旧:モテる兄貴を持つと・・・Yamato&Kaito(改訂版あり)

夏目碧央

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陽キャ

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 文化祭で変わった事と言えば、一年生の海斗ファンが増えた事。そしてもう一つ、生徒会長の白石真帆さんのファンも増えた事だ。演劇部に所属している白石さんは、男役を演じ、それがとてもかっこよかったとかで、主に女子の間で人気が増していた。
 だが、相変わらず白石さんは、ちょくちょく山岳部の部室に現れた。
「こんなに重い荷物をしょって歩いているんだねえ。だから岳斗くんは足腰が強いんだね。」
俺たちがトレーニングする時に背負っていたリュックを持ち上げて、白石さんはそんな事を言った。
「え?俺、足腰強いですか?」
俺が聞くと、
「ほら、あの時。建築資材が倒れて来た時、私を助けてくれたじゃないか。こう、がしっと持って。」
白石さんは、その時の俺の格好を再現しながら言った。
「あ、真帆さんこんにちは!演劇部、観ましたよー!真帆さんかっこよかったです。」
萌ちゃんが部室に入ってきて、そう言った。
「ああ、ありがとう。」
と白石さんは言って、俺を見る。
「あー、すみません。俺はちょうどクラスの当番だったので、観られなかったんです。」
俺が頭をかきながら言うと、
「いいんだ、いいんだ。あんなの見ない方が・・・。」
最後の方はごにょごにょと言っていて、よく聞こえなかった。部長の広瀬さんが、
「会長、何か用ですか?」
と言うと、白石さんははっとしたようだった。会長と呼ばれて急に気を張ったのだろうか。
「あー、いや。そのほら、三年生が引退して、今山岳部には、女子部員が一人しかいないでしょ。女子一人で大丈夫かなーと、ちょっと心配になってね。」
広瀬さんはああ、と頷いた。本当に納得しました?今の説明で?すると、入り口の方を向いていた萌ちゃんが、
「キャッ!あ、あの、こんにちは!」
と言った。そう、その反応を見れば分かる。海斗が現れたのだ。なぜにここへ?
「し、ら、い、し。また岳斗にちょっかい出してんのかー?」
すごんでいる。
「お前には関係ないだろ。」
白石さんもすごむ。
「関係なくないね。岳斗は俺の弟なんだから。」
「お前さ、弟にかまいすぎじゃないのか?これじゃ、弟に彼女なんかできそうもないじゃないか。」
白石さん、よくぞ言ってくれました。その通り!
「あれだろ。弟に近寄ってくる女がいると、お前はその女をけん制しようとする。だが、大抵の女はお前が目の前に現れると、岳斗くんではなくお前に惚れてしまう。それで終わりだ。いつもそうなんだろ。岳斗くん可哀そう。」
白石さんにそう言われて、海斗は顎をぐっと引いた。言い返せないようだ。その通りだもんな。俺は大きく二,三回頷いた。見れば、二年生の先輩三人も密かに頷いていた。分かってくれるんですね。
「海斗、なんでここにいるの?もう部活終わったの?」
俺が聞くと、
「ああ、さっき雨降ってきたから、早めに終わった。一緒に帰ろうぜ。」
と、海斗が言った。
「俺、まだ着替えてないし、先に帰っていいよ。」
俺がそう言うと、海斗は一瞬黙ったが、
「俺、傘ないんだよ。昇降口で待ってるから。」
と言って、その場を去って行った。やれやれ。
「キャー、海斗さんかっこいい。」
萌ちゃんがそう言った。
「じゃあ、私はこれで。」
と言って、白石さんも出て行った。それから、萌ちゃんは女子更衣室へ行き、俺たち男子四人は部室で制服に着替えた。
「先輩たち、兄貴とは知り合いじゃないんですか?」
同じ学年でも、知らない間柄なのかな、と思った。すると、
「俺は同じクラスだけどね。話したことはないよ。」
と近藤さんが言った。
「俺たちは陰キャだから。陽キャの人とは住む世界が違うのよ。君みたいな後輩が入ってくれて、俺たちにもちょっとだけスポットライトが当たったように錯覚してしまうけれどね。」
松本さんがそう言った。
「俺みたいな?」
俺が聞き返すと、
「君はどちらかと言うと陽キャでしょ。でも、山岳部員だから、それほどでもないか。」
広瀬さんがそう言って笑った。まあ、山岳部は比較的地味だけど、部活の問題でもないような。
「俺は陰キャですよ。いつも兄貴の日陰にいますから。」
と言うと、
「でもさ、君の所に城崎海斗と白石会長がちょくちょく訪れるんだよ?この学校で一番日の当たっている二人じゃないか。兄貴はともかく、生徒会長のお気に入りなのだからして、陰キャではないよ。もはや。」
近藤さんがそう言うと、他の二人も頷いた。

 昇降口に行くと、海斗がドアにもたれかかって立っていた。もう、その姿は反則でしょ。ほら、遠くから写真撮っていく人があっちにもこっちにも。俺も撮りたくなる。インスタ映えだよこれは。俺は本当に写真を撮った。他の人とは違って、けっこう近くから。それで、流石の海斗も何事かと振り返った。
「なんだ、岳斗か。」
そう言って、笑った。くー、これも撮りたい。いやいや、もうやめよう。
「岳斗、傘持ってる?」
「それ今聞く?持ってるよ。一本だけどね。」
と言って、折り畳み傘を出した。そんなに大きい傘じゃないけど、仕方なく二人で差す。おそらく後ろから写真を撮られているだろう。
 並んで歩きながら、
「海斗はさ、なんで白石さんにあんなに敵対心むき出しなの?」
と、素朴な疑問を投げてみた。
「それはお前、あいつがお前を狙ってるからだよ。」
海斗があっさりと言う。
「そうかあ?そんなんじゃないでしょ。いや、そうだとしても、だからって海斗が目くじら立てる事でもなくない?」
「お前、白石の事が好きなのか?」
海斗がびっくりしてそう聞いた。
「いや、別に好きでも嫌いでもないよ。」
「でも、あいつはお前の事を間違いなく好きだね。」
「そうかなあ。なんで俺の事なんて。」
「そりゃ、お前があいつを助けたからだよ。あいつもああ見えて女の子なんだなあ。目の前でたくましいお前の姿を見て、ときめいちゃったんじゃないのか?」
そう言えば、さっき「がしっと」どうとかこうとか、言ってたっけ。
「ダメだよ。」
俺が黙って考え込んだら、海斗が急にそんな風に言った。
「え?」
何がダメだって?
「いや、何でもない。」
海斗もそのまま黙ってしまった。
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