6ミリテープに記録されていたCM音声の書き起こし。テープの劣化によるノイズ、音の揺らぎが確認される)

(00:00-00:03)
[効果音:軽快な木琴のジングル]

(00:03-00:15)
ナレーター(明るく、張りのある女性の声):
「さあ、今日も一日頑張るあなたに、天蓋紡績から素敵なお仕事のお知らせです!
緑豊かな天蓋村で、私たちと一緒に働いてみませんか?
最新式のミシンで、あなたの未来を織り上げましょう!」

(00:15-00:25)
ナレーター:
「募集しているのは、紡績工場でのミシン作業員。経験は問いません!
元気で、声が大きい方!
そして、方向感覚に自信のある方、お待ちしています!
私たちと一緒に、明るい未来を作りましょう!」

(00:25-00:28)
ナレーター:
「お問い合わせは、天蓋村役場、天蓋紡績採用係まで!」

(00:28-00:30)
[効果音:木琴のジングル、フェードアウト]


【「名無しさん@地域史研究」による解説】

1970年の「走り手」と「投げ手」という発見は、天蓋村の「選別」が古代の儀式を想起させる、特定の「役割」を担う人間を探すためのものであったという仮説を強固なものにした。

調査は、地方の情報伝達をラジオが担っていた1967年へと遡る。

県立図書館に寄贈されたローカルラジオ局のアーカイブから、30秒間の求人CMを発見した。

1967年に放送された、天蓋紡績のミシン作業員の募集。
高度経済成長期の楽観的なナレーションで、工場での屋内作業への希望を煽る。
その何の変哲もないCMの後半に、第十一、第十二の異常な条件が挿入されていた 。

「元気で、声が大きい方!」

「方向感覚に自信のある方、お待ちしています!」

ミシンの操作に声の大きさは関係なく、毎日同じ場所で作業を行う工場において、方向感覚は完全に無用の長物である。

この二つの資質が求められるのは、霧深い山中で互いの位置を知らせ合いながら道なき道を進む、斥候や案内人のような役割だ。

この発見は、私の仮説にさらなる確信をもたらした。

天蓋村は、求人広告という「皮」を、時代に合わせて巧みに着せ替えているに過ぎない。

ラジオが主要メディアだった時代にはCMを、求人雑誌の時代には雑誌広告を、そして現代ではウェブサイトを。

媒体や職種は変化しても、その核にある「異常な選別基準」だけは、呪いのように決して揺らぐことがない。

「走り手」「投げ手」に続き、今度は「声が大きい者」「方向感覚に優れた者」という、新たな「役割」のピースが手元に加わった。

一つ一つのピースが、ある種の神話的な役目を担う人間を選び出すためのものであるという確信は、もはや揺るぎないものとなっていた。
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