1 / 2
①
母の再婚が決まり、高校3年生になる晴人は新しく家族ができた。人当たりのいい優しい義父と、クールで無口な1つ年下の義弟の哉太。
母と義父は本当にお似合いで晴人は微笑ましく両親のやりとりを見ている。2人は新婚並みに毎週末は旅行へ行き家を開ける。その度に家は晴人と哉太の二人きりになる。新しい家族ができて3カ月、なかなか哉太との距離は縮まらないが新しい生活は穏やかに進んでいた。
しかし、晴人の中にはあるトラウマが残っていた。
晴人の幼い頃、雷が激しくなる夜に母が前父によってDVをされ倒れたのだ。ただただ見ることしかできなかった晴人はその時の恐怖を雷によって思い出してしまうのだ。
雨の降る日は頭痛がし体も鉛のように重くなる。雷なんて鳴れば体が震えだし呼吸も浅くなる。
晴人はそんなトラウマを誰にも言えずただ1人、雷雨が過ぎ去るのを待つしか無かった。
ある日の深夜、激しい雷雨が街を襲った。両親は例に漏れず週末のためプチ旅行へ。家には晴人と哉太しかいない。
1人、布団に包まり耳を塞ぐもそれを突き破る落雷。
視界が白く染まる稲光に耳をつんざく音。カタカタとかすかに揺れる。
「わ、」
思わず声が漏れる。
あれは何年も前のことだ。母は元気だし、前父とはもう会うこともない。それでも雷の音を聞けばあの光景が浮かび体が震え涙が浮かぶ。
晴人は冷たくなった指先で布団を握りしめた。
「もうやだ。」
そんな言葉は雷によってかき消される。
ガチャ
ふいに扉が開いた。
突然のことに晴人は布団から顔を出し扉を開けた人物を見ようとした。
「かな、た?」
どうしたのと言葉を続けようとして遮られる。
「うるさくて。雷の音がうるさくて眠れない。」
部屋に響く哉太の声は低く響いて心地よかった。これまで心細かった晴人は少し安堵する。
「ぼ、ぼくも眠れなかったから。一緒だね」
平然を装って言うが声は震えている。
晴人は涙を擦ろうと布団に顔を埋める。
哉太はそんな晴人に近づき言った。
「今日はここで寝る。」
思わぬ言葉にまた顔を上げて哉太を見上げる。
「うるさくて眠れないし、晴人も寝れないんでしょ。」
「ほら寄って。」と耳元で言われれば擽ったくてすぐに壁側に寄る。
哉太はベッドに入り込むと背を向けている晴人を後ろから包み込む。
「どうしたの」
晴人は手を彷徨わせながら聞く。
哉太は何も答えないが晴人を抱きしめる力が少し強くなった気がする。
服越しに伝わる規則正しい呼吸音や鼓動が心地よく、震えも落ち着いてきた気がした。
晴人が油断したその時また激しい雷が鳴る。
晴人はビクッと体を跳ねさせ、体は震えだす。
「怖いの?」
哉太はまた耳元で囁く。
晴人は冷たい手で晴人の手を縋るように握り、頷くしかできなかった。
晴人の頭の中はあの日のことしか無かった。
怖い怖い怖い。
その言葉に支配されそうになった時、哉太の低く心地の良い声が聞こえた。
「もう大丈夫。」
「俺がいる。」
短いが力強い言葉に晴人は目を開け振り返る。
哉太は真っ直ぐとこちらを見ている。
その目は優しくて力強い。
「俺がいるから何も怖くないよ。」
晴人はその言葉を頭の中で何度も咀嚼した。
それはずっと欲しかった言葉かもしれない。
幼い頃父による暴力から意見を言うのができなくなった晴人は、離婚した母を見て余計に頼ることや迷惑をかけることを嫌がりできなくなった。
察してとは言わないけれど1人で耐えるには長すぎる夜だ。
じわじわと哉太の言葉が心に広がり涙が溢れてくる。
晴人は泣き顔をみられるのは恥ずかしいというわずかな年上心から哉太に向きを変え、哉太の胸に顔を埋めて泣きじゃくった。
「もう1人にしないよ。晴人。」
晴人が寝る前に聞いた言葉だ。その声は何とも心地よく優しさが伝わってくる。
雷の夜に眠れるなんていつぶりかな。そう考えながら髪を撫でる哉太の手の大きさを感じる。そして胸から伝わる鼓動に耳を傾け意識を手放した。
母と義父は本当にお似合いで晴人は微笑ましく両親のやりとりを見ている。2人は新婚並みに毎週末は旅行へ行き家を開ける。その度に家は晴人と哉太の二人きりになる。新しい家族ができて3カ月、なかなか哉太との距離は縮まらないが新しい生活は穏やかに進んでいた。
しかし、晴人の中にはあるトラウマが残っていた。
晴人の幼い頃、雷が激しくなる夜に母が前父によってDVをされ倒れたのだ。ただただ見ることしかできなかった晴人はその時の恐怖を雷によって思い出してしまうのだ。
雨の降る日は頭痛がし体も鉛のように重くなる。雷なんて鳴れば体が震えだし呼吸も浅くなる。
晴人はそんなトラウマを誰にも言えずただ1人、雷雨が過ぎ去るのを待つしか無かった。
ある日の深夜、激しい雷雨が街を襲った。両親は例に漏れず週末のためプチ旅行へ。家には晴人と哉太しかいない。
1人、布団に包まり耳を塞ぐもそれを突き破る落雷。
視界が白く染まる稲光に耳をつんざく音。カタカタとかすかに揺れる。
「わ、」
思わず声が漏れる。
あれは何年も前のことだ。母は元気だし、前父とはもう会うこともない。それでも雷の音を聞けばあの光景が浮かび体が震え涙が浮かぶ。
晴人は冷たくなった指先で布団を握りしめた。
「もうやだ。」
そんな言葉は雷によってかき消される。
ガチャ
ふいに扉が開いた。
突然のことに晴人は布団から顔を出し扉を開けた人物を見ようとした。
「かな、た?」
どうしたのと言葉を続けようとして遮られる。
「うるさくて。雷の音がうるさくて眠れない。」
部屋に響く哉太の声は低く響いて心地よかった。これまで心細かった晴人は少し安堵する。
「ぼ、ぼくも眠れなかったから。一緒だね」
平然を装って言うが声は震えている。
晴人は涙を擦ろうと布団に顔を埋める。
哉太はそんな晴人に近づき言った。
「今日はここで寝る。」
思わぬ言葉にまた顔を上げて哉太を見上げる。
「うるさくて眠れないし、晴人も寝れないんでしょ。」
「ほら寄って。」と耳元で言われれば擽ったくてすぐに壁側に寄る。
哉太はベッドに入り込むと背を向けている晴人を後ろから包み込む。
「どうしたの」
晴人は手を彷徨わせながら聞く。
哉太は何も答えないが晴人を抱きしめる力が少し強くなった気がする。
服越しに伝わる規則正しい呼吸音や鼓動が心地よく、震えも落ち着いてきた気がした。
晴人が油断したその時また激しい雷が鳴る。
晴人はビクッと体を跳ねさせ、体は震えだす。
「怖いの?」
哉太はまた耳元で囁く。
晴人は冷たい手で晴人の手を縋るように握り、頷くしかできなかった。
晴人の頭の中はあの日のことしか無かった。
怖い怖い怖い。
その言葉に支配されそうになった時、哉太の低く心地の良い声が聞こえた。
「もう大丈夫。」
「俺がいる。」
短いが力強い言葉に晴人は目を開け振り返る。
哉太は真っ直ぐとこちらを見ている。
その目は優しくて力強い。
「俺がいるから何も怖くないよ。」
晴人はその言葉を頭の中で何度も咀嚼した。
それはずっと欲しかった言葉かもしれない。
幼い頃父による暴力から意見を言うのができなくなった晴人は、離婚した母を見て余計に頼ることや迷惑をかけることを嫌がりできなくなった。
察してとは言わないけれど1人で耐えるには長すぎる夜だ。
じわじわと哉太の言葉が心に広がり涙が溢れてくる。
晴人は泣き顔をみられるのは恥ずかしいというわずかな年上心から哉太に向きを変え、哉太の胸に顔を埋めて泣きじゃくった。
「もう1人にしないよ。晴人。」
晴人が寝る前に聞いた言葉だ。その声は何とも心地よく優しさが伝わってくる。
雷の夜に眠れるなんていつぶりかな。そう考えながら髪を撫でる哉太の手の大きさを感じる。そして胸から伝わる鼓動に耳を傾け意識を手放した。
あなたにおすすめの小説
多分前世から続いているふたりの追いかけっこ
雨宮里玖
BL
執着ヤバめの美形攻め×絆されノンケ受け
《あらすじ》
高校に入って初日から桐野がやたらと蒼井に迫ってくる。うわ、こいつヤバい奴だ。関わってはいけないと蒼井は逃げる——。
桐野柊(17)高校三年生。風紀委員。芸能人。
蒼井(15)高校一年生。あだ名『アオ』。
闇を照らす愛
モカ
BL
いつも満たされていなかった。僕の中身は空っぽだ。
与えられていないから、与えることもできなくて。結局いつまで経っても満たされないまま。
どれほど渇望しても手に入らないから、手に入れることを諦めた。
抜け殻のままでも生きていけてしまう。…こんな意味のない人生は、早く終わらないかなぁ。
仲良くなったと思った相手は、どうやら友達なんて作りたくないらしい
たけむら
BL
仲良くなった相手は、どうやら友達なんて要らないっぽい
石見陽葵には、大学に入ってから知り合った友人・壬生奏明がいる。少し冷たそうな第一印象から周りの学生に遠巻きにされている奏明に、とある提案をしてみると、衝撃的な一言が返ってきて…?
路地裏の王子様と秘密のカフェ ―10年ぶりに再会した親友はトップアイドルでした―
たら昆布
BL
大学生の千秋がバイト帰りの路地裏で助けたのは、今をときめくアイドル『GALAXY』のセンター、レオだった。
以来、レオは変装して千秋の働くカフェへ毎日通い詰めるようになる。
「千秋に会うと疲れなんて全部消えちゃうんだ」
トップアイドルとは思えないほど素直に懐いてくるレオに、千秋は戸惑いながらも多忙な彼を支えたいと願うようになる。
しかし、千秋はまだ知らない。
レオが10年前に「また絶対会おう」と約束して別れた泣き虫な親友の玲央本人だということに。
そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。