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五十五話
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「いやー、暴風さんやばいっすね。あんな必殺技みたいなのMMOで持たないでくださいよ」
「うるせぇ、スキルさえ揃えりゃ誰でも使えんだからMMOだろ。んなこと言ったらコマイヌ、お前の方がおかしいだろ。なんだあの鎖、なんだあの挙動。前の時点で半分人間やめてると思ってたが今回で完全に人間やめたな」
「スキルなんてほとんど初期スキルしか使ってないですよ。やりくり大変なんですから。あれは装備がやばいだけです」
作ったリーシュ君がやばいと言われてないのに僕ばかりやばいと言われるのはなぜなのか。今回みたいな動きはさすがにパフォーマンスがめっちゃいい感じのときしか出ないと思う。自分でも再現してみろと言われたらできないと思うし。
「今回のクエスト攻略法に追加だな。空飛べる奴必須って」
「そんな場面そうそうないですよ。今回はハナミさんが竜を先に削り切っちゃったんでこうなっただけで」
「なんやウチのせいか、ウチは自分らがやれゆーたからやっただけやっちゅうに」
「そういえばお前のとこの奴こそ必殺技撃ってたじゃねぇか、なんだあれ」
遠くからアカリさんの、「やばい人たちがやばい人の称号を押し付け合ってる」という声は全員が聞こえなかった振りをする。そしてオネーチャンさんが僕らをなだめるように横から拍手しながら出てくる。
「いやいや~、みんなすごかったですよ~」
「おう。オネーチャンも号令お疲れさん。とはいえ今回はよかったのか?あんたのとこだけで行けたんじゃねぇか」
wiki'sってそういえば規模は最大って聞いたし、前線攻略組みたいなのもいると思うんだけど。そういえばあんまり活躍していた印象がない。当然戦闘面以外での活躍や、回復に後衛や妨害など細かい活躍は言い尽くせないほどだけど、なんか地味だったな。
「今回は情報収集もメインでしたし~、私たちだけで攻略しようとして失敗したので今回お呼びしたわけで~」
「つってもこの後もどうせ別クラン誘ってやるんだろ?」
「ええまぁ~。明日も明後日も予定は入ってますが~。初日なので『燕の暴風』に頼んだのは事実ですよ~?」
またこんな戦闘をやるのか。気力すごいな。僕だったら連日挑みたいものではない。と言ってもここにいる人たちがやるわけでなく同じクエストを発生させた別のメンバーがやるのか。それなら本当に人数多いな。
「は、それならよかったがよ。あんたもさっさと第三まできたらどうだ?後ろで声掛けだけだとつまんねぇだろ」
「いやいや~、私はこうしてるのも性に合ってるので~」
「βでのクラン戦争忘れてねぇからな」
あ、この人たち因縁みたいなのあったんだ。仲良さそうなイメージあったけど。
「ハナミさん、この人たち何があったんですか?」
「あー、βん時はぎょうさんイベント試しに開かれてたんやけど、そんなかで拠点防衛みたいな戦争イベントちゅうんがあってな。クラン連盟とかあったんにそのイベントだけwiki'sが圧勝やったな、ちなみにウチらはたぶん魚焼いとったな」
何故魚。まぁとにかくオネーチャンさんも本来すごいプレイヤーらしい。というかwikiの面々が、かな?
そういえば竜騎士は……うん、ちゃんと結晶化してるな。確認した段階で周囲の景色も元に戻り、システムメッセージが流れていく。
『クエストクリア!【哭竜騎士】は此処でまた眠りについた』
『クエスト参加者に報酬を付与します』
『MVPに追加報酬を付与します』
『MVP・ダメージディーラー【コマイヌ】 MVP・ラストアタック【シュヴァルツ・シュヴァルベ】 MVP・マックスダメージ【ハナミ・DE・イッパイ】MVP・マックスヒール【オネーチャン】』
うおー、追加報酬だ。嬉しいな、と思って横を見るとハナミさんも暴風さんもオネーチャンさんも嬉しそうだが、少し複雑そうな顔をしていた。なぜだろうか。
「うーん、MVPボーナスがあるとなると、ちょっと他クラン合同はしづらくなるな……」
「そうですね~、今回はたぶんこのままとなりますがパーティー単位とかだと報酬分けもきっちりしないと少し火種になりそうですね~」
「ウチとか本来叩かれそうなもんやのにMVPやからな……まぁウチは素直に喜んどこ!」
なるほど、上位勢はしっかり考えているんだな。なんか僕の頭の中に住んでいるミヅキ先輩が「もし文句を言われたら殺せ」と囁いてくるけど、これが普通の人の感覚なのか。ハナミさんもわりとこっちよりだけど。
って僕もPKじゃないよ、何言ってるんだ。
どこか遠くの方から、聞こえるはずもない悔しそうな声が聞こえてきた気がした。ミヅキ先輩、今度は合同攻略でも一緒に行きましょうね……
「とりあえずMVP報酬、報酬箱、そこら辺開けてみるか」
「そうですね~、繰り返し可能とはいえ周回する価値があるかどうかはここですね~」
そう言って各々、生き残っているメンバーがインベントリを開く。そういえばデスしたメンバーは今頃どうしているのだろうか。第二の街とかでクリア通知だけが来ているのだろうか。寂しいなそれ。
インベントリ内を確認し、ボスモンスターのオーブが届いているのを確認する。いつも通り何も考えず開封する。まずは通常報酬の方。
【哭竜騎士の翼】
哭竜騎士が跨る竜の翼。理を反転させ、理想を作り出す。
何かいてるのかよくわからないけど翼だ。それで追加報酬のオーブの方はっと……えーっと、なんだこれ。チケット?
チケットの内容を確認しようとするとリーシュ君とリーシャさんがこちらに近づいてくる。そういえばこの人たちにも挨拶し忘れてた。まぁ終わった後でいいと言えばそうだけど。
「お疲れ様だよコマにぃ。ボクは装備を活用してくれて満足じゃ」
「コマイヌにハナミさん、お疲れ様です。コマイヌ、やっぱりお前実は超高性能AIによる電子生命体とかじゃないよな」
いくら何でもSFですよそれ。父さんでもそこまでは作れないし、ていうか0歳から苦労して生きてきた記憶があるわい。リアルにも少ないけど友人いるし。
「おう干支んとこの装備担当か。コマイヌの装備どうなってるんか今度うちの装備担当と話し合ってくれねぇか」
「そういうのは姉の担当なので」
「姉って言わないで!えーっと、燕の暴風の生産職となら是非」
リーシュ君一人で平気かな。最悪リーシャさんがついて行くか。
……リーシャさんはいかなそう。何故かこの場にいないボタンさんとかが行くんだろうな。ミヅキ先輩とドリさんは絶対行かないし。
「そういえばお前らは何が出たんだ?俺んとこは竜の鱗と、追加報酬からは尾だったな」
「ウチはオーブからは爪、追加報酬からはなんや卵もろたわ」
「卵?」
卵ってあの卵生により繁殖する生物の雌が生み出す、生殖細胞の。
「せや。竜の卵やて。これ焼いて食うたらうまかったりするんかな」
「いやいやいや」
絶対にそれ食べるようじゃないでしょ。竜が生まれるかどうかは知らないけど目玉焼きにするためのものではないのは確かだよ。しかも召喚士が一番に竜を仲間にできないか考えないでどうするんですか。
「言うてもなぁ、さっきの虎おったやろ?虎のガオちゃん言うんやけどな、あれスキルとかでもろもろブーストしてやっと一回呼べるくらいにはコスト重いんよ。そんなんやのにドラゴンなんて言われたら……召喚したらウチ爆発四散するんちゃう?」
それはそれで面白そうなのでぜひとも爆発四散してほしいけど、確かに困る。うーん、でも料理に使うのは……いや僕があれこれ言うのはよそう。
「まぁとりあえずはインベントリの肥やしかなぁ。説明文にも受精卵かとか書いてへんし」
「ちなみに私も鱗と、追加報酬は哭竜の腕輪、アクセサリーでしたよ~」
おお、アクセサリー。この前のペンダントとかも考えるに絶対当たり枠のやつ。
「効果は……秘密です~」
「なんだそりゃ」
「後日wikiに乗せるので楽しみにしておいてくださいよ~」
まぁそう言われたら楽しみにする他ないけれど。もやもやするな。うあー、知りたい。僕の方からもそれが出ればよかったのに。
「それで、コマにぃは何が出たの?追加報酬」
「それがなんかチケットだったんですよね……えーっと、何々?」
【スキルポイント交換券】
使用するとスキルポイントを取得することができる。
おおー、単純に助かる。なんならたぶん翼だの鱗だの卵だの渡されるより断然助かる。
「たぶん外れ枠だろうが……なるほどな」
「どういうことですか暴風さん」
顎に手をあて考える暴風さんの代わりにリーシャさんが回答してくれる。
「スキルポイントというのはクラスレベルに上限がない場合を除いて、恐らく有限だろうとされてきたのだが……これが手に入るということはそうでもないということだな」
「そうですね~、運営的にはもっとスキルを取っていってほしい想定なのかもしれないですね~」
「そう言われたら俺の≪燕牙暴風≫も必要ポイントがゲロ重かったが……なるほどな。今後もスキルポイントを取れる場面は増えるかもな」
そう言われるとそうなんだろうけど。でもなんかあまりスキルに頼らないで戦っている勢力に申し訳ない気持ちがある。スキル制MMOとはいえ、折角のVRMMOでそんなスキル優遇みたいな。僕がスキル使うから僕が言うのも何なんだけど。
「いや、そうでもねぇ。ウチのサブリーダーは人力でPS……プレイヤースキル剣聖みたいに言われてるが、スキル自体は取得してる。ただ大半がパッシブスキルってだけだ」
「ああ、スクラさん」
「んだ坊主、スクラのこと知ってんのか。まぁ運営から広報担当みたいな扱いされてわりと動画上げてたりするからな」
ドリさんが言っていた一部プレイヤーに対する動画やスクリーンショットの解放の話。クエストフラグやストーリーの重要シーンなどは録画できないらしいけど、戦闘部分や街での交流などはだんだんと解放されて行っているらしい。それの先駆けとして一部ストリーマーには公式依頼という形で動画投稿許可がされていたらしいのだけれど、その一人がスクラさんだったわけだ。
だからwiki'sのところで名前を出したら盛り上がったりしたわけだ。まぁ僕は偶然フィールド内で遭遇したんですけど。
「まぁどこまで知ってるかわからんけど、あいつは基本剣の腕前とか体裁きだけで俺とやりあえるくらいにはこのゲームがうめぇ。そんでもって俺が確認してる中でも、さっき言った≪燕牙暴風≫くらいに必要ポイントが重いパッシブも見てる」
バランス調整はパッチノートとかでされていくかもしれないけれど、根本的に格差や優遇はつかないだろうとのことが現在の暴風さんの見解らしい。
まぁ最近初心者脱した程度の僕がとやかく言うほどでもないだろう。最悪父さんに聞けばいいや。
「んじゃあ全員いるか?忘れ物もねぇか?記念スクショなら今のうちに死ぬほど撮っとけ?……よし、いいみてぇだな。お前らも全員ご苦労!解散!」
結果的に見れば今回のレイドバトル、大成功に終わりましたとさ。
「うるせぇ、スキルさえ揃えりゃ誰でも使えんだからMMOだろ。んなこと言ったらコマイヌ、お前の方がおかしいだろ。なんだあの鎖、なんだあの挙動。前の時点で半分人間やめてると思ってたが今回で完全に人間やめたな」
「スキルなんてほとんど初期スキルしか使ってないですよ。やりくり大変なんですから。あれは装備がやばいだけです」
作ったリーシュ君がやばいと言われてないのに僕ばかりやばいと言われるのはなぜなのか。今回みたいな動きはさすがにパフォーマンスがめっちゃいい感じのときしか出ないと思う。自分でも再現してみろと言われたらできないと思うし。
「今回のクエスト攻略法に追加だな。空飛べる奴必須って」
「そんな場面そうそうないですよ。今回はハナミさんが竜を先に削り切っちゃったんでこうなっただけで」
「なんやウチのせいか、ウチは自分らがやれゆーたからやっただけやっちゅうに」
「そういえばお前のとこの奴こそ必殺技撃ってたじゃねぇか、なんだあれ」
遠くからアカリさんの、「やばい人たちがやばい人の称号を押し付け合ってる」という声は全員が聞こえなかった振りをする。そしてオネーチャンさんが僕らをなだめるように横から拍手しながら出てくる。
「いやいや~、みんなすごかったですよ~」
「おう。オネーチャンも号令お疲れさん。とはいえ今回はよかったのか?あんたのとこだけで行けたんじゃねぇか」
wiki'sってそういえば規模は最大って聞いたし、前線攻略組みたいなのもいると思うんだけど。そういえばあんまり活躍していた印象がない。当然戦闘面以外での活躍や、回復に後衛や妨害など細かい活躍は言い尽くせないほどだけど、なんか地味だったな。
「今回は情報収集もメインでしたし~、私たちだけで攻略しようとして失敗したので今回お呼びしたわけで~」
「つってもこの後もどうせ別クラン誘ってやるんだろ?」
「ええまぁ~。明日も明後日も予定は入ってますが~。初日なので『燕の暴風』に頼んだのは事実ですよ~?」
またこんな戦闘をやるのか。気力すごいな。僕だったら連日挑みたいものではない。と言ってもここにいる人たちがやるわけでなく同じクエストを発生させた別のメンバーがやるのか。それなら本当に人数多いな。
「は、それならよかったがよ。あんたもさっさと第三まできたらどうだ?後ろで声掛けだけだとつまんねぇだろ」
「いやいや~、私はこうしてるのも性に合ってるので~」
「βでのクラン戦争忘れてねぇからな」
あ、この人たち因縁みたいなのあったんだ。仲良さそうなイメージあったけど。
「ハナミさん、この人たち何があったんですか?」
「あー、βん時はぎょうさんイベント試しに開かれてたんやけど、そんなかで拠点防衛みたいな戦争イベントちゅうんがあってな。クラン連盟とかあったんにそのイベントだけwiki'sが圧勝やったな、ちなみにウチらはたぶん魚焼いとったな」
何故魚。まぁとにかくオネーチャンさんも本来すごいプレイヤーらしい。というかwikiの面々が、かな?
そういえば竜騎士は……うん、ちゃんと結晶化してるな。確認した段階で周囲の景色も元に戻り、システムメッセージが流れていく。
『クエストクリア!【哭竜騎士】は此処でまた眠りについた』
『クエスト参加者に報酬を付与します』
『MVPに追加報酬を付与します』
『MVP・ダメージディーラー【コマイヌ】 MVP・ラストアタック【シュヴァルツ・シュヴァルベ】 MVP・マックスダメージ【ハナミ・DE・イッパイ】MVP・マックスヒール【オネーチャン】』
うおー、追加報酬だ。嬉しいな、と思って横を見るとハナミさんも暴風さんもオネーチャンさんも嬉しそうだが、少し複雑そうな顔をしていた。なぜだろうか。
「うーん、MVPボーナスがあるとなると、ちょっと他クラン合同はしづらくなるな……」
「そうですね~、今回はたぶんこのままとなりますがパーティー単位とかだと報酬分けもきっちりしないと少し火種になりそうですね~」
「ウチとか本来叩かれそうなもんやのにMVPやからな……まぁウチは素直に喜んどこ!」
なるほど、上位勢はしっかり考えているんだな。なんか僕の頭の中に住んでいるミヅキ先輩が「もし文句を言われたら殺せ」と囁いてくるけど、これが普通の人の感覚なのか。ハナミさんもわりとこっちよりだけど。
って僕もPKじゃないよ、何言ってるんだ。
どこか遠くの方から、聞こえるはずもない悔しそうな声が聞こえてきた気がした。ミヅキ先輩、今度は合同攻略でも一緒に行きましょうね……
「とりあえずMVP報酬、報酬箱、そこら辺開けてみるか」
「そうですね~、繰り返し可能とはいえ周回する価値があるかどうかはここですね~」
そう言って各々、生き残っているメンバーがインベントリを開く。そういえばデスしたメンバーは今頃どうしているのだろうか。第二の街とかでクリア通知だけが来ているのだろうか。寂しいなそれ。
インベントリ内を確認し、ボスモンスターのオーブが届いているのを確認する。いつも通り何も考えず開封する。まずは通常報酬の方。
【哭竜騎士の翼】
哭竜騎士が跨る竜の翼。理を反転させ、理想を作り出す。
何かいてるのかよくわからないけど翼だ。それで追加報酬のオーブの方はっと……えーっと、なんだこれ。チケット?
チケットの内容を確認しようとするとリーシュ君とリーシャさんがこちらに近づいてくる。そういえばこの人たちにも挨拶し忘れてた。まぁ終わった後でいいと言えばそうだけど。
「お疲れ様だよコマにぃ。ボクは装備を活用してくれて満足じゃ」
「コマイヌにハナミさん、お疲れ様です。コマイヌ、やっぱりお前実は超高性能AIによる電子生命体とかじゃないよな」
いくら何でもSFですよそれ。父さんでもそこまでは作れないし、ていうか0歳から苦労して生きてきた記憶があるわい。リアルにも少ないけど友人いるし。
「おう干支んとこの装備担当か。コマイヌの装備どうなってるんか今度うちの装備担当と話し合ってくれねぇか」
「そういうのは姉の担当なので」
「姉って言わないで!えーっと、燕の暴風の生産職となら是非」
リーシュ君一人で平気かな。最悪リーシャさんがついて行くか。
……リーシャさんはいかなそう。何故かこの場にいないボタンさんとかが行くんだろうな。ミヅキ先輩とドリさんは絶対行かないし。
「そういえばお前らは何が出たんだ?俺んとこは竜の鱗と、追加報酬からは尾だったな」
「ウチはオーブからは爪、追加報酬からはなんや卵もろたわ」
「卵?」
卵ってあの卵生により繁殖する生物の雌が生み出す、生殖細胞の。
「せや。竜の卵やて。これ焼いて食うたらうまかったりするんかな」
「いやいやいや」
絶対にそれ食べるようじゃないでしょ。竜が生まれるかどうかは知らないけど目玉焼きにするためのものではないのは確かだよ。しかも召喚士が一番に竜を仲間にできないか考えないでどうするんですか。
「言うてもなぁ、さっきの虎おったやろ?虎のガオちゃん言うんやけどな、あれスキルとかでもろもろブーストしてやっと一回呼べるくらいにはコスト重いんよ。そんなんやのにドラゴンなんて言われたら……召喚したらウチ爆発四散するんちゃう?」
それはそれで面白そうなのでぜひとも爆発四散してほしいけど、確かに困る。うーん、でも料理に使うのは……いや僕があれこれ言うのはよそう。
「まぁとりあえずはインベントリの肥やしかなぁ。説明文にも受精卵かとか書いてへんし」
「ちなみに私も鱗と、追加報酬は哭竜の腕輪、アクセサリーでしたよ~」
おお、アクセサリー。この前のペンダントとかも考えるに絶対当たり枠のやつ。
「効果は……秘密です~」
「なんだそりゃ」
「後日wikiに乗せるので楽しみにしておいてくださいよ~」
まぁそう言われたら楽しみにする他ないけれど。もやもやするな。うあー、知りたい。僕の方からもそれが出ればよかったのに。
「それで、コマにぃは何が出たの?追加報酬」
「それがなんかチケットだったんですよね……えーっと、何々?」
【スキルポイント交換券】
使用するとスキルポイントを取得することができる。
おおー、単純に助かる。なんならたぶん翼だの鱗だの卵だの渡されるより断然助かる。
「たぶん外れ枠だろうが……なるほどな」
「どういうことですか暴風さん」
顎に手をあて考える暴風さんの代わりにリーシャさんが回答してくれる。
「スキルポイントというのはクラスレベルに上限がない場合を除いて、恐らく有限だろうとされてきたのだが……これが手に入るということはそうでもないということだな」
「そうですね~、運営的にはもっとスキルを取っていってほしい想定なのかもしれないですね~」
「そう言われたら俺の≪燕牙暴風≫も必要ポイントがゲロ重かったが……なるほどな。今後もスキルポイントを取れる場面は増えるかもな」
そう言われるとそうなんだろうけど。でもなんかあまりスキルに頼らないで戦っている勢力に申し訳ない気持ちがある。スキル制MMOとはいえ、折角のVRMMOでそんなスキル優遇みたいな。僕がスキル使うから僕が言うのも何なんだけど。
「いや、そうでもねぇ。ウチのサブリーダーは人力でPS……プレイヤースキル剣聖みたいに言われてるが、スキル自体は取得してる。ただ大半がパッシブスキルってだけだ」
「ああ、スクラさん」
「んだ坊主、スクラのこと知ってんのか。まぁ運営から広報担当みたいな扱いされてわりと動画上げてたりするからな」
ドリさんが言っていた一部プレイヤーに対する動画やスクリーンショットの解放の話。クエストフラグやストーリーの重要シーンなどは録画できないらしいけど、戦闘部分や街での交流などはだんだんと解放されて行っているらしい。それの先駆けとして一部ストリーマーには公式依頼という形で動画投稿許可がされていたらしいのだけれど、その一人がスクラさんだったわけだ。
だからwiki'sのところで名前を出したら盛り上がったりしたわけだ。まぁ僕は偶然フィールド内で遭遇したんですけど。
「まぁどこまで知ってるかわからんけど、あいつは基本剣の腕前とか体裁きだけで俺とやりあえるくらいにはこのゲームがうめぇ。そんでもって俺が確認してる中でも、さっき言った≪燕牙暴風≫くらいに必要ポイントが重いパッシブも見てる」
バランス調整はパッチノートとかでされていくかもしれないけれど、根本的に格差や優遇はつかないだろうとのことが現在の暴風さんの見解らしい。
まぁ最近初心者脱した程度の僕がとやかく言うほどでもないだろう。最悪父さんに聞けばいいや。
「んじゃあ全員いるか?忘れ物もねぇか?記念スクショなら今のうちに死ぬほど撮っとけ?……よし、いいみてぇだな。お前らも全員ご苦労!解散!」
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