ちょっとした小話

ラズ

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夜道は危険

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これは、遊んだ後の帰り道でのお話。

その日は私は友達とカラオケへ遊びに行き、帰りが遅くなりました。
カラオケの興奮が収まらないまま、二人で他愛ない話をしながらの帰り道…橋にさしかかった頃、私は変な音を聞きました。

ピチャ…ピチャン……
ペタペタ………

雨が降ったわけでもないのに、水音がして…明らかに靴とは違う足音もしました。
しかし、それは小さな音であまり聞こえなかったから空耳だと思いました。
そのまま歩いていると…

ピチャン…ピチャ……
ペタペタ……
カツ…カツ……

一つ、音が増えていました。
振り返って確認すれば真相はわかるはずなのに…その時の私は振り返れませんでした。
それに、音はしっかりと聞こえているのです。
友達の顔を見ても特に変わったことはありません。きっと気づいていないのでしょう。
私は友達と話しているのに、後ろが気になって仕方ありませんでした。

ピチャ…ピチャン……
ペタペタ……
カツ……カツ…カツ
ザッ…ザッ……

また、一つ音が増えました。
私は空気が重く、冷たくなるのを感じました。

「顔色悪いけど…大丈夫?」

友達がきいてきます。
しかし、うなずくことで精一杯で詳細は話せませんでした。
なぜなら、背後のナニカに知られたくない!と思っていたからです。
自然と歩調は早くなって、友達も小走りになりました。
私は背後のナニカから逃れたいだけだったけど、友達は具合悪いからだと思っているようでした。

ピチャン……ピチャ……
ペタペタ……
カツ………カツ…
ザッ……ザッ…
ニチャ……ニチャ………

また一つ音が増えて、泣きそうになりました。
粘性を帯びた音は道で聞くことはありません。

「大丈夫?そんなに具合悪いなら私の家による?」

友達は心配してそう言ってくれました。
私は頷き、友達の先導で家に向かいます。
その間にもさらに空気は重く、冷たくなっていきます。
得体の知れない気配を背後に感じながら、ようやく友達の家に着きました。

急いで扉を開けてもらい、中に入りました。
玄関に入って扉を閉めホッと一息ついた瞬間……

バンッ!バババンッ!!!

背後の扉が激しく叩かれました。
ビクッと体を揺らし、恐る恐る背後を見ると…

大小様々な赤い手形がびっしり扉の磨りガラスにつき、その隙間から複数の人影が見えました。
たまらず二人で悲鳴をあげ、抱き合ってしまいました。
その日は、夜に友達の家を出るなんて考えられなくて…友達の家に泊めてもらいました。

次の日…二人で玄関に出るとそこだけびちゃびちゃに濡れていて、泥までありました。
手形を洗い流している時…

「あと少しだったのに…」

耳元で少年の声が聞こえて…私は悲鳴を堪えつつ冷や汗を流しました。しかし、泣きそうでした。

それ以来、川が苦手です。
今度こそ捕まってしまうのではないか…。
そう、考えてしまうのです。
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