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第20話 双子の協働
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翌朝、安仁は杖にすがりながら現れた。足取りはおぼつかなかったが、その瞳には、微かな希望の光が宿っていた。
「よろしくお願いします、姉上」
安仁は深々と頭を下げたあと、顔を逸らして咳き込んだ。
「安仁さん…無理をしているのでは…」
三蔵は安仁の様子を痛ましく見つめた。
「…『安仁』とお呼びくだされ。儂のことは心配無用じゃ」
「僕が背負います」
猪八戒が申し出た。
「…頼む」
安仁は力なく微笑んだ
安仁を背に乗せた猪八戒は、そのあまりの軽さに、一刻の猶予もないことを実感した。
「幼い頃を…思い出すのう」
猪八戒と沙悟浄は、黙々と歩いた。口を利けば、涙がこぼれそうだった。
祠への道のりは険しかった。
古い山道を登り、深い森を抜け、ようやく古代の祠にたどり着く。石造りの古い建物は、長い年月の間に蔦に覆われ、神秘的な雰囲気を纏っていた。
「ここが...」
猪八戒に支えられながら祠の前に立った安仁は、真剣な表情を見せた。古文書に記された呪文を唱え始める。
「我は鬼族の長、安仁。血を分けた姉と共に、封印の解除を願う」
三蔵も隣に並ぶ。すると、祠の扉が重々しい音を立てて開いた。
中に入ると、そこは想像以上に広い空間だった。奥の祭壇付近の岩壁には、美しく光る宝石がいくつも輝いている。太古の自然エネルギーを濃縮した、鬼族の生命源となる貴重な宝石である。
一行が宝石の採掘にかかろうとした、その時であった。
重厚なうなり声とともに、巨大な龍が姿を表した。
龍は侵入者を威嚇するように咆哮した。炎を吐き、巨大な爪を振り上げる。
孫悟空が前に出ようとするが、安仁が制した。
「待たれよ悟空殿。この龍は敵ではない。儂ら姉妹の試練なのじゃ」
安仁の声に力がこもっている。
安仁は宝石に近づくにつれて、少しずつ力を取り戻していった。体に活力が戻ってくる。
「悟空殿、俺たちはここで控えていましょう」
孫悟空と猪八戒は頷いた。
「天候を操る力...また使えるようじゃ」
安仁は手を天に向けると、祠の中に雲が湧き起こった。雷鳴が響き、稲妻が龍を牽制する。
一方、三蔵も不思議な力を感じていた。
「これは...」
三蔵の周りに、温かい光が宿る。龍の攻撃的な心を和らげ、敵意を削いでいく。
「姉上の力は、他者から愛される力...人の力だそうじゃ。宝石で増幅されているようじゃの」
安仁が興味深そうに見守る。双子でありながら、それぞれ異なる力を受け継いでいたのだ。
姉妹は息を合わせて龍と対峙した。安仁の雷撃で龍の動きを封じ、三蔵の癒しの力で龍の心を鎮める。長い攻防の末、龍は攻撃をやめ、大人しく祠の奥へと引き下がっていった。
「やったのう!」
「やりましたね」
三蔵が安仁に微笑みかける。安仁も久しぶりに心からの笑顔を見せた。
宝石の採取は順調に進んだ。美しく光る石を一つ一つ丁寧に集める。安仁は宝石のエネルギーを受けて、見る見る健康を取り戻していく。
「これで...里の皆を救える」
安仁は喜びながらも、現実的な話をした。
「この宝石のエネルギーは永久的ではないそうでな。純血の鬼の絶滅は避けられぬが、生き残り鬼達の一生分は持ちそうじゃ」
それでも十分だった。残された鬼たちが、穏やかな最期を迎えることができる。それが安仁の願いだった。
宝石を袋に詰めながら、三蔵は安仁を見つめた。
「安仁...僕は今まで自由に生きてきました。それに比べて、あなたは...」
「姉上」
安仁が三蔵の言葉を遮った。
「儂は姉上が自由に、幸せに生きてこられたことを心から嬉しく思う。そして、今こうして会えたことが何より嬉しいのじゃ。儂の幸せを否定してくれるな。」
安仁の瞳には純粋な喜びが宿っていたが、三蔵の心は晴れなかった。
宝石の採取を見届けた猪八戒と沙悟浄は、安仁に駆け寄った。
「安仁…ついにやり遂げたな。お前は里の救世主だ」
「安仁様、本当によかった…」
「長年ご苦労だったのう。お前たちのおかげじゃ!」
孫悟空と三蔵は、三人の絆を温かく見つめていた。
祠を出る時、安仁は振り返って龍に向かって小さく頭を下げた。
宝石を守り続けてくれた龍への感謝だった。
夕日が二人を照らしていた。ようやく出会えた双子の姉妹が、力を合わせて困難を乗り越えた瞬間だった。
「さあ、里に戻ろうぞ!」
安仁の足取りは、もう杖を必要としないほどしっかりとしていた。
希望を胸に、一行は里への帰路についた。
「よろしくお願いします、姉上」
安仁は深々と頭を下げたあと、顔を逸らして咳き込んだ。
「安仁さん…無理をしているのでは…」
三蔵は安仁の様子を痛ましく見つめた。
「…『安仁』とお呼びくだされ。儂のことは心配無用じゃ」
「僕が背負います」
猪八戒が申し出た。
「…頼む」
安仁は力なく微笑んだ
安仁を背に乗せた猪八戒は、そのあまりの軽さに、一刻の猶予もないことを実感した。
「幼い頃を…思い出すのう」
猪八戒と沙悟浄は、黙々と歩いた。口を利けば、涙がこぼれそうだった。
祠への道のりは険しかった。
古い山道を登り、深い森を抜け、ようやく古代の祠にたどり着く。石造りの古い建物は、長い年月の間に蔦に覆われ、神秘的な雰囲気を纏っていた。
「ここが...」
猪八戒に支えられながら祠の前に立った安仁は、真剣な表情を見せた。古文書に記された呪文を唱え始める。
「我は鬼族の長、安仁。血を分けた姉と共に、封印の解除を願う」
三蔵も隣に並ぶ。すると、祠の扉が重々しい音を立てて開いた。
中に入ると、そこは想像以上に広い空間だった。奥の祭壇付近の岩壁には、美しく光る宝石がいくつも輝いている。太古の自然エネルギーを濃縮した、鬼族の生命源となる貴重な宝石である。
一行が宝石の採掘にかかろうとした、その時であった。
重厚なうなり声とともに、巨大な龍が姿を表した。
龍は侵入者を威嚇するように咆哮した。炎を吐き、巨大な爪を振り上げる。
孫悟空が前に出ようとするが、安仁が制した。
「待たれよ悟空殿。この龍は敵ではない。儂ら姉妹の試練なのじゃ」
安仁の声に力がこもっている。
安仁は宝石に近づくにつれて、少しずつ力を取り戻していった。体に活力が戻ってくる。
「悟空殿、俺たちはここで控えていましょう」
孫悟空と猪八戒は頷いた。
「天候を操る力...また使えるようじゃ」
安仁は手を天に向けると、祠の中に雲が湧き起こった。雷鳴が響き、稲妻が龍を牽制する。
一方、三蔵も不思議な力を感じていた。
「これは...」
三蔵の周りに、温かい光が宿る。龍の攻撃的な心を和らげ、敵意を削いでいく。
「姉上の力は、他者から愛される力...人の力だそうじゃ。宝石で増幅されているようじゃの」
安仁が興味深そうに見守る。双子でありながら、それぞれ異なる力を受け継いでいたのだ。
姉妹は息を合わせて龍と対峙した。安仁の雷撃で龍の動きを封じ、三蔵の癒しの力で龍の心を鎮める。長い攻防の末、龍は攻撃をやめ、大人しく祠の奥へと引き下がっていった。
「やったのう!」
「やりましたね」
三蔵が安仁に微笑みかける。安仁も久しぶりに心からの笑顔を見せた。
宝石の採取は順調に進んだ。美しく光る石を一つ一つ丁寧に集める。安仁は宝石のエネルギーを受けて、見る見る健康を取り戻していく。
「これで...里の皆を救える」
安仁は喜びながらも、現実的な話をした。
「この宝石のエネルギーは永久的ではないそうでな。純血の鬼の絶滅は避けられぬが、生き残り鬼達の一生分は持ちそうじゃ」
それでも十分だった。残された鬼たちが、穏やかな最期を迎えることができる。それが安仁の願いだった。
宝石を袋に詰めながら、三蔵は安仁を見つめた。
「安仁...僕は今まで自由に生きてきました。それに比べて、あなたは...」
「姉上」
安仁が三蔵の言葉を遮った。
「儂は姉上が自由に、幸せに生きてこられたことを心から嬉しく思う。そして、今こうして会えたことが何より嬉しいのじゃ。儂の幸せを否定してくれるな。」
安仁の瞳には純粋な喜びが宿っていたが、三蔵の心は晴れなかった。
宝石の採取を見届けた猪八戒と沙悟浄は、安仁に駆け寄った。
「安仁…ついにやり遂げたな。お前は里の救世主だ」
「安仁様、本当によかった…」
「長年ご苦労だったのう。お前たちのおかげじゃ!」
孫悟空と三蔵は、三人の絆を温かく見つめていた。
祠を出る時、安仁は振り返って龍に向かって小さく頭を下げた。
宝石を守り続けてくれた龍への感謝だった。
夕日が二人を照らしていた。ようやく出会えた双子の姉妹が、力を合わせて困難を乗り越えた瞬間だった。
「さあ、里に戻ろうぞ!」
安仁の足取りは、もう杖を必要としないほどしっかりとしていた。
希望を胸に、一行は里への帰路についた。
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