96 / 252
96 ◇大きく動く気持ち
しおりを挟む
「え、や、な、何?」
「や、やだ、松島くん。何言ってるの? 私たち別に、そんな。松島くんのことを言ってたんじゃないのよ?」
「そ、そうそう。早織が彼氏できたーって言うから、彼氏の友達を紹介してくれたら、皆で遊びやすいかなと思っただけで」
早口で紡がれる言葉に、晃は呆れた。松島くんと一緒にご飯を食べるのが許せない、とか、本当は松島くん狙いなんでしょう、と言って岸田を責めていたことは、一太から聞いている。
「わ、私。彼氏できたーなんて、言ってない……」
「ええ? だって、できてるじゃん」
「安倍くんと付き合ってるの? って二人が聞くから、そうだよって言っただけ」
「それが、彼氏できたーってことじゃん。何? もう、そういう細かいとこあるよね、早織」
「細かくない。全然違う。そうやって、私の言ったことを捻じ曲げられるの、困る」
「さ、早織だって捻じ曲げてるじゃん。彼氏の友達を紹介してって言ったのに、松島くんのことを言ったみたいにさあ」
「言ってた」
一太が口を挟んだ。ずっと真剣な顔で全員のやり取りを聞いていたのは、自分の出番があれば必ず口を挟もうと決意していたのに違いない。
何事にも真面目な一太らしい、と晃は目元を緩ませた。
「な、何? 村瀬くん」
「言ってたよ。松島くんと一緒にご飯食べたいって」
「……」
「岸田さんは、何にも捻じ曲げてない」
「……何それ。私たちだって捻じ曲げてないし」
「僕のことでないなら、良かった。じゃあ、僕は関係なかったんだね。ごめん。もうお互い、変な勘違いをしないように、なるべく声をかけたりとかするのは控えるように気をつけるよ」
晃は、良い笑顔で言い切った。
告白される前に振るような形になってしまったが、自意識過剰だとも、相手に申し訳ないとも思わなかった。
誰かを、こんなに遠ざけたいと思ったのは初めてだ。苦手な人や、相性の悪い人というのはどうしてもいるのだとしても、そこまで深く関わり合うこともないと思えば、どうということはなかった。
特別に好きな人ができた途端に、心の中で、家族以外は皆、同じ距離にいた周りの人間が、色んな距離に配置されて戸惑っている。好きな人のことを大事にしてくれる人とは気が合うし、近くに居ても嫌じゃない。その気が合う人を害されたら、腹が立って、害した奴らとは距離をおきたくなる。
周りの諍いを見る度に、こんなのは面倒くさい、自分は振り回されなくて済んで良かった、とすら思っていた。感情が昂ったら心臓に良くない、と穏やかに諦めながら生きてきた名残り。悪くなかった。面倒くさいこともなく、色んな感情に振り回されることも無く。
でも、特別に好きな人ができて、そんな気持ちは霧散した。
今、面倒くさいどころか、もう二度と近寄らせないように釘を刺しておこうと、酷く攻撃的な自分がいる。
呆然と固まる伊東と渡辺を見ながら、晃は満足の息を吐いた。
「や、やだ、松島くん。何言ってるの? 私たち別に、そんな。松島くんのことを言ってたんじゃないのよ?」
「そ、そうそう。早織が彼氏できたーって言うから、彼氏の友達を紹介してくれたら、皆で遊びやすいかなと思っただけで」
早口で紡がれる言葉に、晃は呆れた。松島くんと一緒にご飯を食べるのが許せない、とか、本当は松島くん狙いなんでしょう、と言って岸田を責めていたことは、一太から聞いている。
「わ、私。彼氏できたーなんて、言ってない……」
「ええ? だって、できてるじゃん」
「安倍くんと付き合ってるの? って二人が聞くから、そうだよって言っただけ」
「それが、彼氏できたーってことじゃん。何? もう、そういう細かいとこあるよね、早織」
「細かくない。全然違う。そうやって、私の言ったことを捻じ曲げられるの、困る」
「さ、早織だって捻じ曲げてるじゃん。彼氏の友達を紹介してって言ったのに、松島くんのことを言ったみたいにさあ」
「言ってた」
一太が口を挟んだ。ずっと真剣な顔で全員のやり取りを聞いていたのは、自分の出番があれば必ず口を挟もうと決意していたのに違いない。
何事にも真面目な一太らしい、と晃は目元を緩ませた。
「な、何? 村瀬くん」
「言ってたよ。松島くんと一緒にご飯食べたいって」
「……」
「岸田さんは、何にも捻じ曲げてない」
「……何それ。私たちだって捻じ曲げてないし」
「僕のことでないなら、良かった。じゃあ、僕は関係なかったんだね。ごめん。もうお互い、変な勘違いをしないように、なるべく声をかけたりとかするのは控えるように気をつけるよ」
晃は、良い笑顔で言い切った。
告白される前に振るような形になってしまったが、自意識過剰だとも、相手に申し訳ないとも思わなかった。
誰かを、こんなに遠ざけたいと思ったのは初めてだ。苦手な人や、相性の悪い人というのはどうしてもいるのだとしても、そこまで深く関わり合うこともないと思えば、どうということはなかった。
特別に好きな人ができた途端に、心の中で、家族以外は皆、同じ距離にいた周りの人間が、色んな距離に配置されて戸惑っている。好きな人のことを大事にしてくれる人とは気が合うし、近くに居ても嫌じゃない。その気が合う人を害されたら、腹が立って、害した奴らとは距離をおきたくなる。
周りの諍いを見る度に、こんなのは面倒くさい、自分は振り回されなくて済んで良かった、とすら思っていた。感情が昂ったら心臓に良くない、と穏やかに諦めながら生きてきた名残り。悪くなかった。面倒くさいこともなく、色んな感情に振り回されることも無く。
でも、特別に好きな人ができて、そんな気持ちは霧散した。
今、面倒くさいどころか、もう二度と近寄らせないように釘を刺しておこうと、酷く攻撃的な自分がいる。
呆然と固まる伊東と渡辺を見ながら、晃は満足の息を吐いた。
681
あなたにおすすめの小説
完結|好きから一番遠いはずだった
七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
【完結】好きな人の待ち受け画像は僕ではありませんでした
鳥居之イチ
BL
————————————————————
受:久遠 酵汰《くおん こうた》
攻:金城 桜花《かねしろ おうか》
————————————————————
あることがきっかけで好きな人である金城の待ち受け画像を見てしまった久遠。
その待ち受け画像は久遠ではなく、クラスの別の男子でした。
上北学園高等学校では、今SNSを中心に広がっているお呪いがある。
それは消しゴムに好きな人の前を書いて、使い切ると両想いになれるというお呪いの現代版。
お呪いのルールはたったの二つ。
■待ち受けを好きな人の写真にして3ヶ月間好きな人にそのことをバレてはいけないこと。
■待ち受けにする写真は自分しか持っていない写真であること。
つまりそれは、金城は久遠ではなく、そのクラスの別の男子のことが好きであることを意味していた。
久遠は落ち込むも、金城のためにできることを考えた結果、
金城が金城の待ち受けと付き合えるように、協力を持ちかけることになるが…
————————————————————
この作品は他サイトでも投稿しております。
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる