旧:モテる兄貴を持つと・・・Yamato&Kaito(改訂版あり)

夏目碧央

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フェアリーの告白

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 たったあれだけの言葉で、つまり、「その逆だよ」と言っただけなのに、それ以来海斗の態度がガラリと変わった。
 例えば、家の廊下ですれ違う時、俺が手が触れただけで過剰反応すると、今までは悲しそうな雰囲気を醸し出していたのだが、今度はむしろもっと触るというか、手を握ってくる。また、ご飯の時、俺が目を合わせないようにしているのに、海斗はじーっと俺の方を見てくる。俺がちらっと海斗の顔を見て目が合うと、ニヤっと笑う。そして、自分の部屋へ戻ろうとする時、部屋の前で海斗は俺を捕まえて、壁ドンしてくる。もう、心臓に悪い。俺は悲鳴を上げる一歩手前で声を押し殺し、すり抜けて部屋に閉じこもるのだ。ああ、我が家が一瞬にしてテーマパークと化したようだ。そう、ドキドキワクワクの連続。だが、前のようにハグしたり、頭を撫でたりはして来ない海斗。不思議だ。

 部活中、一人でトレーニングをしていると、ランニングをしている前園さんに会った。
「あ、こんにちは。」
俺が挨拶をすると、前園さんは走るのをやめ、俺と一緒に歩き始めた。
「あーあ、とうとう君に取られちゃったな。」
などと言う。
「はい?」
俺が聞き返すと、歩きながら前園さんが言う。
「私ね、城崎に告白したんだ。インターハイを前にして、ちょっとナーバスになってたのかな。急に当たって砕けろって思って。」
俺は驚いた。海斗と前園さんは友達として仲が良いのだと思っていたから。
「私がさ、付き合わない?って言ったら、あいつ、ごめん、俺好きな人がいるからって、即断るんだよー。参ったよ。でもさ、好きな人がいるって事は、まだ付き合ってないってことじゃない?あいつに、告白しないのかって聞いたら、好きだとは何度も言ってるけど、本気にしてくれないんだって言うのよ。それで、ピント来たのよねー。相手はあなただって。」
俺は立ち止まった。前園さんも立ち止まる。
「二人はさ、子供の頃からずっと一緒にいるわけでしょ。だから、なかなか恋愛感情に気づきにくいと思うんだよね。城崎はどうして気づいたのかを聞いたら、あなたに彼女ができて嫉妬したのがきっかけだって言うから、それなら、今度は城崎が嫉妬させてやれば、あなたも自分の気持ちに気づいてくれるんじゃないかって提案したわけ。」
そうだったのか。それで、偽の彼女になったってわけか。
「でも、全然上手く行かないって、城崎いっつも嘆いてたよ。あいつが恋愛で自信無くすとか、一生ないだろうと思っていたのにさ、笑っちゃうよね。俺の事好きじゃないのかなってさ。私はもう幻滅よ。・・・ああ、うそうそ。いくら城崎ほどのモテる男だとしても、あなたが女の子の方がいいという事は十分考えられるわけだし、そうしたら、まだ私にもチャンスあるかなーとか思っていたわけよ。でも。」
前園さんは、言葉を切って俺の顔をじっと見た。俺は緊張した。
「兄貴、何か言ったんですか?」
「何も言わないけどね、この間まで落ち込んでた人が、急にキラキラ輝き出したからねー。分かり安いったら。すっかり両想いなの?」
「えっと、その、俺は、まだ・・・よく分からなくて。」
「そっか。君、この間まで城崎と本当の兄弟だと思ってたんでしょ?そりゃ無理もないよね。でも、城崎にとっては、ずっとあなたは弟じゃなかったのよね。守ってあげなきゃって、小さい時からそう思って来たって言ってたわよ。ま、時間をかけてもいいんじゃない?あーでも、あんまり悠長に構えてると、誰かに城崎を取られちゃうかもしれないよ。わ、た、し、とか。」
前園さんはウインクして、そして走り去って行った。やっぱり美人だよな。性格はまあ、見た目とギャップあるけど。でも、意外にサバサバしていて、海斗がアスリート同士仲良くする間柄だったというのも分かる。だが、これからは仲良くしてもらいたくない。だって、明らかに前園さんは海斗を狙っているじゃないか。そう、海斗の事を狙っている人はたくさんいる。俺が避けている間に、誰かに取られてしまう可能性は大いにあるのだ。
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