地球を守れ-Save The Earth-

夏目碧央

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恨みを買う

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   アメリカには、自国第一主義者、白人至上主義者が一定数いる。そのような人
  達の間では、世界で言われている「地球温暖化」は、フェイクだと考えられるよ
  うになっていた。先進国に、二酸化炭素排出量を減らせと言ってくる、地球温暖
  化対策会議に反発しているのだ。よって、その地球温暖化対策を呼び掛けるSTE
  に対して、敵対心を抱くのは必然だった。
   また、STEは日本政府の立場に反して、核兵器廃絶をも訴えている。これも、
  彼らの目には、アメリカに対する挑戦と映った。

   STEは、結成から7年後、チャリティーコンサートのワールドツアーを行って
  いた。もう、全員成人し、大学も卒業した。このコンサートツアーは、核廃絶を
  訴えるツアーでもあった。したがって、「核兵器禁止条約」に批准した国のみで
  行う事にしていた。
   つまり、日本は批准していないので、日本でのコンサートはないのである。コ
  ンサートが行われるのは、アイルランド、オーストリア、ナイジェリア、南アフ
  リカ共和国、メキシコ、ウルグアイ、ベトナム、タイ、ニュージーランド、マレ
  ーシアだった。
   日本のフェローは悲しんだ。だが、STEを責めるわけには行かない。政府に、
  核禁条約に批准してくれ、と懇願するしかなかった。だが、そう簡単には行かな
  い。フェローたちの中には、タイやベトナム、マレーシアでのコンサートへ赴く
  人も少なくなかった。なので、あの日、STEメンバーがエレベーターごとさらわ
  れた日に、コンサート会場には、マレーシア人と共に、多くの日本人フェローた
  ちもいたのである。
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