怒涛のソロ活(末っ子4)

夏目碧央

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やらせだったのか

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 「レイジ、実はさ……明日早いし、今回肌を出しての撮影もあるし、その……」
お風呂から出てきたテツヤ兄さんが、上目遣いに俺を見ている。
「分かった。じゃあ、キスだけにするから。おいで。」
先に風呂から出て、ベッドに座っていた俺は、テツヤ兄さんを手招きした。テツヤ兄さんはダブダブのパジャマを着て、トコトコとやってきた。そして、俺に寄りかかって座った。
「ごめん。電話では言い出せなくて。」
テツヤ兄さんがそう言って、俺の膝をぺしぺしした。俺はテツヤ兄さんの腰のあたりに腕を回し、後ろからギュッとした。
「いいよ。こうやって抱くだけでも。」
耳元で囁く。
「俺も、行く前にレイジに会いたかったからさ。」
テツヤ兄さんはそう言うと、体を捻って俺の顔を見た。
「レイジ、浮気するなよ。」
それはこっちのセリフだと言いたかったが、言う代わりにキスをした。ずっとこうしていたいくらい、とろけるような幸せな時間だった。でも、
「キスだけじゃ済まないだろ?」
いたずらっぽく笑ったテツヤ兄さんが、急にそう言って、
「してやるから。安心しなさい。」
口元を指さして、そう言った。え、うそでしょ。いや、本当みたいだ。テツヤ兄さんはゴソゴソと俺のパジャマズボンの中から俺のイチモツを取り出しにかかる。そして、その美しい顔の、美しいお口で、俺の……意識が……あっ。
「だから早いよ。」
やっぱり笑われた。でも、し・あ・わ・せ。

 テツヤ兄さんに抱き枕にされつつ、ベッドに横たわる。長年続けてきた、俺の特権。でも……。
「ねえ、あの誠会のコンテンツだけどさ。」
俺はボソボソっと言い出した。
「ん?」
「あのコンテンツを観ると、なんかこう、誠会の人達がテツヤ兄さんにベタベタするって言うか、甘いって言うか……。いつもそうなの?」
偉いぞ俺。頑張って聞けたぞ。
「あー、あれね。あのコンテンツにはざっくりとしたシナリオって言うか、演出があってさ。割と細かく要望が出されてたんだよ。普通に仲良しな俺たちだけど、視聴者が喜ぶように、こういう風に仲良くしてっていう注文がつくというか。」
テツヤ兄さんが言った。
「そうなの?じゃあ、テツヤ兄さんがジュンさんを抱き枕にして寝たり、ケイタさんがテツヤ兄さんを抱きしめたり、みんながテツヤ兄さんの事をイケメンだと話したり……。」
「そうそう、それ全部わざとっていうか、注文通りにやった事だよ。まあ、今まで仲良しでも旅行はした事なかったから、普段と違うのかどうか、なんとも言えないけどな。」
テツヤ兄さんが笑って言った。そうだったのか。
「でも、とても演技のようには見えなかったけどな。」
俺が言うと、
「何せ、皆さん超一流の俳優さんたちだからね。俺はただ、兄さんたちに合わせてへらへらしてただけだよ。」
そうだった、彼らは超売れっ子の俳優さんだ。演技っぽく見せないで演技をする事など造作もない事!それを真に受けて、俺は本気で嫉妬して。笑ってしまう。何が敵だよ。
「あははは。」
俺が急に笑い出したので、テツヤ兄さんはギョッとして俺を放した。
「どうした?」
「ううん、何でもない。そっか、俳優さんだったね。あははは。」
俺が笑っていると、
「あ、もしやお前、誠会の兄さんたちにやきもち焼いたな?」
テツヤ兄さんがそう言って、また俺に抱き着いた。う、図星。でも言いたくない。
「いや、別に。」
うそぶく俺。
「ほんとか?ほれ、正直に言いなさい。ほれ。」
テツヤ兄さんが俺の脇腹をつつく。俺はさらに笑う。
「あははは、やめてよ。やめてって。あははは。」
「ま、いっか。」
テツヤ兄さんはそう言うと、また俺をぎゅっと抱きしめて顔を俺の胸にうずめた。そして、静かな寝息が聞こえてきた。
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