104病棟に入職しました

SSYM

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入職

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青と桃色。春の代名詞。足取り軽く、周囲に人がいないことを確認し、降り注ぐソレを追いかける。大学を卒業した私は晴れて自身で食い扶持を確保できるようになった。
職業はまあ、よくありがちな看護師。
私のような主体性のない女が一定数周囲の圧力にまけて選ぶ職業……というのはあまりに卑下しすぎか。そんな不本意な職業選択でも、マシな暮らしはしたいと思って選んだ国立病院。福利厚生、年功序列。公務員看護師は最高だ。忙しくたって長く働けば家1軒ぐらい購入できる……はずだ。
看護師長が向けに来てくれる。
「はじめまして、よろしくね」
オリエンテーションと称して簡単な挨拶と病院の軽い説明をしていく。広い。そして外来患者も多く、賑やかな場所だった。
「まあ、ほぼほぼうちの施設は使わないんだけどね」
「?」
「頑張りましょう。病棟は戦場だから。白衣の戦士として、歓迎しますよ。次はあなたの配属先にいきますからね」
通されたエレベーターは下へ下へ降りていく。
同期はいない。珍しい病棟に配属になってしまったんだなと、あまり疑問を持たないのが間違っていた。

病棟に入って思ったのは薄暗い場所だなと寂しさである。窓がないから当たり前ではあるのだが…心電図モニターの鳴り止まない病棟。看護師長の集合の号令に合わせて、先輩たちが集まってくる。新人の私に対して物珍しそうな浮ついた雰囲気になる。
「おは──」
挨拶のため口を開こうとした瞬間、病室のドアが吹き飛んだ。
酸素投与している患者がタバコでもつけようとしたのかな?なんて教科書的な考えはすぐになくなった。奥から大きく蠢く物体が姿を表す。暗赤色の肉の塊。
視界にピンク髪の女性が私の背後を飛びこえ、肉塊の上に飛びのった。
「揉め事だああああ!私の!仕事!」
白衣の戦士。文字通りの。彼女はその体ににつかわない銃を振り回し、眼の前の肉塊に弾丸を打ち込んでいく。飛び散る肉片、降り注ぐ血潮。頬に 生暖かい液体。
真っ白な病室の色が変わる。
足元に転がってきた肉塊に、患者が使うはずのネームバンドが巻かれていた。血なまぐさい香りに、混乱という文字がよく似合う。横に立つ、笑顔のままの師長に話しかける。
「えっと、これ、なんですか」
「いったでしょ、病棟は戦場だって」
私は変な職場に来てしまったそうだ。
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