みんな善いことだと思ってた

月影 朔

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【第一章:予兆の記録(2024年~2027年)】

第12話:資料No.011(週刊誌記事のアーカイブ)2026年

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【資料No.011】
資料種別:週刊誌『週刊真相』記事アーカイブ
記録年:2026年

(以下は、2026年夏に発売された、ゴシップやスキャンダルを中心に扱う大手週刊誌の記事アーカイブである。この記事は、工藤氏が自身の調査と並行して、関連報道を追う中で発見したものである。彼の地道な取材によって繋がり始めた点と点が、初めて一つの記事の中で、いびつな形で結びつけられ、世に問われた最初の事例であった。しかし、その扇情的な論調とオカルト的な結論付けは、結果として真実を矮小化し、世間の関心を遠ざけることにしかならなかった)

URL: hxxps://shukan-shinso.xx/archives/20260714-2.html
(※注:2029年にサイトが閉鎖。以下はインターネットアーカイブからの復元データ)

記事タイトル:【衝撃スクープ】北関東の山に潜むは“呪いの獣”か! 熊に襲われた犠牲者たちが、一ヶ月後に次々と謎の死! 専門家も絶句する「踊る死体」の戦慄!

配信日時: 2026年7月14日 12:00

(本文)
昨年、過去最悪の被害を出した熊による獣害事件。政府は「異常気象による餌不足が原因」と早々に結論付け、対策チームも事実上の解散状態となっている。だが、本誌の独自取材により、あの悪夢がまだ終わっていないばかりか、その背後に、専門家たちがひた隠しにしてきた、あまりにもおぞましい「真実」が隠されていることが明らかになった。

「あれは、ただの熊騒ぎじゃねえ。呪いだ」

そう語るのは、被害が集中した北関東〇〇市で、匿名を条件に取材に応じてくれた地元猟友会のベテラン、T氏(71)だ。彼の顔には、今も深い恐怖が刻まれている。

「去年、俺たちが仕留めた熊も、何かがおかしかった。腹を空かせた獣の目じゃねえ。もっと、こう…虚ろで、何かに憑かれたような目をしていた。そして、問題は襲われた人間の方だ。警察は公表しねえが、この辺りじゃ、みんな知ってる。熊にやられて、運良く助かった連中が、その後、みんなおかしくなって死んでるんだ」

本誌が掴んだ情報によれば、昨年から今年にかけて、〇〇市の△△台地区周辺だけで、熊に襲われながらも一命を取り留めた生存者は、少なくとも5名存在する。しかし、驚くべきことに、そのうち4名が、事件からほぼ正確に一ヶ月後、原因不明の急性肺炎や心不全で、相次いで死亡しているのだ。

「警察に言っても、『関連性は捜査中』の一点張りだ」と、被害者の一人の遺族は、涙ながらに本誌に語った。「父は、熊に襲われてから人が変わってしまったんです。一日中、ぼーっと宙を見つめるようになって…。そして、夜になると、突然起き上がって、気味の悪い踊りを始めるんです。くねくねと、まるで関節がないみたいに…。医者も、匙を投げるばかりで…」

“呪われたように一ヶ月後に謎の死”。そして、死の直前に見せるという「奇妙な踊り」。この二つの不気味な符合は、単なる偶然で片付けられるものではない。本誌は、この怪現象を長年、独自に調査しているという、オカルト研究家のM氏に接触することに成功した。

「それは、古来より日本各地の山村に伝わる『山魔(やまま)』の仕業に違いありません」

M氏は、興奮した様子でそう断言する。

「山魔とは、山の持つ瘴気や、古くからその土地に根付く動物霊などが、何らかのきっかけで実体化したものです。古文書によれば、山魔はまず獣の姿で現れ、人間に接触する。そして、その際に特殊な“呪詛”を体内に打ち込むのです。呪詛に侵された人間は、徐々に正気を失い、魂を抜かれ、最終的には山魔の一部と化してしまう。その過程で見せるのが、『神招き(かみまねき)』と呼ばれる、魂が肉体から離れようとする際の、最後の痙攣…すなわち“踊り”なのです。一ヶ月という期間は、呪いが熟成し、人間の魂を完全に喰らい尽くすための時間なのでしょう」

M氏はさらに、この現象が特定の地域、特に「不浄なものが埋められた土地」で多発する傾向があると指摘する。

「熊が、本来の餌場ではない、特定の土地に異常な執着を見せる。そして、その土地の周辺で、人々が呪われる。全ては繋がっています。その土地の土自体が、山魔の力の源泉となっているのです。山に潜むは、もはやただの熊ではない。それは、熊の皮を被った、我々の理解を超えた“何か”なのです!」

専門家が匙を投げ、警察が隠蔽する、戦慄の連続怪死事件。我々が対峙しているのは、単なる獣害という言葉では説明のつかない、日本の深き森の闇そのものなのかもしれない。本誌は、今後もこの「呪いの獣」の正体を、徹底的に追及していく所存だ。

(編纂者による注記:この記事は、当時、他の大手メディアやニュースサイトからは完全に黙殺された。そのあまりにオカルト的で扇情的な論調は、世間から「いつもの週刊誌の飛ばし記事」として嘲笑され、消費されただけであり、真相究明の機運を盛り上げるには至らなかった。しかし、この記事は、ジャーナリスト・工藤██氏が、自身の調査がもはや自分一人だけのものではないと錯覚し、焦燥感を募らせる一因となった可能性が、彼の後の日記から読み取れる)
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