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「そもそも、なぜ私があそこをイタリアンレストランからお好み焼き屋に改造したんだと思う?」
お母さんの問いかけに私は首を傾げた。
「イタリアン料理じゃお客さんを呼べないから?」
お母さんは笑った。
「あら、私、スパゲッティ好きよ。お客さんだって好きな人は多いと思うわ。もっと現実的な理由」
「現実的? あ、ひょっとして手間がかからないから?」
「正解。焼肉屋さんとお好み焼き屋さんは、お客さんが自分で料理するスタイルだから、お店側で料理する必要がないのよね」
考えてみれば、父がオーナー兼シェフをしているときは他にも店員がいたはずだ。案内役やら、代わりのシェフやら。それが今はお母さん一人。だからこそ一人でもお店を回せるということか。
そういう発想はなかったので、私は少し目から鱗の思いだった。
「それからうちは現金決済は一切なしなの」
「え、なんで?」
「会計の手間がもったいないからっていうのと、あとは防犯のため」
なるほど。確かに女一人のお店で現金を置くのは危険すぎるかもしれない。
「でもそれじゃあ、来れるお客さんが限られるんじゃない?」
キャッシュレス決済というと、若い人が多いというイメージがあるのだ。
「あら、そんなことないわよ。クレジットカード使う中高年の方もけっこういるし」
どうやら、お母さんは人件費や手間を減らすという点ではかなり成功している様子だった。
ただそれでも立地条件の悪さは如何ともし難いはずだ。駐車場が近くにない上に、駅や人通りのある交通路からも離れている。
だがお母さんは、そんな私の心を見透かしたかのように口を開いた。
「実はあの場所って、考えようによっては悪くないのよね」
「どういうこと?」
「確かに駐車場はないし、人通りも少ないわ。でもそれって裏を返せば、車の運転をするお客さんは確実に来ないとも言えるでしょ?」
「うん、まあ……」
「だとすれば遠慮なくお酒をすすめられるじゃない? イタリアンレストランじゃ出せるお酒もワインくらいだけど、お好み焼き屋さんならビール、焼酎、カクテルと幅は広がるものね。実は今お好み焼きよりお酒のほうが、売り上げのメインを占めてるの。開店時間を午後の3時~9時にしたのも、夕食、もしくは夜食限定のほうが効率よくお酒を捌けるからなの」
お酒。確かにお好み焼きのほうが、スパゲッティより相性はいいだろう。高校生の私にも、なんとなくそこは理解できる。
しかし根本的に人が来にくいという点はやはり不利なはず。
「でも、あそこってちょっと主要道路から外れてるでしょ? 駅からも離れてるし。それでお客さんを呼べるの?」
「なにも近くの人だけじゃないでしょ? ターゲットは」
そういうと、お母さんはスマホからある動画を見せた。
「わざわざ操ちゃんには教えなかったんだけどね」
動画内では、お母さんがお好み焼きの美味しい作り方を実演していた。撮りっぱなしではなく、こまめにカットが入るので、見やすく、そして聞きやすい動画だった。お好み焼きそのものだけでなく、美味しいソースの作り方も教えているのはポイントが高いだろう。
だがそれだけではない。画面に映っているお母さんは、いつものお母さんとはなにかが違う。というより、いつもよりもさらに可愛く映っているのだ。決していやらしい感じでもなければ、派手なわけでも男性に媚びているわけでもない。ただ白のスラックスに黒のエプロン、白く透きとおった肌、黒髪を無造作に結い上げた姿は同性から見ても可愛く清潔感があった。
「大変だったわよ。自分一人でこの動画を撮るのは。光の当たり方、化粧、言葉遣い、カメラの角度、編集、全部自分一人で考えたんだから。それこそ丸2日はかかったわ」
「そんなに?」
「そうよ。こういうのはね、カメラワークが大事なんだから。でもそのかいはあったわ」
お母さんの問いかけに私は首を傾げた。
「イタリアン料理じゃお客さんを呼べないから?」
お母さんは笑った。
「あら、私、スパゲッティ好きよ。お客さんだって好きな人は多いと思うわ。もっと現実的な理由」
「現実的? あ、ひょっとして手間がかからないから?」
「正解。焼肉屋さんとお好み焼き屋さんは、お客さんが自分で料理するスタイルだから、お店側で料理する必要がないのよね」
考えてみれば、父がオーナー兼シェフをしているときは他にも店員がいたはずだ。案内役やら、代わりのシェフやら。それが今はお母さん一人。だからこそ一人でもお店を回せるということか。
そういう発想はなかったので、私は少し目から鱗の思いだった。
「それからうちは現金決済は一切なしなの」
「え、なんで?」
「会計の手間がもったいないからっていうのと、あとは防犯のため」
なるほど。確かに女一人のお店で現金を置くのは危険すぎるかもしれない。
「でもそれじゃあ、来れるお客さんが限られるんじゃない?」
キャッシュレス決済というと、若い人が多いというイメージがあるのだ。
「あら、そんなことないわよ。クレジットカード使う中高年の方もけっこういるし」
どうやら、お母さんは人件費や手間を減らすという点ではかなり成功している様子だった。
ただそれでも立地条件の悪さは如何ともし難いはずだ。駐車場が近くにない上に、駅や人通りのある交通路からも離れている。
だがお母さんは、そんな私の心を見透かしたかのように口を開いた。
「実はあの場所って、考えようによっては悪くないのよね」
「どういうこと?」
「確かに駐車場はないし、人通りも少ないわ。でもそれって裏を返せば、車の運転をするお客さんは確実に来ないとも言えるでしょ?」
「うん、まあ……」
「だとすれば遠慮なくお酒をすすめられるじゃない? イタリアンレストランじゃ出せるお酒もワインくらいだけど、お好み焼き屋さんならビール、焼酎、カクテルと幅は広がるものね。実は今お好み焼きよりお酒のほうが、売り上げのメインを占めてるの。開店時間を午後の3時~9時にしたのも、夕食、もしくは夜食限定のほうが効率よくお酒を捌けるからなの」
お酒。確かにお好み焼きのほうが、スパゲッティより相性はいいだろう。高校生の私にも、なんとなくそこは理解できる。
しかし根本的に人が来にくいという点はやはり不利なはず。
「でも、あそこってちょっと主要道路から外れてるでしょ? 駅からも離れてるし。それでお客さんを呼べるの?」
「なにも近くの人だけじゃないでしょ? ターゲットは」
そういうと、お母さんはスマホからある動画を見せた。
「わざわざ操ちゃんには教えなかったんだけどね」
動画内では、お母さんがお好み焼きの美味しい作り方を実演していた。撮りっぱなしではなく、こまめにカットが入るので、見やすく、そして聞きやすい動画だった。お好み焼きそのものだけでなく、美味しいソースの作り方も教えているのはポイントが高いだろう。
だがそれだけではない。画面に映っているお母さんは、いつものお母さんとはなにかが違う。というより、いつもよりもさらに可愛く映っているのだ。決していやらしい感じでもなければ、派手なわけでも男性に媚びているわけでもない。ただ白のスラックスに黒のエプロン、白く透きとおった肌、黒髪を無造作に結い上げた姿は同性から見ても可愛く清潔感があった。
「大変だったわよ。自分一人でこの動画を撮るのは。光の当たり方、化粧、言葉遣い、カメラの角度、編集、全部自分一人で考えたんだから。それこそ丸2日はかかったわ」
「そんなに?」
「そうよ。こういうのはね、カメラワークが大事なんだから。でもそのかいはあったわ」
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