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生配信19 朝起きたら地獄だった件

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「ふぅああ、んんんん!」

 今しがた夜配信が終わり、そろそろ寝ようかと思っていると、

 ピコン、ピコン。

 スマホに通知が届く。

「んんん? Twitter?」

 スマホのロック画面にはTwitterのマークが表示されている。

 誰か呟いたのか。この時間に起きているのは………ああ、あの2人か。

 さっきまで俺の配信で喋ってだんだし、今も起きているに違いない。

「………見なくていいか」

 配信であんだけ絡んだのだから、リツイートは明日でも許されるだろう。

「くっああああ!」

 流石に限界。もう眠すぎて、欠伸が止まらん。

「おやすみ」

 覚束ない足でベッドまで向かい、なんとかベッドの中で寝ることができた。

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 次の朝。

 ピコン、ピコン。

 スマホが鳴っている。鳴っているが無視をする。何故なら眠いから。

 ピコン、ピコン。

 スマホのアラームが鳴っていないということは、配信時間まで時間があるということ。なら、まだ眠れるはず。通知音なんて無視無視。

 ピコン、ピコン。

「………」

 ピコン、ピコン、ピコン。

 ピコン、ピコン、ピコン。

 ピコン、ピコン、ピコン。

 ピコン、ピコン、ピコン、ピコン、ピコン、ピコン、ピコン、ピコン、ピコン、ピコン、ピコン。

「うるさいねん‼︎ ピコンピコン、しつこいんじゃあ、ボケ!」

 流石に目が覚めるわ!

 もう、誰さ! 俺の眠りを妨げる奴は!

 スマホのロック画面を解き、Twitterを開くと、

「んん? DMダイレクトメッセージ?」

 TwitterのDM機能に20件以上のメッセージが送られてきている。

 名前だけ見ると俺の知らない人達だらけ。

「俺のリスナーさんかな? どれどれ内容は」

 この時、俺は配信の感想を送ってきたリスナーさんか、配信でプレイして欲しいゲームのリクエストかと思っていた。

 しかし、

『サキサキ親衛隊の者です。羨ましすぎる! 呪います。禿げる呪いを貴方にかけます!』

 全然違った。

 呪いのメッセージだった。

「たまたま開いたのが、呪いのメッセージの可能性だって」

『絵茶さんに手を出してみろ。ち○○切り落としてやるからな! それと、下痢になる呪いを掛けておきます』

「………これもたまたまな可能性」

『サキサキさんに美味しい焼肉を食べさせてあげてください。あと、どんな格好できたのか、焼肉を食べている時のテンションとか、夜配信で教えてください。ああ、それと、足の小指を何処かにぶつける呪いを掛けておきました』

「………」

 送られてきたDMを1件1件読んでいると、どれも最後には呪いのメッセージが付け加えられていた。

 血尿になれ、十円ハゲになれ、ドアに顔面を挟め、何もないところで転べ、とか。

 地味に痛いヤツばかりの呪い。

 よくよく見ると、昨日の夜から送られて来ていたようで、寝る前の通知も呪いのメッセージだった。

 なんだなんだ! コイツらは暇か!

 返信は………しないほうが良さそうだからしないけど、Twitterでちょっと呟いとこう。

 駄目だろう、サキサキさんと絵茶さんのリスナーさん達。こういうリスナーさん達がいると、迷惑被るのサキサキさんと絵茶さんなんだぞ!

 さて、なんて呟くかな。

「ううん………あっ、これでいいや」

 俺はテキストを打ち込み、送信する。

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『DMを俺に送ってきたリスナーさん達へ

 これが友達特権というヤツなのだよ!

 フハハハハハハハハハハハハハハハハハ!

 P.S.  俺への暴言などは全て聡太さんが引き受けるので、聡太さんのアカウントにDMをお送りしてください。私に送っても読まずに削除しますので悪しからず』

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「うん、これでよし。結果として煽った形になったが、まあ、仕方ないし」

 スマホをミュートにし、ベッドに上に転がす。

 誰から連絡来ても、見てない知らないで通すつもり。

「うううん、朝飯でも作ろうかな」

 まだ配信まで時間はある。

 配信までに出来るだけ家事を終わらせるとしますか!

 俺はキッチンに向かい、朝飯の準備をするのであった。

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 一方、その頃聡太さんはというと、

「えっ? 何で? こんなにDMが届くの? しかも、全部滝についてじゃん? 滝にDM送れよ」

 ピコン。

『よくも煽ってくれたな! 滝、お前は俺の怒りを買ったんだからな! 聡太さんには関係ありませんので』

 ピコン。

『友達特権か………調子に乗んなよ! 顔出せよ、グーパン入れてやるから! あっ、聡太さんには関係ありません』

 ピコン。

『絵茶さんと友達だからって、殴らないと思った? 馬乗りになって顔面ボコボコになるまで殴ってやるよ! 聡太さんには何もしませんので、気にしないでください』

 ピコン。

『サキサキ親衛隊の力見せてやるからな! 昼配信のコメント欄で待ってるからよ! 聡太さんの配信ではなく、クソ間抜け馬鹿野郎の滝に言っていますので、気にしないでください』

「………気にしないでくださいって、俺に送るんじゃなくて、滝のアカウントに送れよ! ピコン、ピコン、通知がうるせぇよ! 何したんだ、アイツはよ!」

 その30分後、滝の呟きを見た聡太さんは、何度も何度も滝に電話をするが、一向に通じなかったのであった。
 

 





 



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