131 / 132
隼人と百合
1
しおりを挟む「……まぁ、人間だもん。色んな感情があるよね。」
「…………」
「……こんな話を続けてたらこんなに美味しいアイスティーを飲み干しちゃいそうだし、少し話題を変えよっか。」
俺がそう言うとこの女はどこか安心した顔をしてやっと俺の方を向いた。
「……私が、隼人さんとお話に来た理由についてお話したいです。」
「……うん。」
「本当は……今、病院を抜け出してて…あともう少しで……帰らないとなんですけど……姉の…遥奈は……元気にしていますか、?」
(……ん???)
「分かんないな……暫く会っていないから。廣瀬の様子が悪化したこともさっきまで知らなかったからさ。」
「……そうですか、」
「直接会わないの?」
「……見せる顔がありません………」
(……そうだよな、)
遥奈ちゃんは百合さんの全てを知った上で廣瀬を憎んでる。
だけど、
「遥奈ちゃんは君に会えたら嬉しいと思うよ。」
「…………」
「……百合さんは何も覚えていないと思うけど、遥奈ちゃんは君のために頑張っていた。」
「………でも、それは私のせいで」
「それならさ、頑張った遥奈ちゃんにお礼を言うべきなんじゃないの?」
喰いつけ。
ここでこの女が遥奈ちゃんに会いたいって思えば俺は合理的に遥奈ちゃんに近づける。
(彼女と、お話がしたい。)
「………少し、考えさせてください。」
(……………)
「そうだよね、俺に会いに来てくれるだけでもきっと頑張ってくれたのに、ごめんね。」
女に分からないように爽やかな笑みを浮かべる。
本当は、イライラして仕方が無い。
「最後に、監禁されていたこと…梶原と話したこと覚えている?」
「………よく、覚えていません……」
「……そっか。大丈夫だよ。……また、明日会えそうかな?」
「……はい。」
「わかった、楽しみにしてるね。」
俺はアイスティーを飲み干して先に病院内のカフェを出た。
少し駆け足で梶原の病室へ向かう。
梶原が、まだぐっすり眠っている。
(……安心する。)
良かった。
あの女に、梶原への好意がなくて良かった。
10
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
世界で一番優しいKNEELをあなたに
珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。
Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。
抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。
しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。
※Dom/Subユニバース独自設定有り
※やんわりモブレ有り
※Usual✕Sub
※ダイナミクスの変異あり
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
【花言葉】
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!
【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。
◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス
不器用な僕とご主人様の約束
いち
BL
敬語のクラブオーナー×年下のやんちゃっ子。遊んでばかりいるSubの雪はある日ナイトクラブでDomの華藍を知ります。ちょっと暑くなってくる前に出会った二人の短編です。
🍸カンパリオレンジのカクテル言葉は初恋だそうです。素敵ですね。
※pixivにも同様の作品を掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる