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13 ◇お互いがそれでいい
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晃は、一太が両手で大切にハンバーガーを持って口に運ぶ様子を、ただ見ていた。包み紙を開く時に、ほわ、と笑ったのは温かかったからだろうか。村瀬くんは、温かい食べ物がとても好きなようだから。
一口かじった後の嬉しそうな顔に、かなり気に入ったことを知る。初めて唐揚げを口に入れてあげた時と同じ、いや、それ以上の喜びようだ。晃は、学食にもハンバーガーがあればいいのに、と思った。
「ナゲットもらうぞ」
「あ、うん」
安部に声を掛けられて、慌てて自分のハンバーガーの包み紙を開ける。ベーコンとトマトが入っているハンバーガーをかじりながらポテトも口に入れて、合間に流れるように一太の口にもポテトを持っていった。
一太の方も、夢中で食べていたハンバーガーの合間に差し出されたポテトを当たり前のように口を開けて食べる。
食べてから、はっとして晃の方を見た。
「美味しい?」
こくん、と頷かれると嬉しくてたまらない。
「これ、ポテト食べていいからね。余ってるから」
一太のトレイに載せたポテトを指差すと、一太は、晃の顔とポテトを何度か往復して見てから、おずおずとそのポテトに手を伸ばした。自分で一本取って食べるとまた、その大きな目を見開く。
ポテトもかなり好きみたいだな。
「オレンジジュース好き? これ、オレンジなんだけど、僕のは白ブドウ味だから、好きな方飲んだらいいよ」
一太のトレイに置いたジュースを持ち上げてストローを口元に持っていくと、
「いいの?」
小さな声が聞いてきた。
「うん、もちろん。どっちも味見してみて」
こわごわと口をつけてオレンジジュースをすする様子にドキドキした。ジュースはどの味が好みか、どんな食べ物が好きなのかをもっと知りたい。知ることができると嬉しい。好きな食べ物をたくさんたくさん食べさせてあげたい。
「うま」
ストローから口を離した一太の声に、晃はまた喜びが爆発する。オレンジジュースは好み。覚えておこう。
「ナゲットも食べて。このソースを付けるんだけど、味が三種類あって、僕はこのマスタードが好きで」
「松島くん、松島くん」
「へ? え? あ、なに?」
岸田に話しかけられて、驚いてしまった。
「自分のご飯も食べようか?」
「あ、ああ、うん」
すっかり忘れていた自分のハンバーガーを持ち上げる。
「松島くんってさ、村瀬くんのお母さんみたいになってるよね」
「学食でもよく食べさせてるもんね」
「お母さん……?」
晃は、お母さんみたいと言われて憮然としてしまった。そんなに構ってたかな。けれど、自分もよく家族にこうして世話を焼かれていた覚えはある。そして、あまりにも世話を焼かれると、うるさいなあと思っていた。
「うるさくてごめんね」
食べながら一太に謝ると、ふるふると首を横に振るのが見えた。
「うるさくない。嬉しい」
「え、そうなの?」
「そういうもの?」
渡辺と伊東に、うん、と頷く姿が可愛いなあ、と晃は思った。
「お母さんってこんなんなの?」
一太の何気ない一言に、あ、と五人が何かを察した顔になる。
「あれ? 村瀬、お母さんいない感じ?」
「ううん、いるけど……」
安部の言葉にそう返ってきて、いるのか、と話がややこしくなってくる。
「そうか。まあ、村瀬の母ちゃんはこんな感じじゃなかったってことか」
「あー、うん……。えーと、こんなのいいね?」
「えー? あんまり構われると、うるさーいってなるよね」
「あるある。でも、お母さんってめげない」
「確かに。こっちがもういいって言っても、またくる」
あはははは、と女の子たちが楽しそうな笑い声を上げた。
安部もうんうんと頷いている。
「まあ、お前がいいならいいんじゃね? 松島も村瀬の世話を焼きたいんだし、お互いがいいならそれでいいじゃん」
その言葉を聞いたあとの晃は、心置きなく一太にナゲットのソースを全種類味見させ、ポテトを食べさせ、白ブドウのジュースの味見をさせてと、食事を堪能した。
絶対にまた来よう。
一口かじった後の嬉しそうな顔に、かなり気に入ったことを知る。初めて唐揚げを口に入れてあげた時と同じ、いや、それ以上の喜びようだ。晃は、学食にもハンバーガーがあればいいのに、と思った。
「ナゲットもらうぞ」
「あ、うん」
安部に声を掛けられて、慌てて自分のハンバーガーの包み紙を開ける。ベーコンとトマトが入っているハンバーガーをかじりながらポテトも口に入れて、合間に流れるように一太の口にもポテトを持っていった。
一太の方も、夢中で食べていたハンバーガーの合間に差し出されたポテトを当たり前のように口を開けて食べる。
食べてから、はっとして晃の方を見た。
「美味しい?」
こくん、と頷かれると嬉しくてたまらない。
「これ、ポテト食べていいからね。余ってるから」
一太のトレイに載せたポテトを指差すと、一太は、晃の顔とポテトを何度か往復して見てから、おずおずとそのポテトに手を伸ばした。自分で一本取って食べるとまた、その大きな目を見開く。
ポテトもかなり好きみたいだな。
「オレンジジュース好き? これ、オレンジなんだけど、僕のは白ブドウ味だから、好きな方飲んだらいいよ」
一太のトレイに置いたジュースを持ち上げてストローを口元に持っていくと、
「いいの?」
小さな声が聞いてきた。
「うん、もちろん。どっちも味見してみて」
こわごわと口をつけてオレンジジュースをすする様子にドキドキした。ジュースはどの味が好みか、どんな食べ物が好きなのかをもっと知りたい。知ることができると嬉しい。好きな食べ物をたくさんたくさん食べさせてあげたい。
「うま」
ストローから口を離した一太の声に、晃はまた喜びが爆発する。オレンジジュースは好み。覚えておこう。
「ナゲットも食べて。このソースを付けるんだけど、味が三種類あって、僕はこのマスタードが好きで」
「松島くん、松島くん」
「へ? え? あ、なに?」
岸田に話しかけられて、驚いてしまった。
「自分のご飯も食べようか?」
「あ、ああ、うん」
すっかり忘れていた自分のハンバーガーを持ち上げる。
「松島くんってさ、村瀬くんのお母さんみたいになってるよね」
「学食でもよく食べさせてるもんね」
「お母さん……?」
晃は、お母さんみたいと言われて憮然としてしまった。そんなに構ってたかな。けれど、自分もよく家族にこうして世話を焼かれていた覚えはある。そして、あまりにも世話を焼かれると、うるさいなあと思っていた。
「うるさくてごめんね」
食べながら一太に謝ると、ふるふると首を横に振るのが見えた。
「うるさくない。嬉しい」
「え、そうなの?」
「そういうもの?」
渡辺と伊東に、うん、と頷く姿が可愛いなあ、と晃は思った。
「お母さんってこんなんなの?」
一太の何気ない一言に、あ、と五人が何かを察した顔になる。
「あれ? 村瀬、お母さんいない感じ?」
「ううん、いるけど……」
安部の言葉にそう返ってきて、いるのか、と話がややこしくなってくる。
「そうか。まあ、村瀬の母ちゃんはこんな感じじゃなかったってことか」
「あー、うん……。えーと、こんなのいいね?」
「えー? あんまり構われると、うるさーいってなるよね」
「あるある。でも、お母さんってめげない」
「確かに。こっちがもういいって言っても、またくる」
あはははは、と女の子たちが楽しそうな笑い声を上げた。
安部もうんうんと頷いている。
「まあ、お前がいいならいいんじゃね? 松島も村瀬の世話を焼きたいんだし、お互いがいいならそれでいいじゃん」
その言葉を聞いたあとの晃は、心置きなく一太にナゲットのソースを全種類味見させ、ポテトを食べさせ、白ブドウのジュースの味見をさせてと、食事を堪能した。
絶対にまた来よう。
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