8 / 30
血のにじむような努力
しおりを挟む
戸田は爪が割れても、絆創膏を貼りながら毎日練習をしていた。女子マネたちが絆創膏の張り替えなどを率先してやってくれるので、僕はそれ以来戸田の指に絆創膏を貼ることもなかった。
時は流れ、いよいよ選抜予選が始まった。ベンチ入りの規制も甲子園大会と地区大会とでは違うのだが、監督の一言で、ベンチ入り出来るマネージャーは僕1人という事になった。花梨ちゃんも綾乃ちゃんも、スコアがつけられないから、無理にベンチ入りしたいとは思わないみたいだった。
戸田はみんなよりも遅くまで投げ込んでいた。それは、ずっと続いていた。やっと思い通りの変化球が投げられるようになったようだった。
公式戦の前日、明日は朝が早いので、女子マネたちもとっとと帰っていた。僕は明日持って行く物を確認し、最後に部室を閉めようと見回っていた。すると、戸田はまだ投げていた。
「戸田、明日早いから、もう帰った方がいいんじゃないか。」
僕が声をかけると、戸田はこっちを向いた。珍しい。いつもは無視して投げ続けるのに。
「ああ、そうだな。・・・悪いけど、絆創膏一つくれないか。」
珍しい。戸田の方から僕に何か言ってくるなんて。
え?絆創膏?また爪が割れた?戸田がこちらへ歩いてくる。手を見つめながら。
「どれ?」
僕が戸田の手をのぞき込むと、手には豆が出来ていて、それがつぶれて血がにじんでいた。また血が・・・。血のにじむような努力とはよく言ったものだ。本当に努力を続けていると血がにじむのだな。僕は血のにじむような努力なんてしたことがなかったよ。今更ながら、自分が一軍に行けなかった理由が分かった気がした。そして、戸田を始め、一軍にいる選手のすごさが分かったのだった。
「はい、手出して。」
僕は消毒液で戸田の手の豆を消毒した。戸田が
「っつ。」
と小さく言って、顔をしかめる。ティッシュで軽く拭き取って、絆創膏を貼った。
「サンキュ。」
そう、戸田が言った。
「え?」
思わず聞き返してしまった。だって、戸田にお礼とか、言われたこと無かったし、言われるなんて思ってなかったし。
聞き返されても、また言うでもなく、戸田は僕の顔を見た。
うわ、至近距離で目が合うとか、初めて・・・かも。こいつ、目が・・・かっこいいんだな。
何を、何を考えたんだよ、僕は。びっくりした。かぶりを振って目線を外す。
「さ、帰ろっ。」
バタバタと救急箱を片付け、それも明日持って行くので鞄に入れた。
「・・・ずいぶん大きな荷物だな。分担しなかったのか?」
また珍しく、戸田が僕に話しかけてるよ。
「僕は男だからね。これくらい平気だよ。」
僕がそう言って、大きな鞄を担ぐと、戸田はくくっと笑った。
「あー、笑うかぁ?」
だが、それ以上戸田は何も言わず、歩いて行ってしまった。何だよ、もう。
時は流れ、いよいよ選抜予選が始まった。ベンチ入りの規制も甲子園大会と地区大会とでは違うのだが、監督の一言で、ベンチ入り出来るマネージャーは僕1人という事になった。花梨ちゃんも綾乃ちゃんも、スコアがつけられないから、無理にベンチ入りしたいとは思わないみたいだった。
戸田はみんなよりも遅くまで投げ込んでいた。それは、ずっと続いていた。やっと思い通りの変化球が投げられるようになったようだった。
公式戦の前日、明日は朝が早いので、女子マネたちもとっとと帰っていた。僕は明日持って行く物を確認し、最後に部室を閉めようと見回っていた。すると、戸田はまだ投げていた。
「戸田、明日早いから、もう帰った方がいいんじゃないか。」
僕が声をかけると、戸田はこっちを向いた。珍しい。いつもは無視して投げ続けるのに。
「ああ、そうだな。・・・悪いけど、絆創膏一つくれないか。」
珍しい。戸田の方から僕に何か言ってくるなんて。
え?絆創膏?また爪が割れた?戸田がこちらへ歩いてくる。手を見つめながら。
「どれ?」
僕が戸田の手をのぞき込むと、手には豆が出来ていて、それがつぶれて血がにじんでいた。また血が・・・。血のにじむような努力とはよく言ったものだ。本当に努力を続けていると血がにじむのだな。僕は血のにじむような努力なんてしたことがなかったよ。今更ながら、自分が一軍に行けなかった理由が分かった気がした。そして、戸田を始め、一軍にいる選手のすごさが分かったのだった。
「はい、手出して。」
僕は消毒液で戸田の手の豆を消毒した。戸田が
「っつ。」
と小さく言って、顔をしかめる。ティッシュで軽く拭き取って、絆創膏を貼った。
「サンキュ。」
そう、戸田が言った。
「え?」
思わず聞き返してしまった。だって、戸田にお礼とか、言われたこと無かったし、言われるなんて思ってなかったし。
聞き返されても、また言うでもなく、戸田は僕の顔を見た。
うわ、至近距離で目が合うとか、初めて・・・かも。こいつ、目が・・・かっこいいんだな。
何を、何を考えたんだよ、僕は。びっくりした。かぶりを振って目線を外す。
「さ、帰ろっ。」
バタバタと救急箱を片付け、それも明日持って行くので鞄に入れた。
「・・・ずいぶん大きな荷物だな。分担しなかったのか?」
また珍しく、戸田が僕に話しかけてるよ。
「僕は男だからね。これくらい平気だよ。」
僕がそう言って、大きな鞄を担ぐと、戸田はくくっと笑った。
「あー、笑うかぁ?」
だが、それ以上戸田は何も言わず、歩いて行ってしまった。何だよ、もう。
0
あなたにおすすめの小説
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
真面目学級委員がファッティ男子を徹底管理した結果⁉
小池 月
BL
☆ファッティ高校生男子<酒井俊>×几帳面しっかり者高校男子<風見凛太朗>のダイエットBL☆
晴青高校二年五組の風見凛太朗は、初めて任された学級委員の仕事を責任を持ってこなすために日々頑張っている。
そんなある日、ホームルームで「若者のメタボ」を注意喚起するプリントが配られた。するとクラス内に「これって酒井の事じゃん」と嘲笑が起きる。
クラスで一番のメタボ男子(ファッティ男子)である酒井俊は気にした風でもないが、これがイジメに発展するのではないかと心配する凛太朗は、彼のダイエットを手伝う決意をする。だが、どうやら酒井が太っているのには事情がありーー。
高校生活の貴重なひと時の中に、自分を変える出会いがある。輝く高校青春BL☆
青春BLカップ参加作品です!ぜひお読みくださいませ(^^♪
お気に入り登録・感想・イイネ・投票(BETボタンをポチ)などの応援をいただけると大変嬉しいです。
9/7番外編完結しました☆
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
高塚くんと森くん
うりぼう
BL
顔だけが取り柄の高塚くん。
ごくごく普通の高校生の森くん。
「好きなんだ、オレと付き合って」
「え、嫌だ」
そこから始まる二人のお話。
基本一話完結。
本編完結済み
随時小話更新予定です。
※BL
※受け大好き
※攻め半分変態
※R15というほどR15表現はありません
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら
たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生
海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。
そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…?
※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。
※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。
全寮制男子高校 短編集
天気
BL
全寮制男子高校 御影学園を舞台に
BL短編小説を書いていきます!
ストーリー重視のたまにシリアスありです。
苦手な方は避けてお読みください!
書きたい色んな設定にチャレンジしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる