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第2章:飛び立て!てつお
第12.5話「思い出せ!」
しおりを挟む……チッ。俺は何をしてんだ一体。
ちっと頭を整理しとかねぇとな。
俺はメロンジ・カニモ。
去年ぐらいまでは王国騎兵隊隊長だった。
騎兵隊の予算を着服してたのがバレてクビになったんだ。
チャクフクってやつがイマイチピンとこねぇけど、まぁ部下の給料を宴会代に回してたのがまずかったんだろうな。
そんでタイオーの市民としては保証してもらってたから、呑気に酒場でも開こうと思ったんだ。
……何せ市民じゃなきゃ城壁の中に住めねぇからな。俺はまだラッキーだったぜ。
けどよ、商売ってのは思ってた百倍は面倒くせぇことだったなァ。
結局上手くいかなくて明日喰うにも困ってた。
そのせいで……あのデブの青ヒゲ、ポッポ・ゲラーカの奴とつるんだんだ。
やっちまったよ。これだったんだろうな。
俺の運命の歯車が狂ったのはよ。
騎兵隊をクビになった時じゃなかったんだ。
奴の金とコネを借りてからは、すぐに酒場は大繁盛だ。
けどそれからすぐだったな。
俺の店は貴族たちの賄賂やらピンハネやらのヤベェ金の洗い場になっていったんだ。
あいつらは安い酒を袋いっぱいの1,000カン金貨で買う。
そんで決まって言うんだ。
「余った金でその樽を一年買おう」
そしたら後は慣れたもんだ。
俺は金貨の一割ぐれぇ懐に入れて、残りをいつでも取り出せるようにしとく。
そんでそいつが店に来てその樽の酒を注文する度に、残りの金貨を小刻みに渡していくだけだ。
なるほどなァと思ったよ。
こうやって汚い金は宮中には残らなくなるんだ。
俺が見てきた宮殿内の世界なんざ、お日様の光が射すところだけだったわけだ。
可愛いもんだろ。
その内ポッポの奴は、マゴシカ帝国の流行りもんを仕入れてきた。
それにしてもマゴシカ帝国は進んでるぜ。マジで未来に生きてやがる。
見たこともねぇような飲み物が作られてやがる。
真っ黒で泡がパチパチ弾ける甘い飲み物だ。
向こうじゃ“コーラ”とか言うらしい。
他にも“ラムネ”やら“リポディ”やら訳の分からねぇ飲み物が作られてるんだからな。
しかもそいつらはよく分からねえ薄い透明なツルツルした容器に入ってんだ。
それに何だか分かんねぇが、“ドープ”とか“スマック”とかいう粉が物凄ぇ値で取り引きされてやがる。
俺には分からねぇが、奴らは物凄ぇ未来に住んでんのは間違いねぇ。
この辺から俺は荒んでいった。
俺の店で何が起きてんだ?
“コーラ”は美味かったさ。
昔の部下の中には俺を慕って通う奴もいた。
俺の選んだ酒や作った料理を楽しみにする野郎どもがいた。
だけど今目の前でそいつらは何をしてんだ?
俺の店から溢れ出そうなこの金は何だ?
いつからか、俺の店は顔なじみの紹介なしには入れなくなっちまった。
俺の顔なじみ?こいつらは誰だ?
ジューク、俺が必死こいて背中を追ってたお前じゃねぇのか?
ハヤ、あの戦争で俺の窮地を救ったお前じゃねぇのか?
昔の部下たち、お前たちのイッちまったその目つきは何だ?
気づけば俺は山賊団だ。その団長だ。
こうでもして纏めあげなきゃ、あいつらは何をしでかすか分かったもんじゃねえ。
後は弱みを握られちまってるからな。
ゲラーカ家の誰かが来る。言われた所を襲う。
それだけだ。それだけだった……
だが、とうとうポッポの奴一線を越えようとしてねえか?
よりにもよって……あの魔女チトセと手を組んでんのか?
あの!あの戦争を起こしたチトセと!?
俺は奴をブッ殺す側の人間じゃねぇのか!?
奴がまたこの国に攻め込んできたら、何人の人たちが死ぬことになる!?
俺は……いつからこんな奴の味方になっちまった!
思い出せメロンジ!!
俺は、俺はどんな奴だった!!思い出せ!!
昨日のあのガキ……腕相撲のガキ……
【支援魔法】で腕を強化してたとはいえ腕が折れるより強い痛みに耐えて、それでも俺を睨みつけてやがったな……
あの目つき……俺は心から震え上がったぜ。
ビビったのか?この俺が?ああそうだ。
まっすぐな目で見られた、ただそれだけでな。
今の俺をあんなにまっすぐ睨みつけた奴がいたか?
俺の顔色を伺う奴、俺の奥の金しか見てねぇ奴。
もうめの焦点さえ合ってねぇ奴、俺を見もしねぇで命令する太った貴族のデブ。
あのガキ……あの決闘は俺の負けだ。
俺は心からビビったから、ああするしかなかった。
思い出しちまったぜ。
俺も昔はああいう眼差しをしてたんだ。
……チッ。気になるぜ。何て名前だったかな。
「オイ!カルビ!……いやケルビだったか?」
「カシラ、誰を呼んでんです?」
「“マナイバ”が得意なアイツだよ!聞きてえことがあってな。昨日の……オイ!いねぇのか!?」
「カシラァ、トんでんですかァ?俺たちの中に“マナイバ”で他の奴のステータスが見れるやつなんざいませんよォ。カシラだけでさァ」
「昨日唱えてただろーが!……あァ、ドルビだったか?あの女だ!」
「……ドルビ?いませんよそんな奴ァ」
「あァ?トんでんのはお前じゃねーのか?“ドープ”やってんのか?思い出せよ」
「俺ァ立場上シラフですぜ……ドルビなんて奴メロンジ団にはいませんよ。女なら尚更忘れる訳ありませんや」
「……確かか」
「間違いありやせん。女の団員はマゴシカから来た娼婦の奴が最後でさァ」
……そういえば確かにおかしいぞ。
“マナイバ”を三人全員にかけてやがったな。
そんな奴がいたら俺が忘れる訳はねぇ。
……あのガキどもが来る前、俺は何をしてた?
お、思い出せねぇ……!
だが覚えがある……!
この、“思い出せねぇ”って感覚には覚えがある!
あれは確か……五年前の……!
魔女チトセが……この国の城壁を突破した時だ……
気がついたら俺たちは奴の召喚獣と戦ってたんだ……!
間違いねぇ!あの時と同じだ!
じゃああのドルビって女は!まさか!?
魔女、チトセなのか!?
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