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生配信22 買い物………いやだ
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昼配信が終わり、タバコを吸いたいので、サキサキさんこと佐々木さんには居間へ移動してもらう。
すぅ、はぁ。
「………」
すぅー、はぁ。
「………いつまであの人居んの?」
昨日の夜から今日、もう16時だけど、佐々木さんはまだ家にいる。
おかしいな? 聡太さんは昨日のうちに、零さんと一美さんは昼配信前に帰ったのに、佐々木さんは昼配信が終わったのに帰る支度すらしていない。
帰る家無くなったのか? それとも家は1人で寂しいとか?
そんな訳あるわけないよな。
じゃあ、なんで帰らないのかなぁ?
そんな事を考えながら、もう一口タバコを吸う。
すぅ、はぁ。
煙を吐き切ると、
「滝くん! 何か飲み物あったりする? 喉乾いちゃって!」
居間の方から佐々木さんの声が飛んでくる。
「ああ、冷蔵庫の中にリンゴジュース入ってるんで、飲んでもいいですよ!」
「わかった!」
トテトテと足音が聞こえてくる。
「佐々木さんって、事前の打ち合わせとかだと真面目スイッチ入るのに、それ以外の時はポンコツ自由人だよな」
人のPC使って配信しようとか考えるし、人のしかも男の家でシャワーを浴びて服を勝手に拝借するし、危機感ってものが無いような気がする。
それを佐々木さんの配信後に注意したところ、
『ええ? 滝くんは私を襲うんですか? そんな人には見えないんですけど………襲うの?』
と、そうじゃない!
危機感を少しは持ちなさいって事なのに………まったく。
まあそのあと、佐々木さんがシャワーを浴びていた事を知った一美さんが、しこたま怒ってたけどね。
タバコ1本吸い終わり、吸い殻を処分してから、居間に戻る。
居間では、冷蔵庫から取り出したであろうリンゴジュースをコップに入れ、ちょびちょびと飲む佐々木さんがいた。
佐々木さんが座っているソファーの反対側に俺は座り、佐々木さんを見る。
「?」
ちょびちょびと飲んでいる彼女に、今1番気になっている質問をぶつけてみる。
「家事とかは大丈夫ですかね」
多分彼氏はいないだろうし、独身である佐々木さん。そんな人が彼女もいない独身の男性の家に長居するのは良くない、と思う。
なので、遠回し的に「帰りなさい」と言ってみたところ、
「大丈夫!それに、ふふふ、まだ遊び足りないので、満足するまでは居続けますよ!」
まだ帰らないと宣言された。
帰る気はあるようなので、少し安心する。
「そうですか。なら、どうやったら帰ってくれるんですか? どうすれば満足するんですかね?」
早く帰したい俺は、佐々木さんが帰るなら何でもする気でいる。なので、要望を聞いてみることにした。
「………そうですね」
何も考えていなかったのだろう、今考え始めた佐々木さん。
少し沈黙の間が開き、そして口が動く。
「私たち配信者はよく家に篭りがちじゃあないですか? 配信をいつでも出来る様に。でも、篭りがちなのはイケナイ事だと私は考えているんですよ」
確かに、1週間家の外に出ないってことはざらだ。長ければ2週間ぐらい人と会わないってこともある。
「滝くんの冷蔵庫を拝見したところ、飲み物はたくさん備蓄してあり、軽くつまめるような冷凍食品を沢山ありました。これは、家を出ない人特有の現象です」
まあ、確かに、この前大量に冷凍食品を買い溜め、「これなら家を出なくても生きていけるな」って思いながら精算しました。
でも、家を出る気がないわけじゃなくて、必要以上に出なくても良いようにしているだけで………ってか、家の冷蔵庫の中身を確認したんだな、この人。
「滝くん、お外に出かけませんか? お外に出かけて一緒に遊びましょう! そうすれば、私も満足するし、滝くんの出不精も治ると思うんです!」
うん、出不精では無いと思うんだけど。別に、外に出るのを面倒臭がっているわけじゃ無いし、配信のために家に居るだけだ………これが出不精なのか?
ちょっと分からなくなってきた。
「お出かけしましょう? お出かけ! しないんだったら、もう1日ぐらい泊まりますよ?」
脅しか? この人、今俺を脅したのか?
「………一美さんに電話」
「それはダメ! ダメったらダメ! また怒られちゃう!」
でしょうね、怒られるでしょうね。ってか、もう1度くらい怒られてくれ。
一美さんには『あんた、男の家のシャワーは使わない! それと、友達だからって男に気を抜かない! 約束しなさい!』って怒られてた。
怒られてたのに、「もう1日くらい泊まりますよ」だよ?
もっと怒られてほしい。
だが、まあ、佐々木さんの言っていることは理解できた。
確かに篭りがちは良くない。冷凍食品で1週間の食生活も良くないわな。
佐々木さんが居なかったら、多分俺は2週間は外に出ないだろう。
よく考えた結果、俺が出した結論は、
「分かりました、お出かけしましょう」
佐々木さんとお出かけついでに、食材を買おう。そんで、自炊をまた始めよう。
「良かった! じゃあ、まずは」
佐々木さんはリンゴジュースを一気に飲み干して、こう言う。
「服を貸してください!」
一旦、帰るという選択肢はないようだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
佐々木さんの要望に応えるため、渋谷に買い物に来たが、
「なぜ、絵茶さんがここにいる?」
「こん!」
制服姿の絵茶さんが何故目の前にいる。
「えっちゃん、昨日ぶり!」
「お誘いありがとうね、サキちゃん!」
「いえいえ」
会話と状況から察するに佐々木さんが絵茶さんを呼んだと。
これなら俺要らなくないか?
そう言葉にしようとした時、何故俺を連れてきたかが分かった。
「荷物持ち兼ボディーガードもいることだし、色々見て回ろうね! サキちゃん、なんか見たいものとかある?」
「服とか見たいかな? あとは化粧品とか」
何を見るか話している女子達。
ところで、荷物持ち兼ボディーガードって俺のことだろうか?
周りを見渡しても、彼女らの連れは俺のみってことは、俺がそうなんだろうな。
「ほら、行きますよ。滝くん、ちゃんとついて来てくださいね」
「今日は何を買おうかな!」
貧乏くじを引かされた気分により、地面を眺めるように俯いていると、行き先が決まったのか、目的地まで歩き始める2人。
俺は逃げる選択肢を選びたかったが、逃げないようになのか、2人が俺の左右に陣取り、歩くように指示を出してくる。
ところで、巷で聞いたのだが、女性の買い物って滅茶苦茶に時間がかかるって本当なのだろうか?
この後の買い物時間を想像するだけで………いや、なんでもない。
俺は2人の指示に従い、歩き出す。
歩き出した道は、断頭台への道とは知らずに。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「滝くん、これどうですか? 似合いますかねぇ?」
「滝さん、これ可愛くない⁉︎ でも、この色とこの色どっちが私に似合うと思う?」
「滝くん、この帽子」
「滝さん、この靴」
「滝くん!」「滝さん!」
「滝くん」「滝さん」
「滝くん」「滝さん」
………いっそ殺してくれ。
俺に服や帽子、靴の感想を求めてくる佐々木さんと絵茶さん。
いやいや、女性の服についてなんか何一つ分からないんだよ? そんな感想聞かれても無理だから!
だからと言って、感想を述べなければ、応えるまで聞いてくるのがこの2人。
ええ、答えましたとも。2人の意思を読み取り、無難な答えを。
あちこちと見て周り、買い物に付き合うこと2時間。あんだけ試着やら店員に質問をしといて、買った物は2、3点のみ。
まだこれが続くのか………地獄だな。
このあとは、化粧品売り場に行く予定らしい。
はあ、買い物に付き合うなんて言わなければ良かった。佐々木さんを叩き出して、強制的に帰らせれば良かった。
後悔先に立たず。過去に戻れたら、「お出かけしましょう」と言った自分を殴り飛ばしてやりたい。
その後も買い物は続き、荷物持ち兼ボディーガードは息を吐く暇すらなかった。
「もう、この2人の買い物になんて付き合わない」
俺はボソッと呟き、最初で最後の買い物に付き合うのであった。
「今度は下着でも見にいこうか!」
「いいね、可愛い下着があったら買っちゃおう!」
「滝くん、下着にも感想くださいね?」
「誰がするか!」
このバカが!
すぅ、はぁ。
「………」
すぅー、はぁ。
「………いつまであの人居んの?」
昨日の夜から今日、もう16時だけど、佐々木さんはまだ家にいる。
おかしいな? 聡太さんは昨日のうちに、零さんと一美さんは昼配信前に帰ったのに、佐々木さんは昼配信が終わったのに帰る支度すらしていない。
帰る家無くなったのか? それとも家は1人で寂しいとか?
そんな訳あるわけないよな。
じゃあ、なんで帰らないのかなぁ?
そんな事を考えながら、もう一口タバコを吸う。
すぅ、はぁ。
煙を吐き切ると、
「滝くん! 何か飲み物あったりする? 喉乾いちゃって!」
居間の方から佐々木さんの声が飛んでくる。
「ああ、冷蔵庫の中にリンゴジュース入ってるんで、飲んでもいいですよ!」
「わかった!」
トテトテと足音が聞こえてくる。
「佐々木さんって、事前の打ち合わせとかだと真面目スイッチ入るのに、それ以外の時はポンコツ自由人だよな」
人のPC使って配信しようとか考えるし、人のしかも男の家でシャワーを浴びて服を勝手に拝借するし、危機感ってものが無いような気がする。
それを佐々木さんの配信後に注意したところ、
『ええ? 滝くんは私を襲うんですか? そんな人には見えないんですけど………襲うの?』
と、そうじゃない!
危機感を少しは持ちなさいって事なのに………まったく。
まあそのあと、佐々木さんがシャワーを浴びていた事を知った一美さんが、しこたま怒ってたけどね。
タバコ1本吸い終わり、吸い殻を処分してから、居間に戻る。
居間では、冷蔵庫から取り出したであろうリンゴジュースをコップに入れ、ちょびちょびと飲む佐々木さんがいた。
佐々木さんが座っているソファーの反対側に俺は座り、佐々木さんを見る。
「?」
ちょびちょびと飲んでいる彼女に、今1番気になっている質問をぶつけてみる。
「家事とかは大丈夫ですかね」
多分彼氏はいないだろうし、独身である佐々木さん。そんな人が彼女もいない独身の男性の家に長居するのは良くない、と思う。
なので、遠回し的に「帰りなさい」と言ってみたところ、
「大丈夫!それに、ふふふ、まだ遊び足りないので、満足するまでは居続けますよ!」
まだ帰らないと宣言された。
帰る気はあるようなので、少し安心する。
「そうですか。なら、どうやったら帰ってくれるんですか? どうすれば満足するんですかね?」
早く帰したい俺は、佐々木さんが帰るなら何でもする気でいる。なので、要望を聞いてみることにした。
「………そうですね」
何も考えていなかったのだろう、今考え始めた佐々木さん。
少し沈黙の間が開き、そして口が動く。
「私たち配信者はよく家に篭りがちじゃあないですか? 配信をいつでも出来る様に。でも、篭りがちなのはイケナイ事だと私は考えているんですよ」
確かに、1週間家の外に出ないってことはざらだ。長ければ2週間ぐらい人と会わないってこともある。
「滝くんの冷蔵庫を拝見したところ、飲み物はたくさん備蓄してあり、軽くつまめるような冷凍食品を沢山ありました。これは、家を出ない人特有の現象です」
まあ、確かに、この前大量に冷凍食品を買い溜め、「これなら家を出なくても生きていけるな」って思いながら精算しました。
でも、家を出る気がないわけじゃなくて、必要以上に出なくても良いようにしているだけで………ってか、家の冷蔵庫の中身を確認したんだな、この人。
「滝くん、お外に出かけませんか? お外に出かけて一緒に遊びましょう! そうすれば、私も満足するし、滝くんの出不精も治ると思うんです!」
うん、出不精では無いと思うんだけど。別に、外に出るのを面倒臭がっているわけじゃ無いし、配信のために家に居るだけだ………これが出不精なのか?
ちょっと分からなくなってきた。
「お出かけしましょう? お出かけ! しないんだったら、もう1日ぐらい泊まりますよ?」
脅しか? この人、今俺を脅したのか?
「………一美さんに電話」
「それはダメ! ダメったらダメ! また怒られちゃう!」
でしょうね、怒られるでしょうね。ってか、もう1度くらい怒られてくれ。
一美さんには『あんた、男の家のシャワーは使わない! それと、友達だからって男に気を抜かない! 約束しなさい!』って怒られてた。
怒られてたのに、「もう1日くらい泊まりますよ」だよ?
もっと怒られてほしい。
だが、まあ、佐々木さんの言っていることは理解できた。
確かに篭りがちは良くない。冷凍食品で1週間の食生活も良くないわな。
佐々木さんが居なかったら、多分俺は2週間は外に出ないだろう。
よく考えた結果、俺が出した結論は、
「分かりました、お出かけしましょう」
佐々木さんとお出かけついでに、食材を買おう。そんで、自炊をまた始めよう。
「良かった! じゃあ、まずは」
佐々木さんはリンゴジュースを一気に飲み干して、こう言う。
「服を貸してください!」
一旦、帰るという選択肢はないようだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
佐々木さんの要望に応えるため、渋谷に買い物に来たが、
「なぜ、絵茶さんがここにいる?」
「こん!」
制服姿の絵茶さんが何故目の前にいる。
「えっちゃん、昨日ぶり!」
「お誘いありがとうね、サキちゃん!」
「いえいえ」
会話と状況から察するに佐々木さんが絵茶さんを呼んだと。
これなら俺要らなくないか?
そう言葉にしようとした時、何故俺を連れてきたかが分かった。
「荷物持ち兼ボディーガードもいることだし、色々見て回ろうね! サキちゃん、なんか見たいものとかある?」
「服とか見たいかな? あとは化粧品とか」
何を見るか話している女子達。
ところで、荷物持ち兼ボディーガードって俺のことだろうか?
周りを見渡しても、彼女らの連れは俺のみってことは、俺がそうなんだろうな。
「ほら、行きますよ。滝くん、ちゃんとついて来てくださいね」
「今日は何を買おうかな!」
貧乏くじを引かされた気分により、地面を眺めるように俯いていると、行き先が決まったのか、目的地まで歩き始める2人。
俺は逃げる選択肢を選びたかったが、逃げないようになのか、2人が俺の左右に陣取り、歩くように指示を出してくる。
ところで、巷で聞いたのだが、女性の買い物って滅茶苦茶に時間がかかるって本当なのだろうか?
この後の買い物時間を想像するだけで………いや、なんでもない。
俺は2人の指示に従い、歩き出す。
歩き出した道は、断頭台への道とは知らずに。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「滝くん、これどうですか? 似合いますかねぇ?」
「滝さん、これ可愛くない⁉︎ でも、この色とこの色どっちが私に似合うと思う?」
「滝くん、この帽子」
「滝さん、この靴」
「滝くん!」「滝さん!」
「滝くん」「滝さん」
「滝くん」「滝さん」
………いっそ殺してくれ。
俺に服や帽子、靴の感想を求めてくる佐々木さんと絵茶さん。
いやいや、女性の服についてなんか何一つ分からないんだよ? そんな感想聞かれても無理だから!
だからと言って、感想を述べなければ、応えるまで聞いてくるのがこの2人。
ええ、答えましたとも。2人の意思を読み取り、無難な答えを。
あちこちと見て周り、買い物に付き合うこと2時間。あんだけ試着やら店員に質問をしといて、買った物は2、3点のみ。
まだこれが続くのか………地獄だな。
このあとは、化粧品売り場に行く予定らしい。
はあ、買い物に付き合うなんて言わなければ良かった。佐々木さんを叩き出して、強制的に帰らせれば良かった。
後悔先に立たず。過去に戻れたら、「お出かけしましょう」と言った自分を殴り飛ばしてやりたい。
その後も買い物は続き、荷物持ち兼ボディーガードは息を吐く暇すらなかった。
「もう、この2人の買い物になんて付き合わない」
俺はボソッと呟き、最初で最後の買い物に付き合うのであった。
「今度は下着でも見にいこうか!」
「いいね、可愛い下着があったら買っちゃおう!」
「滝くん、下着にも感想くださいね?」
「誰がするか!」
このバカが!
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