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焼肉パーティー
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「さてと、俺は帰るとするかな。」
坂口はそいじゃ、と片手を高く上げてくるりと背中を向け、去って行った。俺と颯太はその背中をしばらく無言で見送っていた。
「腹減ったよな。何か食いに行くか。」
坂口の姿が見えなくなった時、俺はそう言った。
「うん。」
「その前に、ちゃんと言わせてくれ。」
俺は颯太の方に向き直り、言った。
「颯太、俺と付き合ってくれ。ずっと大切にするから。」
すると、颯太は無言でこくりと頷いた。俺は、思わず颯太を抱きしめた。
「俺は生徒とよくハグするが、それとこれとは全然違うんだ。分かるか?」
そう言って、更に力を込めてぎゅーっとした。颯太は俺の背中に手を回し、
「うん。俺、先生の事、すっげえ好き。」
と言ってくれた。どっかん。ぴゅーっ。俺の意識はロケットのように空高く飛んで行った。
1年後。約束の日よりも1年も延びてしまったが、元3年特進クラスのメンバーを集め、焼肉パーティーを開いた。高校の近くの焼肉店。全員とはいかなかったが、8割方が参加してくれた。
俺は1年生の担任をしていた。4月からは2年生の担任になる。相変わらずの毎日だ。
「みんな、大学はどうだ?新生活には慣れたか?」
俺は、元3年2組のメンバーの間に入っていき、近くの子らに声をかけた。
「だいぶ慣れたかなー。」
「俺は関西にいるから、未だに刺激的だよ。」
「あー、お前関西の大学だったな。わざわざ来てくれたのか?」
「春休みは帰省してたから。」
などなど、近況報告になる。
「先生、今年の新入生はどうよ?かわいい子はいた?」
などと言ってくる奴もいる。
「おう、みんな可愛いぞ。お前たちみたいにな。」
俺が普通に答えると、周りの面々が動きを止めて俺を見る。
「先生、そうじゃないでしょ。」
みんなしてニヤニヤしている。
「あのなあ、俺は男色じゃないし、そういう目で生徒を見ていません。」
説得力ないなあ、と自分でも思いながら言い張る。周りはもちろん信じていない。が、本当に颯太に出会ったのは奇跡であって、普通の生徒は普通に可愛いだけなのだ。そういう目では断じて見ていないのだ。
すると、俺の背中に重みが加わった。振り返ると、颯太が覆いかぶさっていた。
「何か面白い話でもしてんの?」
何か特別な空気を感じ取ったのか?颯太が友達の前で俺にくっつくなんて。
「颯太ぁ、久しぶり!お前は相変わらず・・・いや、更におしゃれになったというか。イケてるよなあ。」
一人が言うと、うんうんと回りの子たちも頷く。
「っていうか、あれ?ってことは、二人は・・・。」
みんなが俺と颯太の事を交互に見る。が、その中で相馬だけはすましていた。相馬は颯太からいろいろ聞いているのだろう。
みんなに見られてどうしようかと思っていたら、颯太は俺の首に腕を絡め、片手でピースをした。
「おー!八雲先生、良かったじゃん!」
わーっと湧いた。そして、颯太は自分の席へ戻って行った。颯太はわざわざ俺との仲をバラしに来たのだろうか。俺がみんなと仲良くしているから、もしかして心配して?やきもち?顔がにやけそう。
「先生、どうやって颯太をゲットしたのよ。すごいじゃん。」
「モテモテなのにねえ、颯太は。」
みんなは相変わらず好意的でありがたい。
「そうなんだよ。颯太は大学でもモテモテで。男の子にも女の子にもモテるもんだからさ、大変なんだよ。」
俺は思わずこぼした。
「へえ、やっぱりねえ。でも、今の感じじゃあ、ラブラブじゃん。」
「そうか?」
俺は思わず聞き返す。もっと言って。
「そうだよ。ラブラブだよ。」
「そうか?颯太は俺の事をちゃんと好きかな?」
調子に乗りすぎ?
「颯太は先生の事、絶対大好きだよ。間違いないよ。」
と、今まですまして黙っていた相馬が突然言った。相馬!お前はやっぱりいい奴だ!
「相馬ぁ!お前は本当に、いい奴だなあ。」
俺は相馬の方へにじり寄り、がしっと抱きしめた。そして頭をいい子いい子する。みんな大笑い。
「ちょっと、先生!颯太が怒るよ。」
相馬が俺から離れようともがく。はっとして、俺は颯太の方を見た。颯太がどこに座っているかは既に確認済みである。すると、颯太は・・・思いっきり俺を睨んでいた。ひゃー、怖い。颯太は怒ると触らせてくれないし、他の男を呼び出して遊びに行っちゃうし、大変な事になるのだ。俺はぱっと相馬を離した。
「そうだな、颯太が怒るな。」
俺が言うと、
「怒るのは、ヤキモチやくからじゃん。ヤキモチやくってことは、先生の事が好きだからでしょ。颯太だって、先生を高校生に取られないかって、けっこう心配してんだよ。」
と、相馬は俺を諭すように言った。
「相馬、お前・・・大人になったな。」
いや、なんか違う気がした。相馬の表情から、何か違うものを感じた。相馬は、もしかしたら颯太の事が好きだったのではないか。今でも、俺との事を相談されたりして、つらいのではないのか。
「相馬、お前。もしかして颯太の事・・・。」
俺が思わずそう言いかけると、相馬の表情は急に強張った。だから確信した。だが、俺はそれ以上は何も言わなかった。言えなかった。そうだからってどうすることもできない。相馬が颯太と友達でいる事を辞めるのか、このまま、つらくとも友達としてつき合っていくのか、それは相馬が決める事だ。
「相馬、ありがとう。」
俺はただ、そう言って頭を下げた。
「いいって、先生。」
相馬は笑ってそう言った。お前はきっと、将来幸せになれる。こんなにいい奴なんだから。
ずっと楽しみにしていた焼肉パーティーが終わった。俺のおごりだ!と言って大盤振る舞いしたが、はっきり言ってキツイ。去年までは、俺は実家暮らしでろくに金を使う趣味も持っていなかったため、生徒に御馳走するのは俺の唯一の趣味みたいなものであったが、颯太とつき合うようになってからは、嘘のように金が飛ぶ。それほど贅沢させているわけでもないが、出かけてご飯を食べるだけでもけっこう積もれば山となるのだ。その上映画を観たり、遊園地に行ったり、海に行ったり・・・etc。もう、生徒に驕るのはこれで最後にしよう。優勝しても、驕らんゾ。でも、前例があるとなぁ。辞められるかどうかはワカラナイ・・・。
坂口はそいじゃ、と片手を高く上げてくるりと背中を向け、去って行った。俺と颯太はその背中をしばらく無言で見送っていた。
「腹減ったよな。何か食いに行くか。」
坂口の姿が見えなくなった時、俺はそう言った。
「うん。」
「その前に、ちゃんと言わせてくれ。」
俺は颯太の方に向き直り、言った。
「颯太、俺と付き合ってくれ。ずっと大切にするから。」
すると、颯太は無言でこくりと頷いた。俺は、思わず颯太を抱きしめた。
「俺は生徒とよくハグするが、それとこれとは全然違うんだ。分かるか?」
そう言って、更に力を込めてぎゅーっとした。颯太は俺の背中に手を回し、
「うん。俺、先生の事、すっげえ好き。」
と言ってくれた。どっかん。ぴゅーっ。俺の意識はロケットのように空高く飛んで行った。
1年後。約束の日よりも1年も延びてしまったが、元3年特進クラスのメンバーを集め、焼肉パーティーを開いた。高校の近くの焼肉店。全員とはいかなかったが、8割方が参加してくれた。
俺は1年生の担任をしていた。4月からは2年生の担任になる。相変わらずの毎日だ。
「みんな、大学はどうだ?新生活には慣れたか?」
俺は、元3年2組のメンバーの間に入っていき、近くの子らに声をかけた。
「だいぶ慣れたかなー。」
「俺は関西にいるから、未だに刺激的だよ。」
「あー、お前関西の大学だったな。わざわざ来てくれたのか?」
「春休みは帰省してたから。」
などなど、近況報告になる。
「先生、今年の新入生はどうよ?かわいい子はいた?」
などと言ってくる奴もいる。
「おう、みんな可愛いぞ。お前たちみたいにな。」
俺が普通に答えると、周りの面々が動きを止めて俺を見る。
「先生、そうじゃないでしょ。」
みんなしてニヤニヤしている。
「あのなあ、俺は男色じゃないし、そういう目で生徒を見ていません。」
説得力ないなあ、と自分でも思いながら言い張る。周りはもちろん信じていない。が、本当に颯太に出会ったのは奇跡であって、普通の生徒は普通に可愛いだけなのだ。そういう目では断じて見ていないのだ。
すると、俺の背中に重みが加わった。振り返ると、颯太が覆いかぶさっていた。
「何か面白い話でもしてんの?」
何か特別な空気を感じ取ったのか?颯太が友達の前で俺にくっつくなんて。
「颯太ぁ、久しぶり!お前は相変わらず・・・いや、更におしゃれになったというか。イケてるよなあ。」
一人が言うと、うんうんと回りの子たちも頷く。
「っていうか、あれ?ってことは、二人は・・・。」
みんなが俺と颯太の事を交互に見る。が、その中で相馬だけはすましていた。相馬は颯太からいろいろ聞いているのだろう。
みんなに見られてどうしようかと思っていたら、颯太は俺の首に腕を絡め、片手でピースをした。
「おー!八雲先生、良かったじゃん!」
わーっと湧いた。そして、颯太は自分の席へ戻って行った。颯太はわざわざ俺との仲をバラしに来たのだろうか。俺がみんなと仲良くしているから、もしかして心配して?やきもち?顔がにやけそう。
「先生、どうやって颯太をゲットしたのよ。すごいじゃん。」
「モテモテなのにねえ、颯太は。」
みんなは相変わらず好意的でありがたい。
「そうなんだよ。颯太は大学でもモテモテで。男の子にも女の子にもモテるもんだからさ、大変なんだよ。」
俺は思わずこぼした。
「へえ、やっぱりねえ。でも、今の感じじゃあ、ラブラブじゃん。」
「そうか?」
俺は思わず聞き返す。もっと言って。
「そうだよ。ラブラブだよ。」
「そうか?颯太は俺の事をちゃんと好きかな?」
調子に乗りすぎ?
「颯太は先生の事、絶対大好きだよ。間違いないよ。」
と、今まですまして黙っていた相馬が突然言った。相馬!お前はやっぱりいい奴だ!
「相馬ぁ!お前は本当に、いい奴だなあ。」
俺は相馬の方へにじり寄り、がしっと抱きしめた。そして頭をいい子いい子する。みんな大笑い。
「ちょっと、先生!颯太が怒るよ。」
相馬が俺から離れようともがく。はっとして、俺は颯太の方を見た。颯太がどこに座っているかは既に確認済みである。すると、颯太は・・・思いっきり俺を睨んでいた。ひゃー、怖い。颯太は怒ると触らせてくれないし、他の男を呼び出して遊びに行っちゃうし、大変な事になるのだ。俺はぱっと相馬を離した。
「そうだな、颯太が怒るな。」
俺が言うと、
「怒るのは、ヤキモチやくからじゃん。ヤキモチやくってことは、先生の事が好きだからでしょ。颯太だって、先生を高校生に取られないかって、けっこう心配してんだよ。」
と、相馬は俺を諭すように言った。
「相馬、お前・・・大人になったな。」
いや、なんか違う気がした。相馬の表情から、何か違うものを感じた。相馬は、もしかしたら颯太の事が好きだったのではないか。今でも、俺との事を相談されたりして、つらいのではないのか。
「相馬、お前。もしかして颯太の事・・・。」
俺が思わずそう言いかけると、相馬の表情は急に強張った。だから確信した。だが、俺はそれ以上は何も言わなかった。言えなかった。そうだからってどうすることもできない。相馬が颯太と友達でいる事を辞めるのか、このまま、つらくとも友達としてつき合っていくのか、それは相馬が決める事だ。
「相馬、ありがとう。」
俺はただ、そう言って頭を下げた。
「いいって、先生。」
相馬は笑ってそう言った。お前はきっと、将来幸せになれる。こんなにいい奴なんだから。
ずっと楽しみにしていた焼肉パーティーが終わった。俺のおごりだ!と言って大盤振る舞いしたが、はっきり言ってキツイ。去年までは、俺は実家暮らしでろくに金を使う趣味も持っていなかったため、生徒に御馳走するのは俺の唯一の趣味みたいなものであったが、颯太とつき合うようになってからは、嘘のように金が飛ぶ。それほど贅沢させているわけでもないが、出かけてご飯を食べるだけでもけっこう積もれば山となるのだ。その上映画を観たり、遊園地に行ったり、海に行ったり・・・etc。もう、生徒に驕るのはこれで最後にしよう。優勝しても、驕らんゾ。でも、前例があるとなぁ。辞められるかどうかはワカラナイ・・・。
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