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出会いました
一通の手紙
しおりを挟む「はぁああっ?!」
おはようございます。マイアです。
朝から大きな声で起こされてしまいました。おそらく、声の主は私の母でしょう。朝から元気なことです。
続いてドタドタと誰かの足音がしました。いえ、誰かではなく父ですね。別の人だったら怖いです。
ここには両親と私の3人しか住んでいないのですから。
母が大声で父に何か言っているようですが、私はゆっくりと身なりを整えることにした。
どこにでもあるブラウンの髪にブラウンの瞳。肌が透けるように白いわけでもなければ、グラマーでもありません。普通の女の子です。少し手を加えたところでそこまで変化はありません。
ですが、女性であるなら身なりをきちんとするのは当たり前ですよね。 父のとばっちりを受けたくないわけではないんですよ?朝から耳をイカれさせたくないとか、決して思ってませんからね?
母の声が沈静化した頃、私の身なりも整ったので母の元へ行きました。
「おはようございます。お母さん、お父さん。大きな声を出していましたが、どうかしたんですか?」
「マイアーー!!」
いきなり母に抱きつかれましたが、状況がさっぱりわかりません。
父の方を見るけど、母の声で耳がイカれてそれどころではようです。
とりあえず、抱きついてきた母の背中を撫でて落ち着いてもらうことにしました。力いっぱい抱きついているようで骨がミシミシいっている気がします。かなり痛いです。
だんだん落ち着いてきたのか力を抜く母。そして、一通の手紙を渡してきました。それは遠いところに住む祖母からの手紙でした。
『マイアへ
元気に過ごしているかい?風邪なんかひいてないだろうね。
あたしは元気にやってるって言いたいところなんだけど…
ちょっと困ったことになったんだよ。
先日うっかり転んで足の骨を折っちまった。
元気ではあるけど不自由で仕方なくてね。
悪いんだけど、手伝いに来て欲しんだよ。
外れに住んでいるから知り合いも少なくて人手が足りないのさ。
遠くまで出てくることになるけど、頼んだよ。
PS.ミーナには娘は預かったって伝えといとくれ
ヴィネラより』
(お祖母さん…まるで人攫いのような伝言ですね。しかも、まだ行っていないのに預かった…って)
ミーナは母の名でヴィネラは祖母の名だ。ちなみに、父はアルスという。
一通り手紙を読んだのを見計らってから、母はがしりと肩を掴んだ。
(肩が痛いです。力加減…)
母は若干涙目な私の視線に気づくことなく、大きな声でこう言った。
「マイア!あんな性悪のとこなんか行くことない!手紙は来なかったと無視しちまいな!」
耳がきーんとします。父のように使えなくなりそうです。
私がフリーズしても母の口は止まりません。
「だいたい、殺しても死なないような奴が骨折くらいで不自由になるもんかい。おおかた、骨折を理由にエレナをこき使いたいだけだろうさ」
母は祖母を性悪と言っていますが、祖母は元気で優しいのです。
しかし、母と祖母の仲はかなり悪く顔を合わせたら、必ず止まらない口喧嘩になります。
以前、父が二人仲裁に入ろうとしたら激しいとばっちりを受けていました。
私はそれを見てから手を出さない事にしてます。
だって、か弱いですから!
母はとにかく嫌っている祖母の元へ私を送りたくないのでしょう。
「お母さん。お祖母さんが困っているなら、私は行きますよ」
そもそも、私は祖母を嫌っていません。むしろ長く生きている分、いろんな事を知っている祖母を尊敬しています。
私は母が何故祖母を嫌っているのかわかりません。
母は私の言葉に顔を歪めます。
どうしても行って欲しくないようです。
だけど、私だって譲れません。
「マイア。行っておいで」
そう言ったのは、父でした。
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