5日間ホテルに滞在して大阪・関西万博のボランティア活動をしてみた

夏目碧央

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中之島美術館へ

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 大阪駅の近くのホテルから、中之島へは歩いて行ける距離だった。頭が痛いし、ちょっと暑かった。でも、風があって歩いていて気持ちの良い気候だった。橋を渡る時、川沿いに桜並木が見えた。葉桜でも綺麗だ。
 大阪には何度か来た事があるが、中之島へ来たのは初めてだ。橋から眺めた感じは、東京の丸の内のようだ。いや、島だからな。パリのシテ島か、ニューヨークのマンハッタンみたいと言った方がいいだろうか。
 そう、そのシテ島のようなマンハッタンのような所に、白い靴、黒くてパンパンなリュック、しかもリュックのポケットには水筒、といういでたちで来てしまった夏目碧央。サラリーマンやサラリーウーマンが行きかう中、ちょっと場違い。
 しかし、とにかく中之島美術館へは行かねばならない。美術展のチケットを買ってしまったから。大阪で少しだけ観光をしようと思って、行った事のない中之島へ行ってみようと思い、いくつかある美術館で何がやっているのかを調べたら、中之島美術館で上村松園(うえむら しょうえん)展がやっていると分かった。そこで、アソビューのポイントの期限が切れるというタイミングだった事もあり、チケットを予め購入したのだ。
 だから、たとえ疲れていても、這ってでも上村松園展にだけは行かなければならなかった。と、言うと大げさだが。
 余談ではあるが、とても立派な建物の前を通った。何かと思ったら日本銀行大阪支店だった。その文字が入るように、振り返って写真を撮ったのだった。家に帰ってからブログにその写真を載せようと思い、人の顔が写り込んでいないかどうか拡大して見たら……警備員さんがこちらに向かって手でバッテンを作っていた。
 そんなの全然気づいていなかった。つまり写真を撮ってはダメという事なのか?ヤバイヤバイ、これが別の国だったらスパイ容疑で捕まっていたところだった。とにかく写真をブログに載せるのは辞めておいた。
 ミャクミャクのマンホールも見つけたが、後でいくらでも見られると思って写真を撮らなかった。何しろサラリーマンが行きかう中だからね。でも、ついぞその後は見かける事がなかった。やっぱりマンホールの写真も撮っておけばよかった。「旅の恥は掻き捨て」と言うではないか。
 お、あれは何だ?万博カラーではないか?背の高いビルの表面に、大きく赤や青の四角い線が描かれていた。思わず写真を撮った。
 そしてすぐ、中之島美術館に到着した。2階から入るみたいだ。階段を上がると猫ちゃんのオブジェが立っていた。建物に入り、ロッカーにリュックを預け、やけにのんびりと上るエスカレーターに乗って1つ上がると、そこが上村松園展の会場だった。
 今年は上村松園生誕150年の年らしい。上村松園は京都に生まれ、明治から昭和にかけて活躍した日本画家である。晩年に女性として初めて文化勲章を受章した。前から彼女の描く美人画は好きだったが、これだけ多くの松園の絵が集められた展覧会は初めてだ。
 まずは「人生」というテーマでの展示。松園は結婚せず、息子を産んだ。その息子は日本画家の上村松篁(しょうこう)。そして孫、上村淳之(あつし)も日本画家となった。
 年表のところでおば様方がお話をしていた。かなり噂になったのよね~、大変だったのよー。その時代に生きていたような口ぶりだったが。つまり、松園は噂になるような相手との子供を産んだという事らしい。
 松園は商家の生まれだが、母親からは画業をずっと応援してもらっていたそうだ。その為、母への感謝や愛情が籠った女性の絵も多いとか。
 第2章は「季節を描く」、第3章は「古典を描く」、第4章は「暮らしを描く」というテーマだった。いやー、お腹いっぱい観たぞ。上村松園、美しい女性ばかり描いているわけではなかった。だが、大方美人画だった。
 展示を観終わり、ショップへとやってきた。ミュージアムショップは、買わなくても見るだけで楽しい。
 何しろ万博土産さえ買い控えるほどに、スーツケースのスペースがない。だからやっぱり何も買わない事にした。だが、素敵な栞を見つけてちょっと心が動く。義母へのお土産の1つに、ミャクミャクの栞を購入したのだが、義母にはこっちの方が良かったかなーなどと思いつつ、眺めるだけで出口へ。
 すると、出口の所にQRコードがあり、LINEの友達追加をすれば抽選でブックマーカーが当たる、と書いてあった。女性の2人組がそこで抽選に挑戦していた。そして、ダメだったようだ。
「まあ、当たらないよね。」
などと言って2人は去っていった。私も一応抽選に挑戦してみた。一応ね。もらえる物はもらう主義で。
 すると……当たった!すごいじゃないか私。その当たり画面を開いたまま、レジへと戻った。何も買わないのに、と少し引け目を感じつつ、レジでその画面を見せたら、伏せた状態でブックマーカー、つまり栞を1枚くれた。めくってみると、なんと先ほど手に取ったもの。つまり一番気に入ったやつだった。やった!ツルツルとした、しっかりした質感だ。下敷きみたいな感じだろうか。うん、これは私の物だな。フフフ。
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