双子西遊記 ~愛と教えの物語~

猩々

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第18話 安仁 十六歳

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 十六歳となった安仁アンジンは、執務室で古い記録を読み返していた。沙悟浄と猪八戒からの定期連絡は続いており、その情報を里の政治に反映させていた。

 安仁の体調は悪化の一途をたどっていた。かつての活発さは影を潜め、肌は幽霊のように青白くなっていた。

「長、お体の具合はいかがですか?」

 召使いが心配そうに尋ねる。
 安仁は杖をつきながら立ち上がった。

「問題ない。それより、母上の記録の整理が終わったのじゃ」

 安仁は震える手で巻物を広げた。母が残した詳細な記録。そこには、安仁がこれまで知らなかった真実が記されていた。

「双子...」

 記録には確かに書かれていた。安仁には双子の姉がいたのだ。忌み子として人間の世界に送られた、月人ユエレンという名の姉が。

「姉上...」

 安仁の瞳に、初めて見る希望の光が宿った。一人だと思っていた自分に、血を分けた姉がいる。それだけで、心が軽やかになった。

 また、多くの古文書を読み解くうちに、もう一つの重要な発見があった。

「祠...太古の自然エネルギーを濃縮した宝石...」

 古文書によると、鬼族のエネルギー源となる特別な宝石が、山中の祠に眠っているという。これがあれば、病の改善に繋がる可能性があった。

 しかし、問題があった。

「鬼の長の力で祠が開く...」

 古文書にはそう記されていたが、安仁一人では力が足りないようだった。双子である自分は、姉と力を二分している状態。祠の封印を解くには不十分だった。

「姉上の協力が必要...ということか」

 安仁は頻繁に咳き込みながらも、興味深そうに記録を眺めた。自分一人では成し遂げられないことも、姉と力を合わせれば可能になるかもしれない。

 それ以上に、安仁は姉という存在に励まされていた。

「儂には...姉上がいるのじゃな」

 一人で里の重責を背負い続けてきた安仁にとって、血の繋がった家族の存在は何物にも代え難い希望だった。

 翌日、安仁は沙悟浄と猪八戒に手紙を送った。

『二人とも、息災にしておるか。
 重要な発見があった。生き別れになった儂の姉の存在について、そして里を救う可能性のある宝石について。
 詳しくは帰還時に話すが、もし旅の途中で儂と似た容姿の女性に出会ったら、必ず知らせてほしい。
 姉上の名は月人。忌み子として寺に捨てられたため、男性として育てられている可能性もある。』

 手紙を書き終えると、安仁は窓辺に立った。遠い空の向こうで、姉はどのような人生を歩んでいるのだろうか。

「姉上...儂はずっと一人だと思っておりました。しかし、二人で生まれてきたということは、きっと意味があるのでしょうな」

 安仁の声は弱々しかったが、その瞳には確かな希望が宿っていた。

 古文書をもう一度確認する。

「双子の鬼の長が力を合わせることで、封印された祠が開かれる...」

 宝石があれば、残された純血の鬼たちの命を延ばすことができる。完全に病を治すことはできなくても、穏やかな最期を迎えさせてやることはできるだろう。

 そして何より、安仁は姉に会いたかった。一人で背負い続けてきた責任を、少しでも分かち合える人がいるということの意味は大きかった。

「姉上...どうか、お元気で...」

 夜風が安仁の黒い長髪を揺らした。まるで遠く離れた姉からの便りのように。

 安仁は知らなかった。その頃、姉である三蔵が猪八戒と沙悟浄と共に旅をしていることを。そして、運命の再会が近づいていることを。

 月明かりの下で、安仁は静かに祈り続けた。姉との再会と、里の安泰を願いながら。
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