4 / 21
体育の後で
しおりを挟む
5月になると、時々夏のように暑い日がやってくる。今日は日差しが強く、30度近くまで気温が上がっていた。
6時間目、2年2組に授業をしに行くと、5時間目が体育だったので、まだ生徒たちは着替えの最中だった。まだ休み時間中なので仕方がない。それにしても男ばかり25人が汗をかきまくっていて、むさくるしいやら汗臭いやら。冷房はまだ使ってはならないと学校で決まっていて、窓を開け放って、扇風機をかけているものの、暑い。教師はワイシャツにネクタイというスタイルを崩してはならないと、これまた学校の方で決められているので、俺は暑くてもネクタイを締めていた。
「あちー、制服着たくねえ。」
「だよなー。」
生徒たちはチャイムが今鳴っているというのに、体育着や下敷きで自分の顔を扇いでいて、騒がしい。まだ着替えが終わっていない生徒もいる。俺は教室に入り、荷物を教卓に置いたものの、何となくぶらぶらしていた。そして、当然気になる颯太の方へそれとなく視線を向ける。
はっう!
見てはいけないものを見てしまった、気がした。颯太は汗をかいて前髪が濡れており、顔が上気して頬が赤く染まっていた。手で顔を扇ぎながら口からふーっと息を吐き、ちらっと俺の方を見た。
は、鼻血が出そうだ!俺はぱっと窓の方に視線を移した。そして、腕組みをしてそのまま窓際まで歩き、開け放たれた窓辺に立ち、外を眺めた。落ち着け、俺。まさかここで鼻血を出したら洒落にならない。深呼吸だ。深呼吸。だが、もう一度颯太の顔を見たい。いや、まずいだろう。だが見たい。見たい、ああ、振り返りたいが・・・。
「先生。」
いやあ、振り返ったらまずいだろう。本当に鼻血が出てしまうかもしれない。
「八雲先生。」
だが、颯太のあんな顔が見られるチャンスなんて滅多にないかもしれないし。
「八雲先生?」
「ん、あ?」
俺は我に返った。振り返ると、クラスは静まり返っており、みんな制服に着替えて席に座っていた。いつの間に静かになっていたのだ?
「先生、どうしたんですか?大丈夫ですか?」
「暑くておかしくなったんじゃね?」
悪態をつく生徒も、いる。それは仕方ない。俺は教卓まで、ゆっくり歩いた。この事態をどう乗り切るか、頭の中は忙しなく動く。
教卓にたどり着き、両手をついた。クラス全員の顔を見渡す。ああ、颯太は可愛い。が、今はそれどころではない。みんな俺が何を言うか興味津々だ。みんな俺に大注目している。
「うん、良い集中力だ。授業を始めるぞっ。」
俺は国語の授業をいつも以上に張り切って始めた。生徒たちはキョトンとしたまま俺のペースにはまって行った。おしゃべりする隙を与えない、俺。
6時間目、2年2組に授業をしに行くと、5時間目が体育だったので、まだ生徒たちは着替えの最中だった。まだ休み時間中なので仕方がない。それにしても男ばかり25人が汗をかきまくっていて、むさくるしいやら汗臭いやら。冷房はまだ使ってはならないと学校で決まっていて、窓を開け放って、扇風機をかけているものの、暑い。教師はワイシャツにネクタイというスタイルを崩してはならないと、これまた学校の方で決められているので、俺は暑くてもネクタイを締めていた。
「あちー、制服着たくねえ。」
「だよなー。」
生徒たちはチャイムが今鳴っているというのに、体育着や下敷きで自分の顔を扇いでいて、騒がしい。まだ着替えが終わっていない生徒もいる。俺は教室に入り、荷物を教卓に置いたものの、何となくぶらぶらしていた。そして、当然気になる颯太の方へそれとなく視線を向ける。
はっう!
見てはいけないものを見てしまった、気がした。颯太は汗をかいて前髪が濡れており、顔が上気して頬が赤く染まっていた。手で顔を扇ぎながら口からふーっと息を吐き、ちらっと俺の方を見た。
は、鼻血が出そうだ!俺はぱっと窓の方に視線を移した。そして、腕組みをしてそのまま窓際まで歩き、開け放たれた窓辺に立ち、外を眺めた。落ち着け、俺。まさかここで鼻血を出したら洒落にならない。深呼吸だ。深呼吸。だが、もう一度颯太の顔を見たい。いや、まずいだろう。だが見たい。見たい、ああ、振り返りたいが・・・。
「先生。」
いやあ、振り返ったらまずいだろう。本当に鼻血が出てしまうかもしれない。
「八雲先生。」
だが、颯太のあんな顔が見られるチャンスなんて滅多にないかもしれないし。
「八雲先生?」
「ん、あ?」
俺は我に返った。振り返ると、クラスは静まり返っており、みんな制服に着替えて席に座っていた。いつの間に静かになっていたのだ?
「先生、どうしたんですか?大丈夫ですか?」
「暑くておかしくなったんじゃね?」
悪態をつく生徒も、いる。それは仕方ない。俺は教卓まで、ゆっくり歩いた。この事態をどう乗り切るか、頭の中は忙しなく動く。
教卓にたどり着き、両手をついた。クラス全員の顔を見渡す。ああ、颯太は可愛い。が、今はそれどころではない。みんな俺が何を言うか興味津々だ。みんな俺に大注目している。
「うん、良い集中力だ。授業を始めるぞっ。」
俺は国語の授業をいつも以上に張り切って始めた。生徒たちはキョトンとしたまま俺のペースにはまって行った。おしゃべりする隙を与えない、俺。
0
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?
perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。
その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。
彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。
……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。
口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。
――「光希、俺はお前が好きだ。」
次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる