魔王軍を追放されたから人間側につくことにした

人羊ゲーム

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な、なんだ!?このじじい……!!

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「……」
「……」

俺もイリスも沈黙を守る。
なにを話せば良いのか分からない。

「そうだ、イリス以外の町の住人の様子を見に行こう!」

俺は提案した。
イリスの御両親がいるのなら是非とも挨拶をせねば。

「そっ、そうでしたっ!他のみんなは無事だったでしょうか?」

イリスは慌てる。

「いや、まあ大丈夫だと思うけどね。さっき溶解した金属で倒し損ねた奴等がどこかに消えてるけど、今頃は身動きが出来なくなってるだろうから」

そう、俺は倒し損ねた奴等にも魔法を発動していた。
植物魔法プラント・マジック樹木監獄ウッド・シェルは発動して直ぐには気付かない。動けば動くほど蒔かれた種が成長し身動きを取れなくする。
盗賊のリーダーは距離が有ったから氷結魔法で対処したけれども、大人数を相手にする場合は基本的に植物魔法を俺は選ぶと思う。
思うって言うのは、今までは魔族を相手にした戦いで遠慮せずに破壊魔法を乱発していたからだ。

「みんなの様子を見てきます!」

イリスは町の住人を探しに行く。

「健気だなぁ」

俺もイリスの後を追う。



結論から言うと、全員生きていた。
負傷者がいたから無事だったとは言い難いが、治療すれば回復する範囲の状態だ。

「本当にありがとうございますっ!ソウタさまのおかげです!」

イリスは俺に頭を下げる。
本当は抱き付いて欲しかったけれど、町の住人の目もあるから仕方がない。

「本当に何とお礼を申し上げれば良いのやら。ソウタさま、我々ジャムナの町の住人になんでもお申し付け下さい。
この恩はどれだけ時が経とうとも返しきれません。しかしジャムナの町が続く限り、ソウタさまへの恩返しをさせていただきます」

ジャムナの町の町長が俺に頭を下げる。町長は白髪頭のじいさんだ。
抱き付かれなくて良かった。
それにしても心に響かない。
ゲームだったら確実にテキストをスキップしてるね。
というか、ジャムナの町が続く限り恩返しをするってのは要するに俺に対していつまでも町を守り続けろと暗に示唆しているのではないだろうか。
まあ、別に良いけど。
それにしてもジャムナって言う名前の町だったのか。

「そう言えば、なにか食べ物は有るか?」

魔族の領域で暮らしていた時には食欲を削ぐ連中が蔓延っていたから小食だったが、人間の中にいると食欲が湧いてくる。

「はい、それでしたらジャムナの町で一番の料理人に食事を用意させます」

町長が答えた。

「あ、あの……」

イリスが遠慮がちに声を発する。
町長は無視しようとしていたが、俺がイリスをじっと見詰めている事に気付き対応を変えた。

「どうしたんじゃ?イリス」

町長はイリスに訊ねる。
この辺りはさすが年寄りと言ったところか。
亀の甲より年の功。処世術に長けている。

「わ、わたしがソウタさまの食事を調理してもよろしいでしょうか……?」

なんて健気なんだ!よろしいに決まってるじゃないですかぁ!!

「駄目に決まっておろう!!」

町長がイリスを叱責する。
な、なんだ!?このじじい……!!

「少しは場の空気というものを読め!ソウタさまはジャムナの町の救世主であらせられる御方だぞ!町一番の料理人にソウタさまの食事を用意させるのは自明の理!慎みなさい!」

な、なんだ!?このじじい……!!
空気を読むのはお前だよ!慎むのもお前だよ!
とは言え実際にそれを口には出来ない。
俺はイリスの手料理が食べたい。すごく食べたい。
出来ればイリスに食べさせて欲しい。
でもそれは言えない。なんか恥ずかしいから。
人間の中にいる事で俺も見栄や外聞を気にする心を早くも取り戻しだした。
こうして考えると、魔族や盗賊の相手をする方が俺にとっては楽だったんだな。

「は、はい……申し訳ありません……」

町長の言葉にイリスはうつむいて気を落とす。
違うんだってぇ!俺はイリスの手料理が食べたいんだって!
元気を出してよイリス!



結局、俺は町長の家で町一番の料理人からご馳走を振る舞われていた。
確かに美味い。
魔王城で飼いならされていた料理人は俺一人と自分自身にしか料理を作らなかったし、食材も乏しかった。
しかしジャムナの町は辺境に位置するとはいえ一定以上の人数が生活しているだけあって食材が豊富だし、調理の幅も広い。
俺は料理を堪能する。
不満が有るとすれば町長が俺の様子を間近で観察していることだ。
まあ良い。
せっかくだから聞きたいことを聞くとしよう。

「聞かせて貰いたい事が有るんだが」
「はい、なんでしょうか?なんなりとお聞きください」
「イリスの……あの娘の両親はどこにいる?」

 俺はずっとイリスの両親が気がかりだった。
 町の住人の安否を確かめた時にも「イリスの両親は無事だったか?」と聞いたが困ったような顔で、はぐらかされてしまった。
 死人は出ていないから生きているのは間違いないが。
 怪我をしていたら俺が負い目を感じると考えたのだろうか?

「いえ、イリスには両親がおりません。あの子は戦災孤児ですので」

 町長はあっけらかんと言う。

「えっ、そうなのか?」

 生きていなかったのか!?
 魔族統一戦争で命の重さなどすっかり忘れていたが、人間の中に少しでもいるとショックの度合いが違ってくる。

「はい。ですのでイリスの両親についての心配は無用です」

 な、なんだ……!?このじじい……!!

「随分と冷たい言い草だな。そのような態度ではイリスが疎外感を抱くのでは無いか?」

 俺は町長の態度を暗に批判する。
 さっきみたいな態度の事だぞ!

「いえいえ、そのようなことはありません」

 町長は全く悪びれる事無く断言した。
 な、なんだ……!?このじじい……!!

「ジャムナの町の住人のほとんどが戦災孤児ですので」
「えっ!?」

 おれは驚く。

「ほっ、本当か?」
「はい、私も元はと言えば戦災孤児でしたので。町の住人たちとの絆のようなものは確かに感じております」
「そっ、そうか。それでジャムナの町の防衛を暗に求めてきたのだな。ジャムナの町は戦災孤児たちにとっての唯一の希望というわけか」
「いえ、そのような事も有りません。そもそもジャムナの町の歴史は非常に浅いものでして、この地に小屋を建てて若い時分から隠居同然の暮らしをしていました私が戦災孤児を一人、また一人と拾い育てていく内に気がつけば一つの町になっていたという程度のものでして。
 ですからこの町自体には価値は無いのですが、ここで生まれ育った子たちにとっては曲がりなりにも故郷らしきものらしくて……」
  
 町長は白髪頭をポリポリとかく。
 な、なんだ……!?このじじい……!!
 良い人じゃん!
 誤解してましたよ!
 

 俺は食事を終えた後、寝室に通された。
 当然だが寝室には俺一人だけだ。
 夜の帳はまだ下り始めたばかりで、俺は手持ち無沙汰でいる。

「あ、あの、よろしいでしょうか?ソウタさま……」

 イリスの声がした。
 俺は一瞬焦ったがすぐに心を落ち着かせてドアの向こうに返事をする。

「ああ、構わんぞ」
「失礼いたします」

 そういってイリスは窓から入ってきた。

「うおっ!!」

 俺は驚いて声を上げる。

「ど、どうかなさいましたか?」
 
 イリスが俺に訪ねた。

「い、いや、窓から入ってきたから少し驚いただけだ」
「も、申し訳ありません……。礼儀作法が身についていなくて……」

 イリスはうつむき赤くなる。

「いや、良いんじゃないか?おてんばで」
 
 俺はなんとかフォローした。

「それで、俺に何か用か?」
「は、はい、実は……ソウタさまにわたしの手料理を食べていただきたくて……」


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