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生配信29 美女と美女?

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「寒いし、怠い」

 怠すぎて配信を止めたあのあと、一眠り。

 朝起きて熱を測ってみると、38℃後半あってビックリ。

 ベッドの中で大人しくしているが、お腹は空くし、喉も乾く。

 スポドリや軽く食べれる物が欲しいが、動けそうにない。

 ………

 ……

 …

 そんな貴方にとっておきの情報が!

 枕元にあるスマホを手に持ち、LINEを開きます。LINEの中にある電話機能を使うと、あら不思議!

 15分後。

「スポドリとゼリー。あと解熱剤に………まあその他諸々買ってきたぞ」

 聡太さんがやってきてくれます!

 ああ、なんて便利なんでしょう。皆さんも聡太さんのLINEをゲットして、体調が悪く寝込んでしまった時は、聡太さんに電話をかけましょう。

 優しく便利な男性です。

「おい、さっきから心の声漏れてるぞ」

 ゔゔん、優しくイケメンな聡太さんが心配して様子を見にきてくれますよ。

「訂正したって、無駄だからな」

「はい」

 とまあ、心の声が漏れたところで、聡太さんは優しく看病を、

「じゃあ、渡すもん渡したし帰るわ」

「………?」

「なんだよ」

「看病は?」

「しらねぇよ。どうせ風邪だろ」

 決めつけは良くないと口が酸っぱくなるほど言っているのに。

「ええ、多分風邪です。風呂上がり、裸で筋トレしたのがいけなかったのかも知れません」

「100パー、それ原因」

 チッ、風呂上がり、ふっとお腹を見たのがいけなかった。

 あれ、下っ腹出てきてない? からの、腹筋がダメだったようだ。

 せめて、パンツは履くべきだったか。

 夜配信前の行いを後悔するも既に遅いので、気に留めないでおく。

「まあ明日も熱出てたら見に来てやるよ」

 そう言い残し、聡太さんは帰って行った。

 聡太さんが買ってきてくれた食べれる物を食べ、薬を飲み、一眠りつく。

 ………………やっぱ眠れない。

 怠いせいとかじゃなくて、寝過ぎて寝れない。

「誰か配信してないかな?」

 枕元にあるスマホを手に取り、動画アプリを開く。

「ううん、まだ10時か。誰も………絵茶さんが6時間も配信してる」

 ちょっと覗いてこようかな。

 絵茶さんの配信をつけると、

「待て、コラ! 逃げんじゃねぇ!」

 キラーの絵茶さんがサバイバーを追いかけ回していた。

 6時間も『DbD』やってるのか、この人。

「あっ、サバイバー全員吊られた」

 絵茶さんから逃げていた最後のサバイバーも吊られてしまい、このマッチは絵茶さんの勝利で終わった。

「ふぅ、じゃあ今日この辺で終わりにします。この後、サキちゃんと約束があるので。じゃあ、バイバイ」

 そう言い、絵茶さんは配信を切った。。

「一足遅かったか。ああ、暇! 誰か配信とかしてないかな」

 検索一覧に戻り、ライブ中の配信を片っ端から眺めていく。

 ネットサーフィンならぬ配信サーフィンを20分ぐらい続けていると、

「ふぅわああ」

 欠伸とともに眠気が襲ってくる。

「薬が効いてきたんかな? 少し眠るか」

 スマホの電源ボタンを押し、スリープモードにする。

 そのまま天井を眺め、ゆっくりと瞼を閉じた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ピンポン!

 インターフォンの音で叩き起こされる。

「今、何時だ?」

 スマホを手に取り確認してみると、時間は11時35分と表示されていた。

 1時間弱しか寝てないやん。

 ………ここは居留守を使ってもう一眠り。

 ってなわけで、

「すまんな」

 毛布を頭でかぶり、寝る体勢に入る。

 ピンポン、ピンポン。

 すまんな、体調が優れなくてベッドから出ることが出来ないんだ。

 ピンポン。

 頼みから帰ってくれ。音が頭に響く。

 ………。

 帰ったか?

 インターフォンの音が止み、数秒待つも鳴る気配がない。

 多分、帰ってくれたんだろう。

「そんじゃあ、もう一眠り」

 枕を整えて、寝る体勢に入る。

 インターフォンの誰かさん、おやすみなさい。

 しばし微睡んでいると、玄関の方から微かに人の声が聞こえる。

「——から———んで」

「いい——でしょ! もう———して!」

 聞き覚えのある声が玄関先にいる。

 そういえば、どこかに行くって言ってたな。

 でも、俺が熱出して寝込んでんの知ってるの聡太さんぐらいなんだけどな。
 
 ただただ遊びに来たのか?

 なら、悪いけど居留守を使ってやり過ごそう。

 あの人達入れたら悪化しそうだし、何より移したら悪い。

 また、毛布を頭でかぶり居留守を続行する。

 ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!

 ………うるせぇし、頭いてぇ!

 絶対これ押し続けてるの、あのJKじゃん。

 絶対家には入れてやんない、あのJK。

 悪化するの間違えなしだもんな。

 インターフォンが壊れるんじゃないだろうかと思うほど、ボタンを連打してくる。

 これだけでも悪化しそう。

「えっちゃん、—————ようよ」

 やはりJK絵茶さんか。

 もう1人はサキサキさんだな。

 お願いだからサキサキさん、インターフォンを連打するバカを連れ帰ってくれ!

 インターフォンを連打する奴は皆バカだよ。

「この前俺もやったけどさ」

 思ったことが口に出てしまった。

 これがいけなかった。

「サキ———やっぱり声———るよ」

 声? るよ?

 まさかね聞こえるわけないよね………まさかね。

「良いこと——これなら——出て——よ」

 絵茶さんの声、結構聞こえるな。

 何する気だ?

 余計なことだけはしないで!

 そのまま帰ってくれると嬉しいな?

 君達は知らないだろうけど、こっちは寝込んでんの!

 悪化しちゃうから、帰ってくれないかな?

 祈るように願うが、神様は聞き届けなかった。

 どちらかというと、俺の願いを聞き届けたのは悪魔の方だった。

「滝田さん、お電話頂いたJKプレイ型のデリ「黙れ!」………ふぁい」

 玄関まで猛ダッシュし、絵茶さんの口を抑える。

 こいつ! 

 今!

 大声で!

 デリ○ルって言おうとしてたよな!

 しかもJKプレイ型って………本物のJKが言ったら近隣住民さんに変な誤解が生まれるでしょうが!

 絵茶さんの口を押さえたまま、周りをキョロキョロ。

 違いますよ、至ってノーマルな性癖しか持ってないですからね。JKに手を出すような大人ではないですからね。

 誰も見ていない事を確認して、

「今日は無理。俺、熱出て寝込んでるから遊べない」

 俺の状況を説明。

 これで帰ってくれるだろうと思いきや、

「ふがふがふがああ。ふが、ふがふあがふが、ペロリ」

「うわ! 舐めんなバカ!」

 ふがふが言ってて面白いから、手を退けないでいたら大変な目に遭いました。

 あとで手を洗います。

「んで、何? なんて言ったの?」

「んん? そんなの知ってるに決まってんじゃん、って言った。それと、看病してあげる!」

「いらん」

「無理」

「マジでいらない」

「美女2人に看病される滝さん。照れなくて良いのに」

「佐々木さんは確かに美人だね。あと1人は………ふっ」

「殺すぞ!」

「移すぞ」

 などと玄関先で言い争っていると、また熱が上がってきた様な気がする。

「………もう勝手にしてくれ。移っても知らないからな」

「勝手にしまーす」

 そう言い、家の中に入る絵茶さん。

「………」

「………」

「………佐々木さん、入らないの?」

「あっ、入ります!」

 頬の赤い佐々木さん。

 もしかして風邪か?

 その場でスッとマスクを渡し、

「お互いに気をつけましょう」

 風邪が悪化しないための対策をとる。

「ええっと………あっ、そうですね。ありがとうございます」

 佐々木さんはマスクを受け取り、家の中に入ってくる。

 絵茶さんにも渡しとくか。

 2人の後を追う様に、俺も居間へと向かった。






 
 

 



 

 







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