女飛脚、風の如く

white love it

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江戸へ

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 松苗藩の領地を出て、すでに五日。
 天気にも恵まれ、ここまでは快調に飛ばしてこられた。
 途中、すれ違った旅人は、八重の姿を見て目を丸くした。
 なにせ抜けるように白い肌に唇に差した紅が映え、どこか儚げな目元の美女が、つややかな髪を乱れさせ、着物の裾をかたぐり上げ、たすき掛けをして、飛脚箱を担いでいるのだ。
 しかもその足の速さときたら、行き交う人々が、目を丸くして見直そうと思った時には、もうあっという間に通りすぎているのだ。
 一方、八重は周りの人々にはほとんど注意していなかった。
 もし何か揉め事が起こるなら、藩を出る前後かと思っていたが、結局何もなかった。
 夜は野宿や寺の本堂を借りて一人で寝泊まりしていたが、特に追い剥ぎに襲われることもなかった。
 宿を避けたのは、斬り合いに巻き込まれた時、他の客たちに迷惑をかけたくなかったからだった。
 ただ道中、親子連れにすれ違った時だけ、八重はその様子を目で追った。
 子供はまだ十才程度。もしかしたら講参りにでも行くのだろうか。
 あるいは、願掛けにでも赴くのかもしれない。
 ふと八重は両親の事を思い出した。
 八重となぎの父親は松苗藩とは別の藩の武士だった。
 六年前のある日、突然、家に押し込み強盗が入り、両親や中間たちは皆殺された。
 しかもなぜか親戚筋や、知人友人は突然口をつぐんでしまったのだ。
 それだけでなく、残った八重たちの周りでも不審な出来事が起こるようになった。
 嫌な予感がした八重は妹のなぎを連れて、誰も知り合いがいない松苗藩までやってきたのだった。
 丸戸屋は居心地がいい。
 だがその居心地のよさがずっと続くとも思えなかった。
 八重は自然と足に力が入るのを感じた。
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