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名前とは
しおりを挟む「……お前なんで幽霊のくせに食事までしてるんだよ」
ファミレスのテーブル席に座る風雅は炭酸飲料が注がれたグラスを片手に口へと運びつつそう言う。
あの後少女の言う通り「手がかり捜索」のために様々な行動を起こしたが、結局何も見つからずに現在は遅いランチタイムと言ったところか。
対面の窓際に座る少女の背後から沈みゆく夕陽の光が降り注いでいる。
「んー分かんない!だって何かお腹空くんだもん♪」
少女は口の周りにクリームを付けながら無邪気に笑う。
チョコレートパフェを注文するあたり、普通の女子と感性は変わらないようだ。
「まあいいけど……普段バイトばかりしてるから金はあるからな」
少女をよそに風雅は自身の財布の中を覗きながらそう返すとある疑問を投げかけた。
「今更何だけど、お前の事なんて呼んだら良いんだ?」
確かに思い返すと風雅は少女の事を「お前」もしくは「おい」と言うふうに呼んでいた。
せめて呼び名くらい決めておかないとお互い面倒だろう。
『と言われても……名前も何もかも思い出せてない状態でして…』
少女は首を傾げつつスプーンの動きを止めてそう返した。
「何だよそれ……幽霊の……幽ってのはどうだ?」
何の捻りもない手当たり次第に思いついたストレートな呼び名を提案する。
だがそれを聞いた少女の顔は不服に満ちている。
まあ変わり者の幽霊とはいえ流石に当然の反応だろう。
『どうせ ゆう って呼び方するなら……結羽と書いて ゆう と読ませたい』
少女はアンケート用紙と共に置かれていたペンを使い幾つかの候補を紙に書いた後そう答えた。
『なぜなら羽を結んで天へと羽ばたけるように!』
得意げにその書かれた文字を指差しながら風雅の方を見る。
「ちょっと由来カッコいいな、つーか結局読み方は変わらないのかよ!お前が気に入ったなら何でも良いけどさ」
風雅はぶっきらぼうにそう返すと少女は嬉しそうに目を輝かせながらこう返した。
『うん!あたし結羽!』
その笑顔はつい見惚れていた夕陽の輝きにも匹敵しそうだった。
思わず風雅は照れ臭そうに誤魔化しながら、つい目を逸らした。
「結羽か……まあそう呼んでやるか」
兎にも角にも少女の名前は結羽に落ち着いたようだ。
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