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部活始動、恋も始動?
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岳斗は、席の近い男子三人と何となく仲良くなった。笠原彰吾、金子陸、栗田直哉である。つまり、名簿順で並んでいた四人で仲良くなったのである。ダンス部や調理部に体験に行ったのもこの四人だった。結局、笠原はサッカー部に入った。元々サッカーをやっていて、サッカー部に入るつもりだったのを、面白がって岳斗についてきただけだったのだ。金子は放送部に、栗田はテニス部に入った。
朝、サッカー部の笠原は朝練を終えてから教室に入って来たが、開口一番岳斗にこう言った。
「岳斗、お前の兄ちゃん、やっぱかっこええなぁ。」
「は?何、今更。」
岳斗が言うと、
「いやあ、朝練の後に着替えてたらさあ、ああ今日小テストだったって言ってネクタイ中途半端で急いで行こうとしてさ、その時に俺らに向かって“お前ら、ちゃんと汗拭けよ”って言いながら飛び出して行った時の海斗さんがさ、まあかっこよかったって言うかさあ。」
笠原は、夢見心地の様相である。
「彰吾はすっかり岳斗の兄貴のファンだなあ。」
金子が笑いながら言う。
「海斗さんにはみんな憧れるでしょ。」
笠原が尚も言う。すると栗田が、
「岳斗、お前兄ちゃんの裏話とかないの?家では鼻ほじってますとか、いびきがうるさいぞ、とか、なんかその、海斗さまのマイナスになるような情報は。」
と聞いてきた。
「あー、そうだなあ。兄貴は家では……。」
岳斗は家での海斗を思い浮かべた。だが、海斗は家でもかっこいい。非の打ちどころがない気がした。
「まあ、家ではグダグダしてるけど……。」
玄関から岳斗に担がれて部屋へ行く、という話をしようかと思った岳斗だが、やっぱり辞めた。何となく、人に知られなくない気がしたのだ。特段恥ずかしい事ではないと思うのだが、教えてあげたくない、もったいないような気がしたのである。
「やっぱり、家でもかっこいいよ。」
岳斗はため息交じりにそう言った。金子は岳斗の肩をポンポンし、無言で大きく二つ三つ頷いた。
「お前にとっては、気の毒な話だな。」
栗田が言った。
四月も終わりに近づき、岳斗はいよいよ山岳部に入ろうと決めた。洋子にそう伝えると、
「山岳部?」
洋子は一瞬動きを止めた。岳斗が顔に疑問符を浮かべていると、洋子は思い直して岳斗に微笑んだ。
「いいわね、山岳部。岳斗は足腰が強いから、向いているわよ、きっと。」
と言った。足腰が強いなど、岳斗は自分では考えた事もなかった。もしそうなら、海斗を担いでよく階段を上っているからだろうと思った。しかし、向いていると言われたのは嬉しくて、早速翌日入部した。
山岳部の活動は月、水、金の週三回だった。部員は三年生二人、二年生三人の計五人。岳斗の他に一年生の女子が一人入るということで、これで部員は七人になった。三年生の一人は女子で、部員の女子が二人になると言って、喜んでいた。
三年生の女子、門倉梨花は部長だ。そして、もう一人の三年生は篠山雄大。この二人は付き合っているという。最初にそう紹介された。二年生は広瀬大地、近藤風雅、松本樹生。そして一年生の女子は唐木萌。唐木萌は小さくて、よく笑う子だ。
(萌ちゃん、可愛いな。俺好みかも……って、いかん。どうせまた海斗に持って行かれるのだ!期待してはダメだ!)
岳斗もだいぶひねくれたものである。
部活動の内容はこうだ。まず集合して今日の特訓予定を話し合う。それから、それぞれリュックを背負って思い思いに歩き始める。とはいえ、最初は皆一緒にスタートだ。それぞれのペースがあり、一年生は少しずつ遅れて行く。夏休みまでに先輩たちに追いつけなかったら、山登りには連れて行かない、という触れ込みだが、そんな事はないと岳斗は信じていた。それでも、足手まといにならぬよう、頑張って日々特訓しよう、と思う岳斗である。
岳斗が一階まで下りて渡り廊下を歩いていると、ボールを追いかけてきた海斗に出くわした。
「おう、岳斗。頑張れよ!」
と言って、海斗はすぐに校庭に戻って行った。岳斗は息が乱れて言葉も出なかった。だが、あの嬉しそうな笑顔を見ると、何だか少し力が湧くな、と思った。他の皆が海斗を見て嬉しくなるのも分かるというもの。そして、岳斗のすぐ後ろを歩いていた萌もまた、嬉しくなっただろうと複雑な気持ちになった。
部活動を終えた岳斗は、何となく萌と一緒に駅まで歩いていた。気になっている事を、聞いてみるかどうしようか、と悩む。
「あのさ、萌えちゃんもやっぱ。俺の兄貴の事、知ってるよね?」
岳斗は遠慮がちに、まずここから聞いてみた。
「岳斗君のお兄さん?ああ、さっき声を掛けてきた、サッカー部の人だよね?」
「うん、そう。」
やっぱり知っているのか。だが、どう思うかと聞こうとして躊躇われた。今聞いて、かっこいいよね、と返されたとしても、どこまで本気だと捉えればいいのか分からないからだ。
「岳斗君、優しいお兄さんがいていいね。」
萌は、意外な事を言った。かっこいいお兄さんではなく、優しいお兄さんと言ったのだ。それで、岳斗はすっかり萌に心を奪われてしまった。萌なら、海斗に持って行かれずにつき合えるのではないか。自分の事を好きかどうかなど、すっ飛ばして舞い上がってしまったのである。
朝、サッカー部の笠原は朝練を終えてから教室に入って来たが、開口一番岳斗にこう言った。
「岳斗、お前の兄ちゃん、やっぱかっこええなぁ。」
「は?何、今更。」
岳斗が言うと、
「いやあ、朝練の後に着替えてたらさあ、ああ今日小テストだったって言ってネクタイ中途半端で急いで行こうとしてさ、その時に俺らに向かって“お前ら、ちゃんと汗拭けよ”って言いながら飛び出して行った時の海斗さんがさ、まあかっこよかったって言うかさあ。」
笠原は、夢見心地の様相である。
「彰吾はすっかり岳斗の兄貴のファンだなあ。」
金子が笑いながら言う。
「海斗さんにはみんな憧れるでしょ。」
笠原が尚も言う。すると栗田が、
「岳斗、お前兄ちゃんの裏話とかないの?家では鼻ほじってますとか、いびきがうるさいぞ、とか、なんかその、海斗さまのマイナスになるような情報は。」
と聞いてきた。
「あー、そうだなあ。兄貴は家では……。」
岳斗は家での海斗を思い浮かべた。だが、海斗は家でもかっこいい。非の打ちどころがない気がした。
「まあ、家ではグダグダしてるけど……。」
玄関から岳斗に担がれて部屋へ行く、という話をしようかと思った岳斗だが、やっぱり辞めた。何となく、人に知られなくない気がしたのだ。特段恥ずかしい事ではないと思うのだが、教えてあげたくない、もったいないような気がしたのである。
「やっぱり、家でもかっこいいよ。」
岳斗はため息交じりにそう言った。金子は岳斗の肩をポンポンし、無言で大きく二つ三つ頷いた。
「お前にとっては、気の毒な話だな。」
栗田が言った。
四月も終わりに近づき、岳斗はいよいよ山岳部に入ろうと決めた。洋子にそう伝えると、
「山岳部?」
洋子は一瞬動きを止めた。岳斗が顔に疑問符を浮かべていると、洋子は思い直して岳斗に微笑んだ。
「いいわね、山岳部。岳斗は足腰が強いから、向いているわよ、きっと。」
と言った。足腰が強いなど、岳斗は自分では考えた事もなかった。もしそうなら、海斗を担いでよく階段を上っているからだろうと思った。しかし、向いていると言われたのは嬉しくて、早速翌日入部した。
山岳部の活動は月、水、金の週三回だった。部員は三年生二人、二年生三人の計五人。岳斗の他に一年生の女子が一人入るということで、これで部員は七人になった。三年生の一人は女子で、部員の女子が二人になると言って、喜んでいた。
三年生の女子、門倉梨花は部長だ。そして、もう一人の三年生は篠山雄大。この二人は付き合っているという。最初にそう紹介された。二年生は広瀬大地、近藤風雅、松本樹生。そして一年生の女子は唐木萌。唐木萌は小さくて、よく笑う子だ。
(萌ちゃん、可愛いな。俺好みかも……って、いかん。どうせまた海斗に持って行かれるのだ!期待してはダメだ!)
岳斗もだいぶひねくれたものである。
部活動の内容はこうだ。まず集合して今日の特訓予定を話し合う。それから、それぞれリュックを背負って思い思いに歩き始める。とはいえ、最初は皆一緒にスタートだ。それぞれのペースがあり、一年生は少しずつ遅れて行く。夏休みまでに先輩たちに追いつけなかったら、山登りには連れて行かない、という触れ込みだが、そんな事はないと岳斗は信じていた。それでも、足手まといにならぬよう、頑張って日々特訓しよう、と思う岳斗である。
岳斗が一階まで下りて渡り廊下を歩いていると、ボールを追いかけてきた海斗に出くわした。
「おう、岳斗。頑張れよ!」
と言って、海斗はすぐに校庭に戻って行った。岳斗は息が乱れて言葉も出なかった。だが、あの嬉しそうな笑顔を見ると、何だか少し力が湧くな、と思った。他の皆が海斗を見て嬉しくなるのも分かるというもの。そして、岳斗のすぐ後ろを歩いていた萌もまた、嬉しくなっただろうと複雑な気持ちになった。
部活動を終えた岳斗は、何となく萌と一緒に駅まで歩いていた。気になっている事を、聞いてみるかどうしようか、と悩む。
「あのさ、萌えちゃんもやっぱ。俺の兄貴の事、知ってるよね?」
岳斗は遠慮がちに、まずここから聞いてみた。
「岳斗君のお兄さん?ああ、さっき声を掛けてきた、サッカー部の人だよね?」
「うん、そう。」
やっぱり知っているのか。だが、どう思うかと聞こうとして躊躇われた。今聞いて、かっこいいよね、と返されたとしても、どこまで本気だと捉えればいいのか分からないからだ。
「岳斗君、優しいお兄さんがいていいね。」
萌は、意外な事を言った。かっこいいお兄さんではなく、優しいお兄さんと言ったのだ。それで、岳斗はすっかり萌に心を奪われてしまった。萌なら、海斗に持って行かれずにつき合えるのではないか。自分の事を好きかどうかなど、すっ飛ばして舞い上がってしまったのである。
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