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お八重
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江戸までは八重の足でも片道最低でも六日はかかる。
かといって旅籠に寄っている暇はない。途中は野宿か木賃宿で間借りするしかないだろう。
身軽にしたいところだが、ある程度は食料も持っていかなければならないのが難しいところだった。
八重は少し考えて味噌を塗った握り飯を焼いて持っていくことにした。
その方が少しでも長持ちすると考えたのだ。
「あとは、竹筒に水を入れていくか」
独り言ちて、八重が用意していると、なぎとまさがやってきた。
「お八重、今の勝吉への言葉、どういう意味だい? まるでもう戻って来れないみたいな言い方はやめておくれ」
「そうよ、姉様。戻ってこれない可能性があるはほど危険なら、やめればいいじゃない?」
八重は手を止めた。
「別にそこまで深く考えたわけじゃない。ただな、そもそも飛脚稼業はいつまでもできる仕事じゃない。いずれは私やおなぎだってここを出ていくことになるんだ」
「だからって、今生の別れみたいな言い方しなくてもいいじゃない!」
なぎが声を高くしたが、八重は気にすることなく続けた。
「それに、こいつは私の勘だが、もしかしたら飛脚なんていう稼業そのものがこの先なくなるかもしれない」
「どういうこと? それじゃ、誰が手紙を運ぶのさ」
「それは分からないけど、一つ言えるのは、この先とんでもない世の中が待ってるんじゃないかってことだ」
なぎとまさは黙っていた。
八重の言いたいことが何となく分かったからだ。
八重は顔を上げた。
「ただ、どれだけ時代が変わっても生き残るつもりだ」
その顔はやけに晴れ晴れしていた。
その顔を見て、まさもなぎもそれ以上、八重を止めることはしなかった。
それからすぐ、八重は街道へと走り出していった。
その背中が見えなくなるまで見送っていた勝吉がぽつりと言った。
「絶対、待ってますから」
まさがその背中をぱんと叩いた。
「勝吉、あんただけじゃないよ。私だって、ずっと待ってるつもりだよ」
「私も姉様の帰りは待ってます」
なぎはひときわ大きな声でそう言うと、何度も頷いた。
かといって旅籠に寄っている暇はない。途中は野宿か木賃宿で間借りするしかないだろう。
身軽にしたいところだが、ある程度は食料も持っていかなければならないのが難しいところだった。
八重は少し考えて味噌を塗った握り飯を焼いて持っていくことにした。
その方が少しでも長持ちすると考えたのだ。
「あとは、竹筒に水を入れていくか」
独り言ちて、八重が用意していると、なぎとまさがやってきた。
「お八重、今の勝吉への言葉、どういう意味だい? まるでもう戻って来れないみたいな言い方はやめておくれ」
「そうよ、姉様。戻ってこれない可能性があるはほど危険なら、やめればいいじゃない?」
八重は手を止めた。
「別にそこまで深く考えたわけじゃない。ただな、そもそも飛脚稼業はいつまでもできる仕事じゃない。いずれは私やおなぎだってここを出ていくことになるんだ」
「だからって、今生の別れみたいな言い方しなくてもいいじゃない!」
なぎが声を高くしたが、八重は気にすることなく続けた。
「それに、こいつは私の勘だが、もしかしたら飛脚なんていう稼業そのものがこの先なくなるかもしれない」
「どういうこと? それじゃ、誰が手紙を運ぶのさ」
「それは分からないけど、一つ言えるのは、この先とんでもない世の中が待ってるんじゃないかってことだ」
なぎとまさは黙っていた。
八重の言いたいことが何となく分かったからだ。
八重は顔を上げた。
「ただ、どれだけ時代が変わっても生き残るつもりだ」
その顔はやけに晴れ晴れしていた。
その顔を見て、まさもなぎもそれ以上、八重を止めることはしなかった。
それからすぐ、八重は街道へと走り出していった。
その背中が見えなくなるまで見送っていた勝吉がぽつりと言った。
「絶対、待ってますから」
まさがその背中をぱんと叩いた。
「勝吉、あんただけじゃないよ。私だって、ずっと待ってるつもりだよ」
「私も姉様の帰りは待ってます」
なぎはひときわ大きな声でそう言うと、何度も頷いた。
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