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九月生

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生配信5 サキサキさんとFPS!

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「はい、皆さん! 今日一日、私の配信を見て楽しんでいってください。サキサキチャンネルのサキサキです。よろ・しく・ね」

 サキサキさんから始まる配信。昼配信は俺から始まったので、夜配信はサキサキさんに譲った。

「今日はですね、私が最も苦手なジャンルであるFPSをやっていこうと思います」

 この配信の進行はサキサキさんに任せている。なぜって? 昼の配信進行を俺がしたからだ。

『PUBGか』
『サキサキさん、FPS苦手なのか』
『あれ、滝は?』
『そういえば』

 サキサキさんに進行を任せているので、呼ばれるまでは待機。

 今サキサキさんは、プレイするゲームについてとFPSが苦手な理由を述べている。その後に俺を紹介する予定だ。

「という訳で、苦手なFPSを克服するために、今日は先生をお呼びしています。先生どうぞ!」

 よし来た!

『茶番きたw』
『滝だろうどうせ』
『先生草』

 呼ばれたので行ってくる。

「よく来たな、ウジ虫ども! 今日はこの滝教官が「チェンジで」………え、うそ?」

 最後まで言わせてくれないの? 配信前、ちょっと考えてたネタなのに。

『チェンジで』
『チェンジでw』
『チェンジ、早w』

「ええ、私が呼んだ先生は、そんな高圧的な先生ではありません。次の先生どうぞ!」

 このネタは、どうやらお気に召さなかったようだ。滝教官は高圧的でダメと。じゃあ、

「ええ~、きょうは、この滝が「呼んでません」ほへ?」

 おじいちゃん風に挨拶をしようとしたのだが、これもダメだったらしい。

 つうか、ツッコミ早くない?

『チェンジで』
『チェンジで草』
『おじいちゃん!』

「はい次」

「はい、今日はサキサキお姉ちゃんに呼ばれてきました。滝です。よろしくお願いします」

 今度はショタボイスで挨拶を終える。ふざけるのはこれが最後。サキサキさんの「チェンジで」が来たら、いつも通り挨拶するつもりなのだが、

「はい、今日の先生は、少年滝くんに来てもらいました。ちゃんと挨拶できて偉いね」

 あれ? 「チェンジで」が来ない。

「うんとね、サキサキお姉ちゃんのために今日は頑張るね」

「よろしくね、滝くん」

 ちょっとノリで乗ってみたは良いが、まだ「チェンジで」が来ない。

 そろそろキツくなってきたのだが。何がキツいって恥ずかしすぎて心が持たん。

『ショタ滝w』
『いつもの滝に戻れ』
『ショタ滝よき!』
『キッツ』

 キツイのは俺が1番分かっとるわ!

「あ、あのう、サキサキさん? チェンジで、ってくれないといつも通りの」

「あれ? 呼んでない人の声が聞こえる? 少年滝くんはどこに行ったの? 滝くん、滝くーん!」

 こ、こいつ。悪ノリしてやがる⁉︎

 たちが悪りぃ。俺このまま、この配信突っ走らなきゃいけないの?

「少年滝くんがいなくなっちゃったよ」

 上等だ。突っ走ってやるよ!

 俺は覚悟を決め、猫撫で声でサキサキさんを呼ぶ。

「お、お姉ちゃん? 僕はここだよ」

「もう、滝くん! 1人でどっか行っちゃダメでしょ? めっ、だよ」

 覚悟を決めたは良いが、ちょっと腹が立ってきた。

「ごめんなさい。許してください」

『キッツ』
『きっしょ』
『やっば』

「キッツ、きっしょ、やっば。うん、リスナーさん、名前覚えたからな」

『サキサキさん、変な人いる』
『サキサキさん、こいつ怖い』
『滝ショタ、やばいぞ』

 残念でした! サキサキさんはこのコメント欄見れません!

「誰の名前を覚えたのかな、滝くん?」

「んん? なんか聞こえた、サキサキお姉ちゃん?」

「え、今なんか「それよりも『PUBG』そろそろやろう?」……うん。そうだね」

 そう言い、俺は待機画面から『PUBG』の画面を出す。

「ええっと確か、フレンドを呼び出せば良いんだよね?」

「うん、そうだよ! 早くしてね! このノロマ」

 最後の方は聞こえるか聞こえないかの声で喋る。

「え? 今ノロマって」

 招待が届き、サキサキさんのチームに参加する。

「ええ? ごめんなさい、何言ってるか分からない?」

「そうだよね、滝くんがそんなこと言う訳ないよね。お姉ちゃん変なこと言ってごめんね」

 あっ、なかったことにしてくれるんだ。ショタムーブしてれば何言っても無かったことになるんじゃない?

 俺の思っていることを、どうやらリスナーさん達は察したらしい。

『こいつ誤魔化せばいける、とか思ってそう』
『サキサキさん、こいつ言ってますよ』
『ノロマとか暴言やんw』

 あれれ? 何のことか僕よく分からないや? 

「じゃあ、『PUBG』のデュオをやっていきたいと思います」

 この作品『PUBG』は、フィールド内にある武器や医療品を拾い、拾った物を駆使して、フィールドに存在するプレイヤーを全て倒していく、チーム型バトルロイヤルゲームだ。
 
 チームは2人型と4人型が選べる。今回は2人型を選択し、プレイしていく。

 ロビーへ案内され、ここで作戦会議をする。

「ええっとまずですね」

 ショタボイスはここで終了。んん? 覚悟はどうしたかって?
そんなもん、捨てたわ。いつの話してんの? 今することは基本操作のおさらい。

 まあ、一応、覚えている所から忘れてしまった所まで教えていく。

「ああ、なるほどね。しゃがみはこうやって、伏せるのはこうやるのね」

「そうですそうです」

 目の前でしゃがんだり、伏せたりを何度もするサキサキさん。

「で、武器を違うやつにするには」

「1から5までの数字を押せば出来ると思います」

 今は武器など持っていないため、口頭だけの説明。

 これで今教えられる全ての基本操作は伝えた。

 車の操作方法とか教えなくてはいけないことはあるが、それはフィールドに行ってからだ。

「じゃあ、そろそろ作戦会議しましょう」

 基本操作は教えたので、今度は戦い方を教えていく。

「はーい」

「まずはですね、車がありそうな所に降りるのが良いと俺は思います」

「ええっと」

「車さえ取っちゃえば、行きたいところにすぐいけるし、逃げようと思えば「バン、バンッ!」………スッーー。聞いてます?」

「うん、聞いてるよ! 車があるところに降りればいいんだよね? 車があれば何処にでも行けるから」

「そう「バン、バン、バンッ」………人が喋ってるときは殴らないの!」

 俺が喋っていると、サキサキさんが暴力を振るってくる。

「暴力禁止。ジッとしてなさい」

「はーい」

 俺の言葉通り、目の前でジッとしている。それでなんだっけ、ええっと、ああそうだ。

「車さえあれば逃げれるから。あと建物入る際は「スカッ」サキサキさん?」

「殴ってない。当ててない」

 え? そういうことなの?

『殴ってないぞ』
『当ててない』
『殴ってないぞ』

「うん、殴ってないは嘘だね。殴って当たんなかっただけだよね?」

「ふふふ、間違えちゃった」

『可愛いから許せよ』
『許すよな? (脅迫)』
『可愛いいいいいい』

 確かに、不覚にも可愛いと思ってしまった。「ちゃった」はズルい、可愛い。

「ええ、リスナーさん達が『可愛いから許せよ』と言うので許します」

「何目線で言っとんじゃあああ」

 俺をサンドバッグと勘違いしているのかな? 

 棒立ちの俺目掛けて、ひたすら殴ってくるサキサキさん。

『許せよ』
『wwwwwwwwww』
『許してあげなよ』

「食らえ、サキサキ拳奥義百烈拳」

 黙って食らってあげる。だが、あとで覚えとけよ。

 ロビー待機の時間が終わり、俺とサキサキさんを含めた76人が飛行機で、戦場へ向かう。この後、パラシュートで着地しなくてはいけないのだが、ここがこのゲームの鬼門だ。

 パラシュート着地をする際、敵が同じところに着地する可能性がある。もし、敵と同じ場所に着地してしまったら、敵よりも先に銃を見つけなくてはいけない。死なないために。

 だから、パラシュート着地は重要。

 さて、何処に降りますか?

「サキサキさん、何処らへんで降りたいとか」

「ダーイブ!」

「サキサキさん⁉︎」

 飛行機から1人で降りていくサキサキさん。

「ん? 何?」

 どんどん降下していく。

「いや、何でもないです」

 何処へ降りるか聞くのを諦め、俺もサキサキさんの後を追う。

『ダーイブ』
『ダーイブ』
『ダーイブ』

 ダーイブ、ちゃうねん!
 
 幸いにも、この時点で降りて行った人はいなく、少し安心。

 2人共無事に降下することができ、お互い別々の建物を探る。

「アイテムを探すにあたって、気を付けて欲しいことがあります」

「うん」

「外の音に注意しながら、建物内を物色してください」

 外の音とは、車の音や足音のこと。物色に集中していると、敵に奇襲されたり、攻撃を受けたりする。

 外の音に気を使っていれば、攻撃を未然に防ぐことができる。

「了解。外の音を聞いながら物色していればいいのね」

「そうです」

 相槌をうち、建物内を物色する。

 武器はライフル銃が1丁に火炎瓶が3つ。あとは鞄が2個か。おお! 包帯に医療用キットがある! 

 この建物は少しアイテムが少ない。鞄1つはサキサキさんに渡そう。

「サキサキさん、そっちは何かありました?」

「うん! 結構色々ある。スコープに弾が沢山!」

 どうやらサキサキさんの場所は、アイテムが豊富らしい。

「鞄こっちにあるんで、拾ってください。あと、銃何か拾いました?」

「うん、一応。普通のライフル系統の銃。これってスコープつけた方がいい?」

「つけた方がいいですね」

 俺は別の建物を漁りに行く。

 次の建物には、ガソリンや手榴弾。弾やスモークなどがあった。防弾ベストは1つしかなく、その代わりにヘルメットが2つ。

「サキサキさん、防弾ベストがあるのでこっちきてください」

「了解でーす。先にバック拾ってから行く!」

 外を警戒しながら、サキサキさんを待つ。

 数秒しないうちに、今俺がいる建物にサキサキさんが入ってくる。

「ああ、これね。あとヘルメットもあるじゃん! これも貰っていい?」

「はい、どうぞ。サキサキさんがいた建物にまだ弾とかありますか?」

「あるよ!」

 彼女がベストとヘルメットを装着している間に、俺は弾を拾いに行く。

 現時点では順調。

 俺達は近くにある建物を全て漁り、次の場所に向かう。徒歩ではなく、車で。

「良かったですね、近くに車があって。で、サキサキさんは何をしているんですか?」

 運転席に座る俺。しかし、サキサキさんが車に乗り込んでこない。何をしているのか聞いてみると、「私が運転したい」とのこと。

 車の運転の仕方を軽く教え、俺は運転席を彼女に譲り、助手席に移る。

「出発、進行!」

 ノリノリで運転を始めるサキサキさんだったが、

「ちょ、ちょっと、サキサキさん! 行きたいのはそこじゃない! あああああ、木にぶつかる!」

 暴走機関車のように、あっち全速力。こっちにアクセルベタ踏み。と適当な運転をし、1人で「きゃあははあ」と笑っている。

『あぶな!w』
『俺この人の車乗りたくない』
『運転下手』

 コメント欄ではサキサキさんの運転について批判している。

「サキサキさんって免許持ってるんですか?」

「一応ね。1発で合格よ!」

「………嘘だ」

『絶対嘘』
『無免許だろ」
『免許持ちの方が危ない』

「コメント欄でも嘘だって言ってますよ」

「ひっど! これでもちゃんと持ってんですけど!」

 この運転では嘘と言われても仕方ないんじゃないか?

 荒い運転を我慢し、次の建物に到着する。

「じゃあ、俺はこっち。サキサキさんはあっちの建物、お願いします」

「了解でーす。ところでさ、滝くんって休日何やってる?」

「ゲームです」

 即答で答える。だってあまり外でないし、やることないし、ゲームしかやってないもん。

「ゲーム以外に何かしないの? もしかしてずっと暇なの?」

「んん? サキサキさんこれ喧嘩売ってます?」

「ふふふふふふふ、違うよ! 喧嘩売ってないよ、興味があっただけ」

 ずっと暇なの、は酷すぎるでしょ。確かに、休日はゲームしかしてない。でも、これは配信のためにゲームをしているだけで、暇だからゲームをし続けているわけではない。

『でも、暇でしょ?』
『やることはゲームしかない』
『本当は?』

「なにリスナーさん達? 『本当は?』って? 聞きたいの、暇か暇じゃないか? じゃあ、教えてあげるよ!」

『おお!』
『暇なんだろ』
『わかってるよ』
「ドルルルル、ドドン」

 雑なドラムロール。いらんってサキサキさん。

「ええ、そうですよ! 暇すぎて暇すぎてゲームしてますよ。だってやること何もないんだもん」

『彼女なしか』
『かわいそうに』
『DTかw』

「彼女いねぇよ。だ、誰がDTじゃ!」

 俺の答えに、向かいの建物を漁ってるサキサキさんが「くくくっ」と声を殺して笑っている。

 聞こえてんぞ、コラ!

 照準を合わせて、「ドンッ」と1発。

 ガシャン、と窓ガラスが割れ、1人の頭を撃ち抜く。
 
「きゃあああ、撃たれた! 敵、敵がいる。助けて滝さん! 死にそう!」

『敵がいるな』
『味方だといつ思ってた?』
『敵は滝さん』

 そうだよね、リスナーさん。いつから味方だと思ってた。
 
 敵だと勘違いしているサキサキさんに、俺は乗っかり、しらばっくれる。

「マジですか? 敵見当たらないんですけど」

「いや、私撃たれてました。起き上がらせてください」

 仕方ない。助けてあげますか、痛みから。

 俺は今いる建物からサキサキさんのいる建物に向かう。

 蹲っているサキサキさんを見つけ、近くにガソリンを置く。

「あ、あの。今リスナーさんから聞いてんですけど、私を撃ったの滝さんですか?」

 どうやら余計なことを言ったリスナーさんがいるらしい。

 俺はサキサキさんの質問に答えず、銃口をサキサキさんの近くに置いたガソリンに向ける。

「大丈夫、大丈夫。痛みなんかすぐになくなりますから。一緒に行きましょう、サキサキさん」

 俺もサキサキさんの近くに駆け寄り、ガソリン目掛けて発砲。

 ドドドドドド、バァン!

 ガソリンが爆発し、俺とサキサキさんは吹っ飛ばされ、死亡する。

「きゃああああああああ!」
「あはははははは!」

 死んだことに悲鳴を上げるサキサキさんに、高笑いする俺。

 画面には仲間をキルしないような注意文が出てくる。

「俺に喧嘩を売り、笑った罰じゃい!」

『喧嘩を売った代償が死w』
『一緒に死んでワロた』
『wwwwwwwwww』
『草』『草』『草』

 コメント欄でも面白かったようで『草』の1文字がずらっと並ぶ。

「あはははははは」

 ホームに戻り、高笑いする俺。

「きゃああああ、だって!」

「サイコパスめ! この鬼畜外道め!」

「あ、あれ? 喧嘩売ってます?」

「売ってないです。だから殺さないでください」

「ですよね。売ってなんかないですよね」

『サイコめ』
『さすが滝』
『やめたれw』

 サキサキさんのせいで、リスナーさん達にサイコパス呼ばわりされている。

 まあ、やってることがやってることだから仕方ないか。

「じゃあ、次行きますか」

 マッチングをし、ロビーへ向かう。

 先程はロビーで沢山殴られたが、今はかなり大人しい。

「そうだ、サキサキさん。さっきは俺の休日について聞いてきたじゃないですか」

「うん」

「サキサキさんは休日何しているんですか」

 ロビーで落ち合い、サキサキさんの前に立つ。

「休日は服を買いに行ったり、あと友達と遊びに「バン」きゃあああ。殴った、滝さんが殴った!」

「操作ミスです、操作ミス。で、友達とどこに遊びに行くんですか?」

「操作ミス? ありえな。ってか、殴っといてよくすぐに話戻せますね?」

 だって、操作ミスだから仕方ないじゃないか。ミスはミスですよ。

「まあいいです。で、友達とはデパートとかカラオケとか行きます。服みたり、ランチしたり、歌ったり」

『どんな歌、歌うの?』
『何聞くの?』
『女友達?』

 どうやらリスナーさん達は、サキサキさんに質問があるようだ。

 代弁者になって差し上げよう。

「第1回サキサキさんに聞いちゃおう、を開催します。リスナーさんからの質問。『どんな歌を歌うの? またどんな曲を聞くの?』だそうです。これはカラオケについての質問ですね。サキサキさん、これは答えられるでしょうか? 答えたくなかったらお答えしなくてもいいです」

 ロビー待機のいい暇つぶしになる。もちろん、サキサキさんが嫌なら、

「そうですね。この質問には、答えましょう!」

 止めるのだが、彼女はノリノリで答える。

「私が歌う歌はアニソンが多いですね。しかも女性アーティストの曲。聞く曲も歌う歌とあまり変わりません」

「アニソンですか。アニメはよく見るんですかね?」

「見ますね。好きなアニメはBlu-rayまで買います」

「そうですか。では、次はサキサキさんのコメント欄から質問を1つ拾って答えてください」

 交互にやらなくては不平等だ。リスナーさん達の質問権利は平等ではないと。

「はい、じゃあ、『サキサキさんは、どんな石鹸を使ってますか?』ですね。石鹸って石鹸ですか?」

 それ以外に何がある?

「え? 石鹸ってもしかして知らない? 手洗ったり、体洗ったりするやつ」

「知ってますよ! そうじゃなくて、石鹸っていろいろあるじゃないですか。シャンプーやリンス。ボディーソープにハンドソープとか」

 なるほど、言われてみればそうかも。質問者が悪いなこれは。でも、まあ、

「全部教えちゃえば? いっそのこと」

「………そうですね! じゃあ、教えちゃいます」

 そのあと彼女の言ったシャンプー、リンス、ボディーソープは呪文のような名前をしていて、1つも頭に入ってこなかった。ハンドソープは一般家庭が使うようなものを使用していた。

「じゃあ、次はと言いたいところですが、試合が始まりましたので、一旦終わりにします。次の質問は」

「私ではなく、滝さんに聞きたいことを、ロビーの待機中に送ってください」

「だそうです」

 サキサキさんの横槍から標的が俺に変わる。リスナーさん達、サキサキさんには手加減するのに、俺には一切手加減してくれないもんな。

 今だって、「次のロビーの待機中に送れ」ってサキサキさんが言ったのにも関わらず、すぐに送ってきたリスナーさん達がいるからね。

『滝の彼女歴』
『童・貞歴』
『1番の黒歴史』

 このように、悪意しかない質問だらけ。

 はあ、やだやだ。俺が答えられないと思っているリスナーさん達がいることに嫌気が差す。

 滝の彼女歴=俺の年齢! ではなく、大学時代に、付き合っていた彼女はいた。過去形である。

 童貞歴は、大学時代にやることはやっているので、これも残念。

 黒歴史は、中学2年生のとき中二病を発症。完治まで2年ぐらいまでかかった。

 ふっ、答えられるわ! 雑魚質問どもめ!

 そんなことを思っていると、ゲームが始まり、1人で飛行機から降りて行った奴がいる。

「ダーイブ!」

「おい、ちょっと待て! 先に行かないでくださいよ!」

 どんどん降下していき、サキサキさんの後についていく。

 彼女は一応目星をつけて降下しているようで、パラシュートを開き、無事に建物の屋上に着地。

「あのですね、サキサキさん? 1人でどこかいくのはやめて」

 俺の言葉を聞いていないのか、1人でそそくさと建物の中に入っていく。

「サキサキさん? 1人でどこかいくなって言ってるんですよ?」

 声自体は聞こえているのだから、アプリ越しに説教する。

「………束縛? ヘラってんの? こっわ」

「………やっちゃおう」

「きゃああああああ、束縛ヘラ男がまた殺しにくる!」

 俺も建物の中に入り、銃を探す。

 あっ、みっけた。ショットガン。

 さあ、ハンティングの始まりだ。

「サッキサッキさん、遊びま「ガシャん!」」

 この音は聞き覚えがある。確か火炎瓶!

 投げてきた方向を向くと、サキサキさんが火炎瓶を片手に持って立っていた。

「あはははははは、いつから狩る側だと思った! 今のお前は「バンッ!」きゃあああああ、くらえ!」

 俺は撃つと、火炎瓶が1つ飛んでくる。

「ちょ、火炎瓶はエグい。死ぬ、これは死ぬ」

「火っていいですよね? 浄化してくれそうで」

「んん? 何を浄化してくれるのかな?」

「滝さんの汚い心」

「ふっ、汚い心って! 酷すぎませんか?」

 言葉が酷すぎて、不覚にも笑ってしまった。

「浄化だ! 汚い心を浄化だ!」

 3つ目投下。火炎瓶3つは流石に耐えられない。

 俺はこうして死んでーーー逝く前にショットガンでサキサキさんの頭を撃ち抜く。
 
 またしても2人死亡。

 この光景に、俺達は笑ってしまう。

「また2人死亡ですよ、滝さん!」

「殺される前に道連れ」

「酷すぎます! 私に殺されてくださいよ」

「無理!」

「そんなぁあああああ」

 さて、配信の撮れ高は撮れたと思うので、この後の試合から本気を出す。

 教えながら、本気でプレイしているとリスナーさん達から『動画のギャップが凄すぎて草』『最初の茶番いらなかったんじゃ?』なんて送られてくる。

 いやいや、面白ければ何でもいい。それが配信ですから。

 配信が終わる頃には、サキサキさんは敵を16人キルし、FPSを克服した………と思う。

 そして今日も、そろそろ締めるの時間になる。

「はい、今日はご視聴ありがとうございました。この配信が面白いと思った方は、チャンネル登録をよろしくお願いします」

 先にサキサキさんが締め、次に俺。

「はい、今日も夜の配信をご視聴いただきありがとうございます。この配信が面白いと思った方は、チャンネル登録と評価をよろしくお願いします。アーカイブは残しておくつもりです」

『お疲れ様』
『おもろかった!』
『コラボ良かった』

 リスナーさん達から、コメント欄に感想が送られてくる。ほとんどが『楽しかった』『面白かった』と楽しんで貰えたようで、配信者として嬉しい。少数派の意見はあまり気にしないことにしているので、見るだけ見てみる。あとで。

 さて、そろそろ終わりにしますか。

「「では、また明日」」

 こうして、一日サキサキさんコラボは幕を閉じた。
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