旧:モテる兄貴を持つと・・・Yamato&Kaito(改訂版あり)

夏目碧央

文字の大きさ
47 / 52

北海道へ

しおりを挟む
 「気を付けてね。ああ、母さん寂しいわ。」
「母さん、四年後にはまた帰って来るから。そうしたら、それからはずっと一緒だよ。」
俺は、羽田空港にいた。三月下旬。いよいよ、大学に進学するのだ。春休みに帰ってきていた海斗と共に、これから北海道へ出発する。
「夏休みには帰ってきてね。」
「もちろんだよ。海斗と一緒に帰るから。」
母さんを置いて行くのが忍びなくて、何度も後ろを振り返ってしまった。ちょっと涙が出そう。こうやって、海斗と俺が二人で行ってしまうのは、母さんにとってつらく寂しい事この上ないだろう。
 飛行機に乗ると、隣に座った海斗は、俺の感傷的な気分とは対照的に、ルンルン気分丸出しだった。
「あー、一年長かったー。いよいよ二人で暮らせるんだなー。」
しまりの悪い顔。でも、そんな顔でさえ、どうしてこうもかっこいいのだろうか。ほら、あちこちから視線が送られてくるよ。老若男女問わず。

 剣星大学北海道キャンパスは、旭川市にある。俺たちは羽田空港から、旭川空港へ飛び立った。旭川空港に到着し、バスで旭川駅近くにある、海斗の下宿先へ向かった。下宿先は、比較的新しいアパートで、ワンルームだが割と広くて、バストイレ付。キングサイズベッドとダイニングテーブルに椅子が二個。ちゃんと二人で暮らせるようになっていた。
「岳斗、ようこそ我が家へ。」
部屋に着くと、海斗はそう言って俺を抱きしめた。
「やっと、こういう事が出来る。これからはいつも出来るんだなあ。感激。」
海斗は俺の頭をぐりぐりと撫でた。

 夜になって、海斗が俺を飲食店に誘った。友達に俺を紹介すると言う。海斗が普段バイトをしているイタリアンのお店だそうだ。
 二人で店に入っていくと、奥のテーブル席から
「海斗、こっち!」
と呼ぶ声がした。既にお友達が来ていたようで、俺たちはそのテーブルへ向かった。そこには、旅行の写真に写っていたと思われる面々がいた。あの髪の長い美人も。
「お待たせ。えー、これが、俺の弟。岳斗。」
ガーン。やっぱり、弟か・・・。海斗が俺を紹介した時、一瞬胸の奥にズンと重たいものが落ちた。いや、待てよ。俺だって、友達に海斗を紹介する時、まずは兄貴だと言うだろう。まさか、いきなり彼氏ですとか恋人です、などとは紹介しないはずだ。そうだ、だからこれはいい。しょうがない。
「どうも。」
俺がそう言ってちょっと頭を下げると、
「よろしくねー!」
と、みなさんそれぞれ言ってくれた。
「岳斗、紹介するな。慎二、圭介、凛太朗、葵だ。」
海斗が指をさしながら、みなさんを紹介してくれた。ずいぶんざっくばらんな紹介だ。葵さんか・・・。穏やかに笑っている。
 それから、みんなで夕飯を食べた。みなさんいい人だった。海斗がトイレに立った時、みなさんが一斉に俺の方へ顔を寄せた。
「ねえ、岳斗くん。海斗の恋人ってどんな人なの?」
葵さんから小声でそう聞かれた。
「え?」
みなさん、俺に注目。
「月一で強硬帰省してたからさ、恋人がいるに違いないと思ってるんだけど、どんな人なのか全然教えてくれないんだよ。写真とかないの?」
慎二さんがそう言った。
「えーと・・・。」
俺が答えに詰まっていると、
「みんなして何の相談?」
いきなり海斗の声がした。いつの間にか、海斗が俺たちと同じように顔を寄せていた。
「うわっ!お前、びっくりするだろ。」
慎二さんが言った。
「何だよ。」
海斗が言うと、
「だいたいお前は、この小さな町には無駄に顔が良すぎるんだよ。」
因みに、慎二さんは元都民だそうです。付属校出身ではないけれど。道民にとっては、旭川は小さな町ではないと思う。慎二さん以外はみなさん道民だそうだ。
 そうして、その話題は立ち消えになった。危なかった。

 家に帰って来た。俺と海斗の家。急に喜びが溢れた。俺と、海斗の・・・家。嬉しい。
「何ニヤニヤしてんだ?」
俺が先にシャワーを使わせてもらい、ベッドの片側に寝そべっていると、出て来た海斗が俺の顔を覗き込んだ。
「いや、なんか嬉しいなーと思って。やっと一緒に住めるようになって。」
「今更かよ。」
「やっと実感が湧いたというか。」
海斗はふっと笑った。それにしても、今日は移動と引っ越しとで疲れた。
「ふあぁ、このベッド気持ちいいね。それに、久しぶりに広々と海斗と一緒に寝られる。」
俺は、隣にいる海斗の顔を見ながら、もう目が閉じかけていた。
「よしよし、今日は疲れただろ。ゆっくりお休み。」
海斗が俺の頭を撫でてくれた。そして、すぐに眠りについた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない

豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。 とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ! 神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。 そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。 □チャラ王子攻め □天然おとぼけ受け □ほのぼのスクールBL タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。 ◆…葛西視点 ◇…てっちゃん視点 pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。 所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

白花の檻(はっかのおり)

AzureHaru
BL
その世界には、生まれながらに祝福を受けた者がいる。その祝福は人ならざるほどの美貌を与えられる。 その祝福によって、交わるはずのなかった2人の運命が交わり狂っていく。 この出会いは祝福か、或いは呪いか。 受け――リュシアン。 祝福を授かりながらも、決して傲慢ではなく、いつも穏やかに笑っている青年。 柔らかな白銀の髪、淡い光を湛えた瞳。人々が息を呑むほどの美しさを持つ。 攻め――アーヴィス。 リュシアンと同じく祝福を授かる。リュシアン以上に人の域を逸脱した容姿。 黒曜石のような瞳、彫刻のように整った顔立ち。 王国に名を轟かせる貴族であり、数々の功績を誇る英雄。

血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。

孤毒の解毒薬

紫月ゆえ
BL
友人なし、家族仲悪、自分の居場所に疑問を感じてる大学生が、同大学に在籍する真逆の陽キャ学生に出会い、彼の止まっていた時が動き始める―。 中学時代の出来事から人に心を閉ざしてしまい、常に一線をひくようになってしまった西条雪。そんな彼に話しかけてきたのは、いつも周りに人がいる人気者のような、いわゆる陽キャだ。雪とは一生交わることのない人だと思っていたが、彼はどこか違うような…。 不思議にももっと話してみたいと、あわよくば友達になってみたいと思うようになるのだが―。 【登場人物】 西条雪:ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。 白銀奏斗:勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。

聖者の愛はお前だけのもの

いちみりヒビキ
BL
スパダリ聖者とツンデレ王子の王道イチャラブファンタジー。 <あらすじ> ツンデレ王子”ユリウス”の元に、希少な男性聖者”レオンハルト”がやってきた。 ユリウスは、魔法が使えないレオンハルトを偽聖者と罵るが、心の中ではレオンハルトのことが気になって仕方ない。 意地悪なのにとても優しいレオンハルト。そして、圧倒的な拳の破壊力で、数々の難題を解決していく姿に、ユリウスは惹かれ、次第に心を許していく……。 全年齢対象。

処理中です...