28 / 52
フェアリーの告白
しおりを挟む
たったあれだけの言葉で、つまり、「その逆だよ」と言っただけなのに、それ以来海斗の態度がガラリと変わった。
例えば、家の廊下ですれ違う時、俺が手が触れただけで過剰反応すると、今までは悲しそうな雰囲気を醸し出していたのだが、今度はむしろもっと触るというか、手を握ってくる。また、ご飯の時、俺が目を合わせないようにしているのに、海斗はじーっと俺の方を見てくる。俺がちらっと海斗の顔を見て目が合うと、ニヤっと笑う。そして、自分の部屋へ戻ろうとする時、部屋の前で海斗は俺を捕まえて、壁ドンしてくる。もう、心臓に悪い。俺は悲鳴を上げる一歩手前で声を押し殺し、すり抜けて部屋に閉じこもるのだ。ああ、我が家が一瞬にしてテーマパークと化したようだ。そう、ドキドキワクワクの連続。だが、前のようにハグしたり、頭を撫でたりはして来ない海斗。不思議だ。
部活中、一人でトレーニングをしていると、ランニングをしている前園さんに会った。
「あ、こんにちは。」
俺が挨拶をすると、前園さんは走るのをやめ、俺と一緒に歩き始めた。
「あーあ、とうとう君に取られちゃったな。」
などと言う。
「はい?」
俺が聞き返すと、歩きながら前園さんが言う。
「私ね、城崎に告白したんだ。インターハイを前にして、ちょっとナーバスになってたのかな。急に当たって砕けろって思って。」
俺は驚いた。海斗と前園さんは友達として仲が良いのだと思っていたから。
「私がさ、付き合わない?って言ったら、あいつ、ごめん、俺好きな人がいるからって、即断るんだよー。参ったよ。でもさ、好きな人がいるって事は、まだ付き合ってないってことじゃない?あいつに、告白しないのかって聞いたら、好きだとは何度も言ってるけど、本気にしてくれないんだって言うのよ。それで、ピント来たのよねー。相手はあなただって。」
俺は立ち止まった。前園さんも立ち止まる。
「二人はさ、子供の頃からずっと一緒にいるわけでしょ。だから、なかなか恋愛感情に気づきにくいと思うんだよね。城崎はどうして気づいたのかを聞いたら、あなたに彼女ができて嫉妬したのがきっかけだって言うから、それなら、今度は城崎が嫉妬させてやれば、あなたも自分の気持ちに気づいてくれるんじゃないかって提案したわけ。」
そうだったのか。それで、偽の彼女になったってわけか。
「でも、全然上手く行かないって、城崎いっつも嘆いてたよ。あいつが恋愛で自信無くすとか、一生ないだろうと思っていたのにさ、笑っちゃうよね。俺の事好きじゃないのかなってさ。私はもう幻滅よ。・・・ああ、うそうそ。いくら城崎ほどのモテる男だとしても、あなたが女の子の方がいいという事は十分考えられるわけだし、そうしたら、まだ私にもチャンスあるかなーとか思っていたわけよ。でも。」
前園さんは、言葉を切って俺の顔をじっと見た。俺は緊張した。
「兄貴、何か言ったんですか?」
「何も言わないけどね、この間まで落ち込んでた人が、急にキラキラ輝き出したからねー。分かり安いったら。すっかり両想いなの?」
「えっと、その、俺は、まだ・・・よく分からなくて。」
「そっか。君、この間まで城崎と本当の兄弟だと思ってたんでしょ?そりゃ無理もないよね。でも、城崎にとっては、ずっとあなたは弟じゃなかったのよね。守ってあげなきゃって、小さい時からそう思って来たって言ってたわよ。ま、時間をかけてもいいんじゃない?あーでも、あんまり悠長に構えてると、誰かに城崎を取られちゃうかもしれないよ。わ、た、し、とか。」
前園さんはウインクして、そして走り去って行った。やっぱり美人だよな。性格はまあ、見た目とギャップあるけど。でも、意外にサバサバしていて、海斗がアスリート同士仲良くする間柄だったというのも分かる。だが、これからは仲良くしてもらいたくない。だって、明らかに前園さんは海斗を狙っているじゃないか。そう、海斗の事を狙っている人はたくさんいる。俺が避けている間に、誰かに取られてしまう可能性は大いにあるのだ。
例えば、家の廊下ですれ違う時、俺が手が触れただけで過剰反応すると、今までは悲しそうな雰囲気を醸し出していたのだが、今度はむしろもっと触るというか、手を握ってくる。また、ご飯の時、俺が目を合わせないようにしているのに、海斗はじーっと俺の方を見てくる。俺がちらっと海斗の顔を見て目が合うと、ニヤっと笑う。そして、自分の部屋へ戻ろうとする時、部屋の前で海斗は俺を捕まえて、壁ドンしてくる。もう、心臓に悪い。俺は悲鳴を上げる一歩手前で声を押し殺し、すり抜けて部屋に閉じこもるのだ。ああ、我が家が一瞬にしてテーマパークと化したようだ。そう、ドキドキワクワクの連続。だが、前のようにハグしたり、頭を撫でたりはして来ない海斗。不思議だ。
部活中、一人でトレーニングをしていると、ランニングをしている前園さんに会った。
「あ、こんにちは。」
俺が挨拶をすると、前園さんは走るのをやめ、俺と一緒に歩き始めた。
「あーあ、とうとう君に取られちゃったな。」
などと言う。
「はい?」
俺が聞き返すと、歩きながら前園さんが言う。
「私ね、城崎に告白したんだ。インターハイを前にして、ちょっとナーバスになってたのかな。急に当たって砕けろって思って。」
俺は驚いた。海斗と前園さんは友達として仲が良いのだと思っていたから。
「私がさ、付き合わない?って言ったら、あいつ、ごめん、俺好きな人がいるからって、即断るんだよー。参ったよ。でもさ、好きな人がいるって事は、まだ付き合ってないってことじゃない?あいつに、告白しないのかって聞いたら、好きだとは何度も言ってるけど、本気にしてくれないんだって言うのよ。それで、ピント来たのよねー。相手はあなただって。」
俺は立ち止まった。前園さんも立ち止まる。
「二人はさ、子供の頃からずっと一緒にいるわけでしょ。だから、なかなか恋愛感情に気づきにくいと思うんだよね。城崎はどうして気づいたのかを聞いたら、あなたに彼女ができて嫉妬したのがきっかけだって言うから、それなら、今度は城崎が嫉妬させてやれば、あなたも自分の気持ちに気づいてくれるんじゃないかって提案したわけ。」
そうだったのか。それで、偽の彼女になったってわけか。
「でも、全然上手く行かないって、城崎いっつも嘆いてたよ。あいつが恋愛で自信無くすとか、一生ないだろうと思っていたのにさ、笑っちゃうよね。俺の事好きじゃないのかなってさ。私はもう幻滅よ。・・・ああ、うそうそ。いくら城崎ほどのモテる男だとしても、あなたが女の子の方がいいという事は十分考えられるわけだし、そうしたら、まだ私にもチャンスあるかなーとか思っていたわけよ。でも。」
前園さんは、言葉を切って俺の顔をじっと見た。俺は緊張した。
「兄貴、何か言ったんですか?」
「何も言わないけどね、この間まで落ち込んでた人が、急にキラキラ輝き出したからねー。分かり安いったら。すっかり両想いなの?」
「えっと、その、俺は、まだ・・・よく分からなくて。」
「そっか。君、この間まで城崎と本当の兄弟だと思ってたんでしょ?そりゃ無理もないよね。でも、城崎にとっては、ずっとあなたは弟じゃなかったのよね。守ってあげなきゃって、小さい時からそう思って来たって言ってたわよ。ま、時間をかけてもいいんじゃない?あーでも、あんまり悠長に構えてると、誰かに城崎を取られちゃうかもしれないよ。わ、た、し、とか。」
前園さんはウインクして、そして走り去って行った。やっぱり美人だよな。性格はまあ、見た目とギャップあるけど。でも、意外にサバサバしていて、海斗がアスリート同士仲良くする間柄だったというのも分かる。だが、これからは仲良くしてもらいたくない。だって、明らかに前園さんは海斗を狙っているじゃないか。そう、海斗の事を狙っている人はたくさんいる。俺が避けている間に、誰かに取られてしまう可能性は大いにあるのだ。
2
あなたにおすすめの小説
好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない
豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。
とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ!
神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。
そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。
□チャラ王子攻め
□天然おとぼけ受け
□ほのぼのスクールBL
タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。
◆…葛西視点
◇…てっちゃん視点
pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。
所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。
ジャスミン茶は、君のかおり
霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。
大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。
裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。
困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。
その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。
【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?
キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。
知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。
今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど——
「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」
幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。
しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。
これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。
全8話。
白花の檻(はっかのおり)
AzureHaru
BL
その世界には、生まれながらに祝福を受けた者がいる。その祝福は人ならざるほどの美貌を与えられる。
その祝福によって、交わるはずのなかった2人の運命が交わり狂っていく。
この出会いは祝福か、或いは呪いか。
受け――リュシアン。
祝福を授かりながらも、決して傲慢ではなく、いつも穏やかに笑っている青年。
柔らかな白銀の髪、淡い光を湛えた瞳。人々が息を呑むほどの美しさを持つ。
攻め――アーヴィス。
リュシアンと同じく祝福を授かる。リュシアン以上に人の域を逸脱した容姿。
黒曜石のような瞳、彫刻のように整った顔立ち。
王国に名を轟かせる貴族であり、数々の功績を誇る英雄。
血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】
まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。
孤毒の解毒薬
紫月ゆえ
BL
友人なし、家族仲悪、自分の居場所に疑問を感じてる大学生が、同大学に在籍する真逆の陽キャ学生に出会い、彼の止まっていた時が動き始める―。
中学時代の出来事から人に心を閉ざしてしまい、常に一線をひくようになってしまった西条雪。そんな彼に話しかけてきたのは、いつも周りに人がいる人気者のような、いわゆる陽キャだ。雪とは一生交わることのない人だと思っていたが、彼はどこか違うような…。
不思議にももっと話してみたいと、あわよくば友達になってみたいと思うようになるのだが―。
【登場人物】
西条雪:ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。
白銀奏斗:勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。
王子様から逃げられない!
一寸光陰
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる