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冷静でいられない
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しおりを挟む「ごめんね、部屋を出る。」
彼はそう言ってまた部屋を出た
“行かないで”、って止めたかったけど……変に我儘を言って彼に嫌われたくない。
「………………………………」
退屈だ。
彼がいない部屋はこんなに広い。
遊ぶもの…………女の子のおままごとセット、うさぎのぬいぐるみ。
「ゆうと…………、」
俺はぬいぐるみを抱きしめた
(フワフワしてて柔らかい……)
それに……いい匂いもする
(懐かしい………昔、麻耶が俺にくれた果実と同じ………)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『ふう!!来て!ふうに食べて欲しいフルーツがあるの!!』
「フルーツ??いちごー?」
『いいえ!もっといいもの!!ゆうとが来る前にはやく!!!』
麻耶に急かされて俺は走って麻耶の部屋へ向かう
麻耶が指すテーブルの上にはブルーベリーのような小さな実が置いてある。
麻耶が『食べて!』と俺に言う。
「なに?この小さい赤色のやつ……きもっ!」
『そんなこと言わないで!!クワの実なの!!』
「クワ……?やだ!たべたくないー!絶対不味いじゃん!!」
俺がそう言うと麻耶は顔色を変えた。
『…………わたしと一緒に食べればいいのよ。』
「まやちゃんと………?」
『はやく一緒に食べよっ!』
そうだ、
その時の麻耶の顔は少し照れたような顔で、何かを企んでいそうな………悪魔のような微笑みだった。
「っ………!すっぱ……いけどおいしい!!」
『………わたしも幸せかも………』
何か組み合わない話になっているけど俺はクワの実…?の美味しさに度肝を抜いてたくさん食べた。
(ジャムのような……甘酸っぱくてパンにもヨーグルトとにも合いそう……すごく美味しい!!)
「ふーくん…………?」
「あっ!ゆうと!!!」
少し呼吸が乱れた雄斗が部屋に入ってきた
(走ってきたのかな………?)
「口の周り真っ赤だよ。どうしたの?」
(口のまわり………?)
あっ、クワの実食べたからだ!
雄斗はやれやれと言わんばかりにハンカチを取り出して俺の口元を拭こうとした
『ふうに触らないで!!!!!』
「っ!!」
急に麻耶が大声をあげた
『ふうに近寄らないでよ!!!!私だけのふうなんだから!!!』
麻耶が普段俺に向ける優しい視線とは全然違う、怒った野獣のような目を雄斗に向けている。
「…………麻耶だけのふーくんじゃない。それよりもなんで2人だけで………ふーくんの口元が赤いの?」
『なんでもいいでしょ!!!どっか行ってよ!!』
「ま、まってよ麻耶ちゃん………、」
あまりにも麻耶ちゃんが声を上げるものだから少し怖くなって、………
俺は2人の仲介に入ることにした。
「ゆうと、この赤いのはね、クワを食べたからかだよ。それと、」
「クワ?」
「え、うん……クワだけど、……」
“ふーん”と吐き笑うように雄斗は麻耶のほうをじっと見つめる
(もしかしてクワって毒なのかな……、)
おれ、死なないよね??
「麻耶。おまえ花言葉とか信じるんだな。」
「………………………。」
はなことば………?
毒じゃないってこと………?
「ゆうと……このフルーツって、毒じゃないよね………?」
俺がそう聞くと雄斗は麻耶に対して嘲笑うかのような声で俺に言う
「うん。毒じゃないよ。……………クワの花言葉は毒みたいな意味だけどね。」
「…?どういう意味……?」
「クワはね……………」
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
あれ、どういう意味だっけ
思い出せない
“貴方が好き”とかそういう甘いものじゃない
なんか、”死”に関する意味だったような………
“ガチャッ”
「っ!」
扉が開く音が聞こえた
部屋を出てまだ少ししか経ってないけど彼が帰ってきた!!
(そうだ!クワの花言葉の意味も聞いてみよう!!)
「ごしゅじんさまっ………………、」
「ご主人様とか言い出すようになったんですね。」
あ、
あの女だ
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