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その五
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特に何が起きるという訳でもなく数日が経過し、この学園にも慣れ始めたころ、ホームルームにて委員会を決める場が設けられていた。
担任の桜庭先生によって、まずはクラス委員の立候補を呼び掛けられた。
しかし、誰も手を挙げる者はいない。
「うーん、誰も手を挙げないんじゃしょうがないですね・・。もう一度聞きます。誰かやってくれる人はいないですか?」
それでも依然として、手を挙げる者は現れない。
たしかに大規模な行事が多い雉鳴学園において、クラス委員の仕事は想像を絶する程に忙しく大変なものになるだろう。そして、高校生にしてそれをこなせる者は少ないだろう。
ただ、それはあくまで高校生全体として見たときの話である。ここ雉鳴の学生であれば、簡単にとはいかずともそれを成し遂げるだけの能力がある。現に数日間の学校生活でも、皆がそれだけの能力を遺憾なく発揮していた。それにクラス委員は大変な分、クラスの顔であり、それによって得られる経験、栄誉や達成感、学校からの評価などを考慮すれば十分な報酬は用意されている。実際、クラス委員への立候補者多数で争奪戦になったクラスは存在すると聞く。
ではなぜ、誰も手を挙げないのか。
それは、誰も手を挙げないからである。クラス委員をやりたいと是が非でも思う者は少なくとも、やってみてもいいかなと思う者は少なくないはずである。しかし、この数日間でクラス委員を務めるにふさわしいだけのクラスメイトを目にし、出会ってまだ日が浅いことも重なって遠慮してしまっているのだ。
出る杭は叩かれるし、目立てばそれをよく思わない人が増えるのも事実である。幼少のころより、神童と持て囃されてきた彼らは、持て囃された分だけ、妬み嫉みの対象とされてきた。その結果が、この状況である。みんな、消極的になってしまっている。
俺は、生徒会長になると決めた。その過程として、クラス委員を経験することは最善であるように思える。そう、ただ黙って手を挙げればいい。でも、身体が言うことを聞かない。妙な冷や汗が出てくる。昔の嫌な思い出がフラッシュバックしてくる。別に生徒会長なんてならなくていいんじゃないだろうか。思考がマイナスばかりに働いていく。自分を見失いそうになる。
自己嫌悪に陥っていた、その時、教室に声が響き渡る。
「私、クラス委員やります・・!」
その声は少し震えていて、でも、覇気が宿った声だった。
鹿野花桜梨が、少し耳を赤くしながら、それでも堂々と手を高く挙げていた。
一気にクラスメイトの視線が集中する。
「鹿野さんがやってくれるなら安心です。ありがとう鹿野さん。」
鹿野さんならというような声がクラス中から聞こえてくる。この数日間でそれだけ鹿野花桜梨はクラスメイトの信頼を獲得していた。
「クラス委員は二人なのでもう一人お願いしたいのですが、出来れば男女一人づつの方がクラスはまとまりやすいかなーと思います!」」
鹿野花桜梨が手を挙げたことで、クラスの雰囲気はさっきとは比べ物にならない程、良好なものとなっていた。
「おい、てっちゃん!抜け駆けはなしだぜ。」
「え・・?」
隣の席の矢間隆司がこそこそ声で話しかけてくる。どういうことかと思ったが、鹿野花桜梨はクラスの信頼を獲得しただけでなく、男子生徒からの人気も獲得していた。つまりは、彼女と一緒にクラス委員を務め、距離を縮めたいということなのだろう。
それだけでなく、元々クラス委員興味を持っていた者も、彼女のおかげで手を挙げやすい雰囲気になっていた。
結果、男子生徒の約半分が手を挙げた。
「じゃんけんというのも運任せな気がしますし、どうしましょうか、鹿野さん」
桜庭先生は、選定の方法をクラス委員である彼女に委ねる。
「そうですね・・。クラスの投票という形はどうですか・・?」
少し自信なさげに、それでも迷いなく投票を提案する。あらかじめ、考えていたのかもしれない。
「いいですね!それにしましょう!」
桜庭先生は少し楽しそうにその提案に同意する。
「ちなみに、鹿野さんはどういう人が良いとかありますか?」
鹿野さんをからかいつつ悪戯そうに笑う先生。
「数日間とはいえ、皆の優しいところとか、凄いところとか少しだけかもしれないけど、分かってきたと思うから、そういうので投票してほしいです。お願いします!」
それに対し、ほぼ完璧とも言える回答をする鹿野花桜梨。
そして気のせいだろうか。自分に目線が向けられていたような気がしたのは・・。
___
投票が終わり、票数は公開されなかったものの、結果として、隼間帝人が当選した。
投票の結果に不思議はない。もちろん、自身の何かに慢心しているわけでもない。これは、間違いなく、鹿野花桜梨のおかげである。
入学式での鹿野による俺への称賛。そして、あの投票前の発言と視線誘導。あれは、気のせいではなく、そしてそれに気づいた生徒が俺だけでは無かったということだろう。
とにかく、クラス委員は鹿野花桜梨、そして隼間帝人に決定した。
担任の桜庭先生によって、まずはクラス委員の立候補を呼び掛けられた。
しかし、誰も手を挙げる者はいない。
「うーん、誰も手を挙げないんじゃしょうがないですね・・。もう一度聞きます。誰かやってくれる人はいないですか?」
それでも依然として、手を挙げる者は現れない。
たしかに大規模な行事が多い雉鳴学園において、クラス委員の仕事は想像を絶する程に忙しく大変なものになるだろう。そして、高校生にしてそれをこなせる者は少ないだろう。
ただ、それはあくまで高校生全体として見たときの話である。ここ雉鳴の学生であれば、簡単にとはいかずともそれを成し遂げるだけの能力がある。現に数日間の学校生活でも、皆がそれだけの能力を遺憾なく発揮していた。それにクラス委員は大変な分、クラスの顔であり、それによって得られる経験、栄誉や達成感、学校からの評価などを考慮すれば十分な報酬は用意されている。実際、クラス委員への立候補者多数で争奪戦になったクラスは存在すると聞く。
ではなぜ、誰も手を挙げないのか。
それは、誰も手を挙げないからである。クラス委員をやりたいと是が非でも思う者は少なくとも、やってみてもいいかなと思う者は少なくないはずである。しかし、この数日間でクラス委員を務めるにふさわしいだけのクラスメイトを目にし、出会ってまだ日が浅いことも重なって遠慮してしまっているのだ。
出る杭は叩かれるし、目立てばそれをよく思わない人が増えるのも事実である。幼少のころより、神童と持て囃されてきた彼らは、持て囃された分だけ、妬み嫉みの対象とされてきた。その結果が、この状況である。みんな、消極的になってしまっている。
俺は、生徒会長になると決めた。その過程として、クラス委員を経験することは最善であるように思える。そう、ただ黙って手を挙げればいい。でも、身体が言うことを聞かない。妙な冷や汗が出てくる。昔の嫌な思い出がフラッシュバックしてくる。別に生徒会長なんてならなくていいんじゃないだろうか。思考がマイナスばかりに働いていく。自分を見失いそうになる。
自己嫌悪に陥っていた、その時、教室に声が響き渡る。
「私、クラス委員やります・・!」
その声は少し震えていて、でも、覇気が宿った声だった。
鹿野花桜梨が、少し耳を赤くしながら、それでも堂々と手を高く挙げていた。
一気にクラスメイトの視線が集中する。
「鹿野さんがやってくれるなら安心です。ありがとう鹿野さん。」
鹿野さんならというような声がクラス中から聞こえてくる。この数日間でそれだけ鹿野花桜梨はクラスメイトの信頼を獲得していた。
「クラス委員は二人なのでもう一人お願いしたいのですが、出来れば男女一人づつの方がクラスはまとまりやすいかなーと思います!」」
鹿野花桜梨が手を挙げたことで、クラスの雰囲気はさっきとは比べ物にならない程、良好なものとなっていた。
「おい、てっちゃん!抜け駆けはなしだぜ。」
「え・・?」
隣の席の矢間隆司がこそこそ声で話しかけてくる。どういうことかと思ったが、鹿野花桜梨はクラスの信頼を獲得しただけでなく、男子生徒からの人気も獲得していた。つまりは、彼女と一緒にクラス委員を務め、距離を縮めたいということなのだろう。
それだけでなく、元々クラス委員興味を持っていた者も、彼女のおかげで手を挙げやすい雰囲気になっていた。
結果、男子生徒の約半分が手を挙げた。
「じゃんけんというのも運任せな気がしますし、どうしましょうか、鹿野さん」
桜庭先生は、選定の方法をクラス委員である彼女に委ねる。
「そうですね・・。クラスの投票という形はどうですか・・?」
少し自信なさげに、それでも迷いなく投票を提案する。あらかじめ、考えていたのかもしれない。
「いいですね!それにしましょう!」
桜庭先生は少し楽しそうにその提案に同意する。
「ちなみに、鹿野さんはどういう人が良いとかありますか?」
鹿野さんをからかいつつ悪戯そうに笑う先生。
「数日間とはいえ、皆の優しいところとか、凄いところとか少しだけかもしれないけど、分かってきたと思うから、そういうので投票してほしいです。お願いします!」
それに対し、ほぼ完璧とも言える回答をする鹿野花桜梨。
そして気のせいだろうか。自分に目線が向けられていたような気がしたのは・・。
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投票が終わり、票数は公開されなかったものの、結果として、隼間帝人が当選した。
投票の結果に不思議はない。もちろん、自身の何かに慢心しているわけでもない。これは、間違いなく、鹿野花桜梨のおかげである。
入学式での鹿野による俺への称賛。そして、あの投票前の発言と視線誘導。あれは、気のせいではなく、そしてそれに気づいた生徒が俺だけでは無かったということだろう。
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