7 / 7
彼なりの成仏方法
しおりを挟む「ふっふっふ……このお化けが口開けて爆睡してる頃に俺は毎日考えていたんだ……」
この日珍しく自ら早朝に起きている風雅は何やら様々な物をテーブルの上に並べて吟味している。
早くもお騒がせ幽霊少女の結羽との出会いから三日目の朝である。
流石に非現実的な事が三日も続くとあらゆる事に耐性が出来て来たようだ。
『朝からガサゴソうるしゃい……静かにして……』
その物音が不快だったようで結羽は布団を顔まで掛けて再び寝始めた。
「……俺の部屋なんだけどね。ええーい起きろ!!」
風雅は立ち上がり布団をバサッと奪い取る。
『ん~~~!!』
結羽は安眠妨害された事で手足をバタバタさせて訴えている。
よく考えたら自分は出会い初っ端からもっとえげつない事をしていたのだが。
「鳴かぬなら鳴かせてみようホトトギスという言葉を思い出したんだ」
風雅は少し得意げにそう話すとポケットからあるものを取り出して結羽に振りかけた。
『え、なに!?ちょっやめっ』
驚いて流石に起きたようだが時既に遅し……
『これ……塩?』
自身の髪の毛についていたその粉末を指に取り舐めて確認をした。
「あれ……効いてない?」
風雅は予想外の結果だったようで少しキョトンとする表情を見せていた。
『あのねえ、何の祈りも込めてない塩で幽霊を成仏させられると思ったら大間違いだからね!それに成仏しないし、良くて祓うくらいだよ塩は!!』
結羽は頬を膨らましながらそう言い捨てる。
『それにこの塩って味塩じゃん!むしろ逆効果だって!』
「悪い悪い、成仏できるか試したんだよ。やっぱ無理か……」
そう言いつつもまだ腑に落ちないようでテーブルを眺めてる事に気づいた結羽は立ち上がりそこに近づき目にする。
『……料理酒と……ロウソク……蚊取り線香?そんなもので成仏できるかーい!!』
流石の結羽もこれにはツッコミをいれる。
『酒とロウソクは百歩譲って分かる!でも蚊取り線香って何よ!』
「線香が無かったからさ、代用出来ないかと思ってね……」
風雅はふだんのからかいをお返しする意味合いも込めていたようだ。
『こんなのに火つけたところでその近辺に近づけなくなるだけだよ!』
渦巻き状の物体を手に持ちながらそう訴える。
その姿はどこか愛らしい。
「おのれは蚊か!」
素早く的確なツッコミを入れる。
やはり三日目ともなると鍛えられている。
『もー!!とにかく今日も手がかり探しの旅に出るよ!』
「お前の目的は遊びたいだけだろ……」
こんな早い時間に起こした事を後悔しつつも、心のどこかでは期待している自分もいたようだ。
そんなこんなで、三日目が始まった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる