34 / 48
F-7飛ぶ
黄昏の国家34
しおりを挟む
劇的な速度で、Fー7のプロトタイプが既に完成していた。
量子コンピューターと走査AIにて設計を持たせ、Co2光合成エンジンの実証実験は既に完成しており、あとは組み込むだけとなっていた。
高沢はその実物の戦闘機を眺めていた。
勿論、防衛省の計らいがあったからではあるが、実証にエンジンを提供した実績を評価された部分が大きかっただろう。
独特のフォルム・ニューベクスターCo2光合成エンジン・マルチ構造レーダー・火器管制レジューム・ハイパーレザー砲・認識阻害システム・超小型ミサイルシステムなど、最先端の技術が搭載される予定である。
「…これが、今後の日本の空を守護する戦闘機か」
高沢は感極まる気持ちで見上げていた。
其処へ一人の男が姿を現した。
がっちりとした体躯に鋭い目つきをした、航空自衛軍第三団参謀司令官、加川重行だ。
「どうですか?高沢先生。戦後Fー1に次ぐ純国産戦闘機Fー7は」
軍関係、それも上層の高官が高沢の横で、そう呟く。
感動的ではあるが英国との関係性はどうなったのか。気になる処である。
「なに、向こうも左程気にすることはないようです。事実、二世代前のエンジンの提供を申し出てましたので」
そうなのか。荒木が担がれた可能性がある。英国も最新のエンジンを提供する気が無かったという事なのか。
「高沢先生。先生のラボが開発したエンジン、いや最早それを凌駕するものが、Co2を使用したものであることに、我々は驚きと感動を受けております」
それはそうだろう。温暖化を招く直接の脅威である二酸化炭素を逆に利用する、それを開発したのは、オーイックスの研究者たちだ。
堂々と胸を張れる。
そこで加川は初フライトの日時を伝え、電動スタージェットで国防省へと帰途に就いた。
ビッグ・フロート1には、Fー7プロトタイプが鎮座している。高沢は二年前の事を心に巡らせていた。
事件性も含めて、多過ぎる出来事が走馬灯のように駆け巡る。
部下も何人か失った。裏切りもあった。組織が大きければ大きい程、歪(ひずみ)が生じてくる。
判ったつもりでいた当時の自分が恥ずかしい。そう感じている高沢であった。
もう一度、Fー7数秒見上げてから、指令室に戻った。
それから間もなくして、Fー7プロトタイプを実証試験として飛行させる日が来た。
航空自衛軍より派遣されたのは、古くからある奈良基地所属の熟練パイロット、佐井和正少佐である。
現場は之とない程の場所である。要はビッグ・フロート1である。
こちらの滑走路ではレーザー式誘導光という安全に着陸出来るシステムを装備しており、不測の事態に大いに役に立つ。
まずは政府関係者が前面の席に座る。まず中越総理、川崎副総理とそこには返り咲いた沖田外務大臣、佐名木国防大臣が座っている。
現在、日本政府は第三次中越内閣を形成しており、大臣職には当時の殆どがその職に就いていた。
軍からは航空自衛軍第三団参謀司令官、加川重行と空自のトップである市川修三参謀総長が、その他、航空自衛軍の高官たちが招待された。
それとFー7のボディなどの特殊素材を提供した、栄重工の重鎮たちだ。
オーイックス側からは、高沢を始め、多田、沢田が出席した。
本当なら出席の場に居る筈の人物がいない事に、不審に思う多田と沢田であったが、それを口にすることはなかった。
いよいよ初フライトという事で、緊張感が高まった。
佐井少佐が乗り込む。この日の為にシュミレーションを繰り返していた。
エンジンをかけるが、殆ど音がしない。これもCo2光合成エンジンの特徴である。
モニターには急かしく、デジタル情報が表示される。
火器管制コントロール、現在位置情報、パイロット安全システムなど、認識阻害システムにより肉眼でも確認が困難な為、ステルス性を必要としない。
スロットルを徐々に上げていく。
滑走路を軽快に走行する。「おっ」と思った瞬間、大空に舞い上がる。
エンジンに当たる場所からは青い光が輝いている。
轟音は全くなく静かなフライトで、オーイックスと栄工業以外の人物は大いに驚いた。
正に日本の航空史に名を残す名機であると、中越総理は感動で打ち震えていた。
まずは模擬弾を発射するが、あまりの小ささで火の玉が飛んでいるように見える。
ミニマム弾と呼ばれており、熱源追尾も装備している。
それが移動空中的に見事に連続して着弾する。
実際、500mlのペットボトル程の大きさしかあらず、迎撃するのは極めて困難である。
量子コンピューターと走査AIにて設計を持たせ、Co2光合成エンジンの実証実験は既に完成しており、あとは組み込むだけとなっていた。
高沢はその実物の戦闘機を眺めていた。
勿論、防衛省の計らいがあったからではあるが、実証にエンジンを提供した実績を評価された部分が大きかっただろう。
独特のフォルム・ニューベクスターCo2光合成エンジン・マルチ構造レーダー・火器管制レジューム・ハイパーレザー砲・認識阻害システム・超小型ミサイルシステムなど、最先端の技術が搭載される予定である。
「…これが、今後の日本の空を守護する戦闘機か」
高沢は感極まる気持ちで見上げていた。
其処へ一人の男が姿を現した。
がっちりとした体躯に鋭い目つきをした、航空自衛軍第三団参謀司令官、加川重行だ。
「どうですか?高沢先生。戦後Fー1に次ぐ純国産戦闘機Fー7は」
軍関係、それも上層の高官が高沢の横で、そう呟く。
感動的ではあるが英国との関係性はどうなったのか。気になる処である。
「なに、向こうも左程気にすることはないようです。事実、二世代前のエンジンの提供を申し出てましたので」
そうなのか。荒木が担がれた可能性がある。英国も最新のエンジンを提供する気が無かったという事なのか。
「高沢先生。先生のラボが開発したエンジン、いや最早それを凌駕するものが、Co2を使用したものであることに、我々は驚きと感動を受けております」
それはそうだろう。温暖化を招く直接の脅威である二酸化炭素を逆に利用する、それを開発したのは、オーイックスの研究者たちだ。
堂々と胸を張れる。
そこで加川は初フライトの日時を伝え、電動スタージェットで国防省へと帰途に就いた。
ビッグ・フロート1には、Fー7プロトタイプが鎮座している。高沢は二年前の事を心に巡らせていた。
事件性も含めて、多過ぎる出来事が走馬灯のように駆け巡る。
部下も何人か失った。裏切りもあった。組織が大きければ大きい程、歪(ひずみ)が生じてくる。
判ったつもりでいた当時の自分が恥ずかしい。そう感じている高沢であった。
もう一度、Fー7数秒見上げてから、指令室に戻った。
それから間もなくして、Fー7プロトタイプを実証試験として飛行させる日が来た。
航空自衛軍より派遣されたのは、古くからある奈良基地所属の熟練パイロット、佐井和正少佐である。
現場は之とない程の場所である。要はビッグ・フロート1である。
こちらの滑走路ではレーザー式誘導光という安全に着陸出来るシステムを装備しており、不測の事態に大いに役に立つ。
まずは政府関係者が前面の席に座る。まず中越総理、川崎副総理とそこには返り咲いた沖田外務大臣、佐名木国防大臣が座っている。
現在、日本政府は第三次中越内閣を形成しており、大臣職には当時の殆どがその職に就いていた。
軍からは航空自衛軍第三団参謀司令官、加川重行と空自のトップである市川修三参謀総長が、その他、航空自衛軍の高官たちが招待された。
それとFー7のボディなどの特殊素材を提供した、栄重工の重鎮たちだ。
オーイックス側からは、高沢を始め、多田、沢田が出席した。
本当なら出席の場に居る筈の人物がいない事に、不審に思う多田と沢田であったが、それを口にすることはなかった。
いよいよ初フライトという事で、緊張感が高まった。
佐井少佐が乗り込む。この日の為にシュミレーションを繰り返していた。
エンジンをかけるが、殆ど音がしない。これもCo2光合成エンジンの特徴である。
モニターには急かしく、デジタル情報が表示される。
火器管制コントロール、現在位置情報、パイロット安全システムなど、認識阻害システムにより肉眼でも確認が困難な為、ステルス性を必要としない。
スロットルを徐々に上げていく。
滑走路を軽快に走行する。「おっ」と思った瞬間、大空に舞い上がる。
エンジンに当たる場所からは青い光が輝いている。
轟音は全くなく静かなフライトで、オーイックスと栄工業以外の人物は大いに驚いた。
正に日本の航空史に名を残す名機であると、中越総理は感動で打ち震えていた。
まずは模擬弾を発射するが、あまりの小ささで火の玉が飛んでいるように見える。
ミニマム弾と呼ばれており、熱源追尾も装備している。
それが移動空中的に見事に連続して着弾する。
実際、500mlのペットボトル程の大きさしかあらず、迎撃するのは極めて困難である。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語
kazu106
大衆娯楽
勢いを増す、ブレバリーズ女子部と、直美。
率いる沙也加は、自信の夢であった帝プロマット参戦を直美に託し、本格的に動き出す。
一方、不振にあえぐ男子部にあって唯一、気を吐こうとする修平。
己を見つめ直すために、女子部への入部を決意する。
が、そこでは現実を知らされ、苦難の道を歩むことになる。
志桜里らの励ましを受けつつ、ひたすら練習をつづける。
遂に直美の帝プロ参戦が、現実なものとなる。
その壮行試合、沙也加はなんと、直美の相手に修平を選んだのであった。
しかし同時に、ブレバリーズには暗い影もまた、歩み寄って来ていた。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)
三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。
佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。
幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。
ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。
又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。
海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。
一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。
事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。
果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。
シロの鼻が真実を追い詰める!
別サイトで発表した作品のR15版です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる